2011 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞の誤修復誘導による放射線増感を利用した新たな治療戦略の開発
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23591849
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川田 哲也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60234077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50338159)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / ATM / NBS1 |
Research Abstract |
癌細胞の放射線感受性を高める研究として、初年度は放射線感受性の高いATM遺伝子およびNBS1遺伝子欠損細胞、正常細胞、脳腫瘍細胞を用いて放射線感受性を検討した。我々の体の正常細胞の多くは静止期であり、癌組織と比較して相対的に対数増殖をしている細胞分画は低いとかんが得られる。一方、盛んに分裂している癌組織を構成する細胞分画は対数増殖期である割合が多い。ただ、腫瘍細胞内の幹細胞も低酸素ニッチであれば静止期で存在すると考えられるので、本研究では、低栄養状態の静止期細胞集団を作成した。正常細胞は、腫瘍細胞ではATM、NBS1遺伝子抑制により静止期での細胞はやはり放射線増感が見られた。一方、AT細胞はNBS1阻害剤では増感効果は見られなかったが、NBS1欠損細胞ではATM阻害剤で増感効果が得られた。染色体解析からは、NBS1細胞では誤った修復が顕著であった。このことは静止期ではNBS1の上流にATM遺伝子が存在している可能性を示唆する。ATM異常細胞ではPLDR(potentially lethal damage repair) が欠如していること、NBS1異常細胞ではATM異常細胞と異なり、PLDRが保たれていることと関係があると考えられる。低酸素領域の癌幹細胞では細胞周期がとまった状態と予測しており、静止期癌幹細胞に何らかの刺激を与えて細胞周期を進行させることは、放射線感受性を高めることと関連している可能性があり、来年度はその研究すすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍細胞の低栄養下で、おおむね、非対数増殖期の細胞がえられており、対数増殖期との感受性の違いを実験回数はすくないが得られている。追試が必要ではあるが、順調である。NBS1、ATM遺伝子の増感がキーポイントとなると考えており、正常細胞の染色体解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目、二年目はvitroを中心に実験を行いたい。脳腫瘍幹細胞を入手後には、腫瘍幹細胞の感受性試験、増感効果を検討する。三年目にはマウスを使用し、vivoでの研究成果を挙げたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスに腫瘍細胞を移植し、静止期細胞をBURD陰性細胞として扱う実験を行っている。現在のところ、静止期、増殖期の鑑別が困難であるが、BURD陰性細胞に着目して研究を遂行する。BURDは腫瘍に直接注射することにより、増殖期細胞では取り込まれるが、静止期細胞では取り込みがないので、免疫染色を併用することで評価する。BURDを取り込んだ細胞と取り込まない細胞では、後者が高感受性をしめすとかんがえているが、染色体解析を併用することにより明らかにしたい。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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