2011 Fiscal Year Research-status Report
動脈瘤壁をターゲットとした新規ドラッグデリバリーシステムの基礎検討
Project/Area Number |
23591859
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保科 克行 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90571761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70190791)
重松 邦広 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20215966)
岡本 宏之 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (60348266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 腹部大動脈瘤 / ナノ粒子 / PICsome |
Research Abstract |
ナノテクノロジーの発達により,精密に設計されたさまざまなナノスケールの高分子化合物(ナノ粒子)が生体に応用されている.特にがん研究の分野において幅広く応用が行われており,がん組織に対して選択的にdeliverされるナノ粒子を用いて,癌の診断につながる生体イメージング,または癌の薬物治療の向上につながるドラッグデリバリーシステムの構築が試みられている.がん研究においては抗がん剤を内包したナノ粒子がすでに一部,臨床応用を試みられているが,その一方で循環器系疾患へのナノ粒子の応用研究は未だほとんど行われていないのが現状である.我々は代表的な循環器系疾患の一つであり,未だ有効な薬物治療の確立していない腹部大動脈瘤へのナノ粒子の応用研究を行っている.我々はナノ粒子を腹部大動脈瘤に応用するにあたって,まず全身投与されたナノ粒子がラット腹部大動脈瘤モデル動物においてどのような挙動を示すのかを解析した.なお,ナノ粒子としてはPICsomeと呼ばれる,正負の反対荷電を持つポリマーの自己集合により形成される中空高分子化合物を用いている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
40 - 200 nmのサイズのPICsomeをラット腹部大動脈瘤モデルに全身投与し,薬物動態の解析を行ったところ,すべてのサイズのPICsomeにおいて正常大動脈に比して腹部大動脈瘤に有意な集積を認めた.また,その薬物動態は粒子のサイズによって異なった特徴を示すことも明らかとなった.また,蛍光標識したPICsomeを投与された腹部大動脈瘤モデルラットのin-vivo生体イメージングをIVIS (in-vivo imaging system)を用いて行った.IVISは生体の発する微弱な蛍光を高感度カメラで観察可能な装置であり,これを用いることにより,PICsome投与後24時間以上たった時点でも,腹部大動脈瘤のin-vivo生体イメージングが可能であった.以上の結果から,PICsomeは腹部大動脈瘤に対する生体イメージング,または将来的なドラッグデリバリーシステムの有望な材料であると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
ラット腹部大動脈瘤モデルに蛍光標識されたPICsomeを投与した後に,PICsomeの集積した腹部大動脈瘤組織を採取し,組織切片を共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより,腹部大動脈瘤におけるナノ粒子の局在を明らかにする予定である.また, 金コロイドを内包したPICsomeをモデル動物に投与し,金コロイド内包PICsomeの集積した腹部大動脈瘤組織を透過型電子顕微鏡で観察することにより,ナノ粒子の局在をさらに詳細に観察する他,腹部大動脈瘤壁の微細構造を観察することにより,腹部大動脈瘤にナノ粒子が集積するというこれまでに確認された現象の理論的な裏付けを行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物(ラット)は引き続き必要である。実験器具はマイクロサージェリーにおいては、繊細に扱うものの数十の手術後には劣化する。そのための修理や買い替えが必要となる。ガーゼ、手袋、清潔操作に伴う消耗品も必要とする。PICsome、内包薬剤などの薬物の購入費用に関しては現在最適化中であるが、適宜購入を検討している。
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