2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591876
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 和生 昭和大学, 医学部, 教授 (50236569)
|
Keywords | サイトメガロウイルス / ウイルス再活性化 |
Research Abstract |
○ 臨床例(妊婦)における検討 本研究の目的はCMVの再活性化は免疫抑制によるものではないことを明らかにすることである。平成23年度の研究で免疫抑制を伴わないアロ刺激の臨床例として妊婦に注目した。その結果出産直後の女性の母乳を採取したところ高率(11例中7例)に母乳中に再活性化ヒトCMV(HCMV)が存在することを観察した。出産後2週目より母乳中にHCMVが検出される事を観察し、この臨床研究からCMV再活性化のモデルとして妊娠、出産のモデルが使えるのではないかと考えた。 ○ 動物実験系〈実験系〉BALB/c♀マウス7週齢の腹腔内にマウスサイトメガロウイルス(MCMV、Smith株)を感染させた(1500pfu/マウス)。感染4週後には唾液腺、乳腺、脾臓、肺には感染性ウイルスは存在しておらず潜伏感染が成立していることを確認した。このMCMV感染4週マウスにBALB/c♂及びC57BL/6♂を交配した。 〈結果〉BALB/c♂マウスと交配させた群(n=10)では出産5,10,15日のいずれの母乳から8,000-20,000コピー/mlのMCMVが検出された。同様に出産後の尿中にもMCMVの排出が認められた。さらに仔マウスは立毛、運動低下などのMCMV感染の症状が認められた。以上より妊娠により母マウスにおいてMCMVが再活性化することが明らかとなった。一方、C57BL/6♂マウスと交配させた群でも出産5,10,15日のいずれの母乳からMCMVが検出されたがウイルス価は6,000-15,000コピー/mlとBALB/c♂マウスと交配させた群と比較し、ウイルス価は有意に低値を示していた。また尿中へのMCMV排出は認められなかった。〈結論〉妊娠、出産に伴う変化によりMCMVが再活性化することが明らかになった。即ち、CMV再活性化には免疫抑制やアロ抗原刺激が関与していないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○試験管内実験系(達成度:60%):平成23年度の実験においてMCMV再活性化には免疫抑制ではなく、感染細胞のヒストンのアセチル化が重要であることを観察した。この結果を下記の動物におけるCMV活性化モデルと組みあわせ、今後の研究を行う。この結果は次年度の動物実験系にも応用可能である。 ○ 動物実験系(達成度:70%):上述したように平成24年度の実験でBALB/c妊娠、出産マウスでMCMVが再活性化することを観察し、MCMV再活性化の動物モデルの作成に成功した。平成25年度にはこの系を用いてMCMV再活性化の機序を明らかにしたい。 ○臨床例(妊婦)における検討(当初の実験計画にはなし):本研究と別のプロジェクトとして低出生体重児にみられる新生児CMV感染症の感染経路を調べていた。その結果、母親の母乳に再活性化ヒトCMV(HCMV)が存在することを示した。平成24年度の研究では在胎期間が少なく出生した低体重出生児においては妊娠中に母体からの抗CMV抗体の移行が十分でなく、母乳由来のCMVにより新生児CMV感染症を引き起こすことを明らかにした(日本ウイルス学会にて発表)。
|
Strategy for Future Research Activity |
MCMV感染♀マウスを妊娠、出産させると母乳中に感染性MCMVが出現する系を用いて以下の検討を行う。 (1)再活性化する細胞を同定する:In situ PCR法を用いて乳腺の中でCMVが再活性する細胞を同定する。MCMVのIn situ PCRによる検出に関する実験手技は平成24年度に既に習得済みである(浜松医科大学病理学供出に出張し、習得)。 (2)非妊娠期、妊娠中期、妊娠後期、授乳期のマウス乳腺を採取し、RNA-PCRにてMCMV-major IE promoter/enhancer (MCMV-MIEP)、およびtranscriptional activator (NF-κB, API, CREB)のmRNAの発現を調べ、細胞活性化とMCMV再活性化との関係を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)消耗品:RT-PCR関連試薬、マウス、マウス飼料(110万円) (2)旅費:本研究成果を11月15日~17日に大阪で行われる第61回日本ウイルス学会(旅費、宿泊費、参加費:5万)で発表予定。 (3)謝金:本研究成果を英文誌に投稿よていであり、英文添削に対する謝金(5万)を支払う予定である
|
Research Products
(5 results)