2011 Fiscal Year Research-status Report
がんの相同組換え修復能の特性に基づいた放射線治療とPARP阻害剤の併用療法の開発
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23591836
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細谷 紀子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00396748)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 / DNA損傷応答 / 放射線 / PARP阻害剤 |
Research Abstract |
がん治療を効果的に行うためには、がん細胞には存在し、正常細胞には存在しない核酸代謝情報の特性を踏まえることが重要である。前年度までに、研究代表者らは、正常の体細胞では発現せず、がん細胞において特異的に発現する減数分裂特異的シナプトネマ複合体形成分子SYCP3が体細胞で異所性に発現することによって生じる生物学的影響について検討を行い、SYCP3が体細胞では癌抑制遺伝子産物BRCA2と複合体を形成して相同組換え修復機能を抑制すること、その結果として、細胞の放射線感受性の亢進を来し、染色体不安定性を誘導することを明らかにした。今年度は、前年度までの研究成果を踏まえ、BRCA変異がんにおいて有効性が高いとされて注目されているPARP阻害剤のSYCP3発現細胞における有効性、および、PARP阻害剤とDNA損傷性処理の併用の有効性について検討を行った。その結果、SYCP3発現細胞がPARP阻害剤に極めて高い感受性を示すこと、また、SYCP3発現細胞において、PARP阻害剤とDNA損傷性処理を併用した場合の方が、PARP阻害剤を単独で投与した場合に比べて、殺細胞効果がより一層強く発揮されることが明らかになった。また、SYCP3によるBRCA2の機能抑制のメカニズムを解明するため、タグを付加したSYCP3と別のタグを付加した様々なBRCA2の欠失体のコンストラクトを外来性に培養細胞に共発現し、免疫沈降(IP)・ウエスタンブロット(WB)法を用いて、SYCP3と結合するBRCA2の部位の絞り込みを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究成果から、BRCA2の機能が抑制されているSYCP3発現細胞においてPARP阻害剤が有効であることが考えられ、その仮説を、培養細胞を用いた基礎的検討により証明することができ、2012年1月に国際学術誌にも発表できた。 SYCP3の結合によるBRCA2の機能の抑制のメカニズムの解明については、BRCA2が3,418アミノ酸から成る巨大な分子であることも影響し、SYCP3との結合領域の絞り込みに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
SYCP3を発現するがんにおけるPARP阻害剤と放射線療法の併用について、効果的な併用の仕方についての基礎的検討を引き続き進める。 研究代表者らのこれまでの検討により、SYCP3発現細胞においては、DNA損傷後のBRCA2とRAD51の結合が抑制されることが分かっている。しかしながら、これが、BRCA2におけるRAD51との結合領域にSYCP3が競合して結合するために起こるのか、それとも、BRCA2の全く別の部位にSYCP3が結合して遠隔制御によりBRCA2とRAD51の結合を阻害しているために起こるのかについては、全く明らかになっていない。そこで、引き続き、BRCA2におけるSYCP3との相互作用領域の同定を進め、その相互作用の生物学的意義について実験的検証を行う。 SYCP3以外にも、生殖細胞とがん細胞のみで特異的に発現する分子が多数存在するため、それらが体細胞で発現した場合に、DNA損傷応答に及ぼす影響について明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、がん特異的に発現する分子を正常体細胞で強制発現させたり、がん細胞での発現を抑制したりして、放射線・薬剤感受性試験を頻回に行い、また、多くのDNA損傷応答に関わる蛋白の発現の変化や蛋白間の相互作用をウエスタンブロット法、免疫沈降/ウエスタンブロット法、免疫染色などで解析する予定である。そのため、トランスフェクション試薬、siRNA、PARP阻害剤を含むDNA損傷応答分子の阻害剤や抗がん剤、抗体、細胞培養液などを購入する予定である。また、本研究の遂行のための情報収集、および、研究成果の発信のために、引き続き、国内外の学会への積極的な参加、研究発表、国際学術雑誌への成果発表(投稿)を行う方針であり、それらの費用にも充てる予定である。
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