2011 Fiscal Year Research-status Report
重粒子(炭素)線が生成する活性酸素の制御:重粒子線癌治療の高度化を目指して
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23591853
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
松本 謙一郎 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー (10297046)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 重粒子線がん治療 / 活性酸素 / ヒドロキシルラジカル / スーパーオキサイド / 過酸化水素 / 電子常磁性共鳴 / 放射線 |
Research Abstract |
重粒子線がん治療技術の高度化が求められている。その中で、患者の負担を軽減する目的から一回の照射線量を増大して分割照射の回数を減らすことが試みられている。それによって患者の拘束時間を大幅に減少できる。しかしながら一回の照射線量を増加すると、これまでは問題とされてこなかった重粒子線での酸素効果(活性酸素種の発生とそれによる影響)が無視できなくなる。そのため重粒子線で生成する活性酸素を制御することが必要となってきた。そこでまず、放射線の影響に関係の深いヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドアニオンラジカル、および過酸化水素、この3種類の活性酸素種について定量的にかつそれぞれを区別して測定する方法の開発を試みた。本年度は活性酸素種の発生源としてX線を用いて実験を行った。水溶液および水溶液をゼラチンで固めた試料にX線を照射したときに、試料内で発生するそれぞれの活性酸素種を測定した。ヒドロキシルラジカルについては電子常磁性共鳴(EPR)スピントラッピング法による測定を試みた。ヒドロキシルラジカルのディテクターであるスピントラッピング剤の濃度を変えて測定することにより、ヒドロキシルラジカルの発生する密度を解析することに成功した。スーパーオキシドアニオンラジカルは、EPRスピンプローブ法により測定を試みた。EPRスピンプローブ法はスーパーオキシドアニオンラジカルの検出に比較的好感度であったが、充分な特異性が得られず、反応特異性と定量性を向上させるため引き続き検討が必要である。過酸化水素の測定は従来法とEPRスピンプローブ法との相関を求めることにより、EPRスピンプローブ法で比較的簡便に定量できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していたように、活性酸素種毎の測定法をほぼ確立することができた。当初の研究計画と比較すると、例えばヒドロキシルラジカルの測定では予想以上の結果を得ることができ、しかしスーパーオキシドアニオンラジカルの測定ではやや定量性の面で遅れており、活性酸素種によってその進展度合いが幾分異なるが、全体的には順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度からは重粒子線を用いて実験を行う。先ず平成24年度は、現在までに開発した測定法を応用して、重粒子線が生成する活性酸素種の生成量とその密度の解析を行う。これをこれまでのX線での結果と比較し、抗酸化剤を用いて制御可能か否かを探る。そのうえで、平成25年度は実際に動物を用いて、抗酸化剤による重粒子線の影響の制御を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一般消耗品・試薬・動物および飼料(530,000円)、英文公正のための諸謝金(30,000円)、研究室設備の維持および修繕費(100,000円)。平成24年度に平成25年度の動物実験の準備のため平成24年度中にイソフルラン麻酔器と動物体温維持装置を購入(700,000円)し、重粒子線照射時に使用できるよう必要に応じて改造を施す(200,000円)。また本年度までの実験結果を海外の関連分野の学会で報告する(400,000円)。
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Research Products
(1 results)