2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井垣 浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90361344)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線肺臓炎 / スピロノラクトン / レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系 |
Research Abstract |
本研究では、スピロノラクトンを投与したラットの肺に放射線を照射する実験によって、スピロノラクトンの放射線肺臓炎予防効果を確かめる。平成23年度は、スピロノラクトン投与量の異なるラットを用いて予備実験を行い、組織学的変化の比較を行った。Wister系ラット(オス、平均300g)の皮下にスピロノラクトンの徐放性ペレット(Innovative Research of America社製、50mg/90days, 100mg/90days, 200mg/90daysの3群、各群6-7匹)を埋め込み、その1週間後にラットの右肺に放射線を12Gy照射した。コントロールとして、薬剤の埋め込みを行っていないラットにも、同様に右肺に12Gy照射した。照射後3カ月の時点で開胸し、生理食塩水・中性緩衝ホルマリンで潅流固定して病理標本を作成した。病理所見(ヘマトキシリン・エオジン染色、アザン・マロリー染色)により肺線維症に係わる項目としてマクロファージ浸潤と線維化の程度を組織学的に評価し、グレード分類を行った。 200mg/90daysのラットでは、肺線維化およびマクロファージ浸潤の左右差が明らかに少なく、十分量のスピロノラクトン投与は放射線照射後の肺の炎症誘発を抑制する効果があると考えられた。 アルドステロンは鉱質コルチコイド受容体に結合して炎症誘発性サイトカインを放出するとされており、これによって誘導されるTGF-βが放射線肺臓炎発症の重要な因子となる。鉱質コルチコイド受容体へのアルドステロン結合を阻害するスピロノラクトンを用いてこの炎症誘発カスケードを阻害したことにより、放射線肺臓炎の予防効果が実験的に示されているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、学内動物実験施設と同施設内に設置されている放射線照射装置を用いて遂行する予定であった。しかし、本研究の開始直前に東日本大震災が発生し、これに伴う学内での節電対応のためにこれらの施設・装置の使用が制限されることとなってしまい、予定していた施設での実験遂行が不可能となり、当初の予定が狂った。 しかしその後、動物飼育および放射線照射について両者とも、学内の別の施設の協力を得て実験が行えることになった。その結果、実験の開始が当初の予定よりも約2カ月遅れることにはなったが、実験開始以降には大きなトラブル等はなく順調に研究を進めることが可能であり、最終的には当初予定していた病理組織の評価まで年度内にたどり着くことが可能であった。 平成24年度に予定している実験の手順は、基礎実験という位置づけになる平成23年度の実験内容とほぼ同じになるので、予定外の大きなトラブルが発生する可能性は低いと考えられる。また、病理組織評価によっても、最大容量投与群で線維化・泡沫マクロファージ浸潤の程度が軽減されていると判断できており、薬剤の効果がある程度示されていると判断できる。これらの点を考慮すると、当初予定段階まで到達できている本研究の現時点での評価としては、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(以下 RAA系と略)が炎症誘発カスケードの活性化に大きな役割を果たしていることは以前より知られており、RAA系を阻害することによって組織の線維化が抑制されることも、一部の臓器では実験的・臨床的に確かめられている。放射線肺臓炎に関しては、動物実験レベルではアンギオンテンシンII変換酵素阻害によって放射線肺臓炎の軽減が確認されている。しかし、レニン-アンギオテンシン系の阻害だけでは、数週程度で血漿アルドステロン濃度は抑制されなくなってしまうアルドステロンエスケープ現象が起きることが知られており、実験系で投与された体重あたりのカプトプリル量も、人間の通常使用量の約10倍と、臨床的には応用不可能なシステムであった。 本研究では、実際に人間に投与可能な量の薬剤による放射線肺臓炎予防を目指しており、アルドステロン投与量も人間に投与される量と同等の範囲内で選んだ。ラットへの200mg/90daysのスピロノラクトン投与(ラットが300g/bodyとすると7.4mg/day/kg)は、我が国の臨床的投与量50-100mg/day(体重50kgとして1-2mg/day/kg)よりも多めではあるが、海外では最大400mg/day(8mg/day/kg)まで用いられている実情を考慮すれば、臨床的に十分投与可能な量と考えられた。 平成24年度には、平成23年度の予備実験から得られた200mg/90days/bodyでラットに異なるタイミング(無投与、放射線照射1週間前に投与、放射線照射1週間後に投与、放射線照射1か月後に投与の合計4群、各群7匹)でスピロノラクトンを投与し、平成23年度と同様の手順で実験を行うことによってスピロノラクトンの放射線肺臓炎予防効果を実証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究における平成24年度の研究費は、主に実験動物・実験道具の購入、動物飼育費の支払い、病理標本作製費、データ保管用メディアの購入、研究成果発表(学会旅費・論文出版費)に使用する予定である。 前年度の実績から考えると、平成24年度も研究費の大半は消耗品の購入に充てられることになる。実験の手順としては前年度とほぼ同様のことを行うこと、前年度に購入した実験器具の一部は平成24年度も引き続き使用が可能であること等を考慮すると、平成24年度には、前年度の使用額(直接経費1900千円)よりもやや少ない額が研究遂行に必要と考えられる。従って、現在配分予定の直接経費1400千円は平成24年度の研究費として適正な額である。
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[Journal Article] Integration of Corticospinal Tractography Reduces Motor Complications After Radiosurgery.2012
Author(s)
Koga T, Shin M, Maruyama K, Kamada K, Ota T, Itoh D, Kunii N, Ino K, Aoki S, Masutani Y, Igaki H, Onoe T, Saito N.
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Journal Title
Int J Radiat Oncol Biol Phys.
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Prognostic significance of adverse events associated with preoperative radiotherapy for rectal cancer.2012
Author(s)
Ishihara S, Watanabe T, Akahane T, Shimada R, Horiuchi A, Shibuya H, Hayama T, Yamada H, Nozawa K, Igaki H, Matsuda K.
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Journal Title
Int J Colorectal Dis.
Volume: 26
Pages: 911-917
DOI
Peer Reviewed
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