2013 Fiscal Year Annual Research Report
外科的侵襲時の脂肪細胞の役割と塩酸ピオグリタゾン投与の有効性
Project/Area Number |
23591880
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
松谷 毅 日本医科大学, 医学部, 講師 (50366712)
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Keywords | 脂肪細胞 / 手術侵襲 / アディポサイトカイン / ピオグリタゾン |
Research Abstract |
平成23,24年度の結果から,マウス盲腸穿刺結紮術(CLP)でのPPAR-γアゴニスト(ピオグリタゾン)術前投与が,脂肪細胞からのアディポネクチン産生を亢進し,TNF-α,IL-6の発現を低下させることで,全身の炎症反応を制御する可能性が示された.さらに,CLP 24時間後の腹腔内洗浄液上清とヒト成熟脂肪細胞を共培養したin vitro実験系においてもピオグリタゾン前投与が,脂肪細胞における炎症性サイトカインの発現を抑えた. 目的:平成25年度は,CLPによる肺組織傷害に対するピオグリタゾンの効果について検討した.方法:雄性C57BL/6マウス(8-10週令)に,ピオグリタゾン(10mg/kg、i.p)を7日間前投与し,CLPを作成.CLP後24時間に腹腔洗浄液,血清,脂肪組織を回収し,TNF-α,IL-6の発現をELISA及びReal-Time PCRで解析し,肺組織変化についてはHEおよびTURNEL染色,リン酸化JNK kinaseの免疫組織染色を行って評価した.結果:末梢血および腹腔液中TNF-αは,CLP単独に比してピオグリタゾン前投与によって有意に低値であった.脂肪組織IL-6,TNF-α濃度のmRNA発現は,CLP単独に比してピオグリタゾン前投与によって有意に抑制された.CLP単独では肺胞上皮傷害や間質への細胞浸潤が著しかったが,ピオグリタゾン前投与ではその程度が軽減した.CLP単独では肺組織構成細胞のアポトーシスおよびリン酸化JNK kinaseの活性化が認められたが,ピオグリタゾン前投与によりこれらは軽減した. 結語:マウスCLPに対するピオグリタゾン前投与は,末梢血および腹腔内炎症性サイトカイン値の上昇ならびに脂肪組織の炎症を軽減した.ピオグリタゾン前投与によって脂肪組織の炎症を制御することによって,肺組織の炎症反応が軽減する可能性が示唆された.
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