2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591872
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鄭 允文 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80404995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70292555)
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 助手 (20612625)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大腸がん / 癌幹細胞 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
近年、癌組織においても正常組織と同様、自己複製能と多分化能を保持した幹細胞が存在し、幹細胞を頂点とした階層的な細胞社会が存在することが明らかになりつつある。癌幹細胞は腫瘍形成に寄与するだけでなく治療抵抗性を示し、術後の体内における癌幹細胞の残存が再発・転移の原因となっていると考えられていることから、同細胞群の特性解析は非常に重要なものであると言え、癌の根治を望める革新的な癌治療法へとつながるであろう。大腸癌においては既にCD133等の細胞表面抗原を指標とした癌幹細胞の分離・同定がなされているが、その分離純度は低く癌幹細胞の詳細な特性解析を行うには不十分であると言える。従って本研究では、全359検体を用いてより高純度な癌幹細胞の分離を目指すとともに、癌幹細胞の存在が示唆された細胞群の特性解析を実施した。 まず正常組織幹細胞と癌幹細胞の類似性に着目し、正常大腸上皮における幹細胞マーカーを探索した。その結果、腸管幹細胞が存在する大腸陰窩底部においてCD44の限局的な発現が見られたため、このCD44と既存の癌幹細胞マーカーであるCD133を組み合わせる事で癌幹細胞の分離と特性解析を試みた。フローサイトメトリーにより分画化した各細胞画分の腫瘍形成能を評価した所、CD133+CD44+細胞においては僅か100細胞の移植で腫瘍が形成され、高い腫瘍形成能が示された。また、NOD/SCIDマウス皮下で作成した移植片におけるフローサイトメトリー解析の結果、移植片では原発巣と比較し優位にCD133+CD44+細胞の割合が増加しており、腫瘍再構築の際にも重要な役割を示している可能性が示唆された 今後、この癌幹細胞とその微小環境(ニッチ)の癌組織中における局在や特性を明らかにするつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸癌における癌幹細胞研究としては、既にCD133等の細胞表面抗原を指標とした癌幹細胞の分離・同定がなされている。しかし、その分離純度は低く癌幹細胞の詳細な特性解析を行うには不十分であった。従って本研究では、全359検体を用いてより高純度な癌幹細胞の分離を目指すとともに、癌幹細胞の存在が示唆された細胞群の特性解析を実施している。まず正常組織幹細胞と癌幹細胞の類似性に着目し、正常大腸上皮における幹細胞マーカーを探索した。その結果、腸管幹細胞が存在する大腸陰窩底部においてCD44の限局的な発現が見られたため、このCD44と既存の癌幹細胞マーカーであるCD133を組み合わせる事で癌幹細胞の分離を試みた。大腸癌臨床検体から、細胞表面抗原CD44およびCD133を用いてフローサイトメトリーにより分画化し、得られた各細胞画分をNOD/SCIDマウスに皮下移植する事により腫瘍形成能を評価した。その結果、CD133+CD44+細胞においては僅か100細胞の移植で腫瘍が形成され、高い腫瘍形成能が示された。また、NOD/SCIDマウス皮下で作成した移植片の解析では、移植片では原発巣と比較し優位にCD133+CD44+細胞の割合が増加しており、CD44およびCD133は腫瘍再構築の際にも重要な役割を示している可能性が示唆された。また、ヒト大腸癌原発巣だけではなく、癌幹細胞が関与していると考えられる大腸癌由来肝転移巣の遺伝子解析を行った。その結果、CD44および大腸幹細胞マーカーであるLGR5の発現上昇が見られた。腫瘍形成能の高い細胞集団、および癌幹細胞由来と考えられる転移巣においてもCD44の発現上昇が見られたことから、CD44は癌幹細胞および癌幹細胞を維持する微小環境(ニッチ)との関連が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきたCD44およびCD133を用いて分画化した細胞集団のより詳細な解析を進める。具体的には、FACSを用いて得られた各画分の細胞のクローン性培養を行い、in vitroにおける各々の細胞画分についての細胞増殖活性・コロニー形成能を評価する。また、培養細胞のRT-PCRや免疫蛍光染色法により新たな分化マーカーの発現の探索を行っていく。特に近年では細胞のALDH酵素活性を測定して幹細胞/前駆細胞を同定・分離する方法が、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞などの多くの組織で用いられていることから、この方法と我々の従来法を併用して、より純度の高い癌幹細胞分画の単離を目指す。 また、単離した細胞群をNOD/SCIDマウスの皮下に移植する腫瘍形成法を用いて、in vivoにおける転移能の検証を行う。前年度に得られた結果から、転移とCD44の発現には関連性があると考え、詳細な解析を行っていく。具体的には、臨床検体の組織切片での免疫組織化学染色やin situ hybridization等の手法を用いて、癌幹細胞とその微小環境(ニッチ)の癌組織中における局在や特性を明らかにする。 さらに解析を進める方法として、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、同定された癌幹細胞の局在するニッチ細胞を回収し、RNAを抽出して、cDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルを行うことを検討している。この解析によって、癌幹細胞ニッチにおいて特異な発現を示す分子群の同定が可能になると考えている。これらの特定された癌幹細胞ニッチの遺伝子発現パターンをもとに癌幹細胞ニッチに特異的に発現している表面抗原や癌幹細胞の生存に深く関わる分子群を特定することにより、より詳細な癌幹細胞の特性解析を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において、フローサイトメトリー、マイクロダイセクションなどの機器設備はほぼ整っている。しかし、本研究の中心実験である動物実験で使用するNOD/SCIDマウスや臨床検体を画分化するために使用するFACS用モノクローナル抗体、遺伝子解析用マイクロアレイなどの消耗品が必要となる。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Over-expression of cancer stem cell markers predicted poor prognosis in colorectal cancer2011
Author(s)
Ozawa M, Ichikawa Y, Kondo A, Nakazawa K, Miyata H, Zheng YW, Oshima T, Shimozawa M, Akaike M, Suwa H, Tatsumi K, Watanabe K, Ota M, Fujii S, Endo I, Taniguchi H
Organizer
AACR 102nd Annual Meeting 2011
Place of Presentation
Orlando, Florida
Year and Date
April 6, 2011
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