2011 Fiscal Year Research-status Report
ラット肝臓移植モデルにおける免疫寛容獲得の機序と抗炎症作用を用いた治療応用
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23591881
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石井 永一 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別研究員 (00193243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 章 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00256942)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肝臓移植 / ラット / 免疫寛容 / 動脈再建 / 拒絶反応 / 抗体依存性拒絶反応 / 慢性拒絶反応 / 免疫抑制剤 |
Research Abstract |
本研究は、ラットの肝臓移植モデルを用いて、肝臓移植における免疫寛容獲得の機序や免疫応答の特徴を明らかにし、その応用による新しい治療法の開発をすることを最終目的にしている。抗炎症作用の増強による拒絶反応の制御や免疫寛容獲得のための補助療法についても研究を進めている。今年度は、1) ラット肝臓移植モデルにおける肝動脈再建の移植肝臓への影響を検討した。はじめにLEWラットをドナーとレシピエントに使用した同系肝臓移植モデルを用いて、肝動脈再建の有無による移植肝臓への影響を検討した。同系ラット移植においても、慢性低酸素障害によると思われる門脈域の細胆管の増生や炎症細胞浸潤、門脈域より進展する線維化を認めた。同種ラット肝臓移植においても肝動脈再建の影響を検討した。本来ならば急性拒絶反応から持続性拒絶反応により移植後30日程度で移植肝は機能廃絶に陥るBNラットをドナー、LEWをレシッピエントとした同種肝臓移植では、肝動脈を再建することにより移植臓器は>100日までの生着が得られた。この移植臓器の長期生着機序が抗炎症反応、もしくは免疫寛容に関連するのではないか検討を進めている。2)肝臓移植の拒絶反応をDAをドナー、LEWをレシピエントの組み合わせの同種肝臓移植モデルを用いて検討した。このモデルでは移植後11日前後で移植肝臓は拒絶反応により完全に機能廃絶に陥る。この際の移植肝臓は急性T細胞性拒絶反応と急性抗体依存性拒絶反応により機能廃絶に陥る。この際の抗体依存性拒絶反応の主な標的は、門脈や肝動脈、肝小葉内の類洞の微小血管内皮細胞、細胆管上皮細胞や肝細胞であることを明らかにした。これをまとめて論文を作成した (Transplant Proc 43: 2737-2740, 2011)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ラットの肝臓移植モデルを用いて、肝臓移植における免疫応答の特徴を検討している。今年度は、1) ラット肝移植モデルにおいて、肝動脈再建が移植肝臓にどのような影響を及ぼすかを検討した。LEW-LEWの同系移植系では、肝動脈再建をしないと慢性低酸素障害によると思われる門脈域の細胆管の増生や炎症細胞浸潤、門脈域より進展する線維化を認め、肝動脈再建の重要性について明らかにした。また、BN-LEWの同種肝臓移植では、肝動脈再建により移植肝臓が長期間生着することを明らかにした。2) 同種肝臓移植の急性抗体依存性拒絶反応の特徴を検討し、この際の抗体依存性拒絶反応の主な標的は、門脈や肝動脈、肝小葉内の類洞などの微小血管内皮細胞、細胆管上皮細胞や肝細胞であることを明らかにし、これをまとめて論文を作成した (Transplant Proc 43: 2737-2740, 2011)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ラット肝臓移植モデルを用いて、肝臓移植における免疫寛容獲得の機序や免疫応答の特徴を明らかにし、その応用による新しい治療法の開発をすることを最終目的にしている。今後は、1) 肝臓移植における肝動脈再建の重要性について、LEW-LEWの同系移植やBN-LEWの同種移植モデルを用いてさらに検討し、学会での成果の発表の後に論文の作成を行う。さらにこの移植臓器の長期間生着の機序が抗炎症反応、もしくは免疫寛容に関連するかを検討を進める。2) 肝動脈再建の同種移植への影響を検討する目的で行ったBN-LEWの肝臓移植モデルでは、移植肝臓は>100日の長期間の生着を認めている。しかし、最終的にはBNの移植肝も機能廃絶に陥る。この際の>100日にみられる拒絶反応は組織学的には慢性拒絶反応の範囲に入る。特に、慢性T細胞性拒絶反応に加えて、慢性抗体依存性拒絶反応も加わっている。このモデルは、肝臓移植ではまだ確立されていない慢性抗体依存性拒絶反応の病理所見や免疫機序を検討するのに適している。今後は、慢性抗体性拒絶反応の病理所見を明らかにして、論文の作成を進める。3) DA-PVGラットを用いた同種肝臓移植モデルは、免疫寛容を検討するのに適している。早期の急性拒絶反応の後に長期生着が獲得される。この長期生着肝臓が免疫寛容を獲得しているかを明らかにし、その際の免疫寛容進展過程を検討する。病理検討に加えて、mRNAを網羅的に解析して、免疫寛容応答の中心的な機序について検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はラットの肝臓移植モデルを用いて、移植臓器内や脾臓、末血での免疫応答の特徴を明らかにしている。今年度では論文の作成を行っているが、そのカラー印刷を含む印刷代の支払い、研究の情報収集のために参加した研究会や学会の支払いが年度末にかかったため次年度への研究費を持ち越した。次年度も研究を継続するが、検討方法は、病理組織学的検討、免疫組織化学的検討、フローサイトメトリー、western blot、real-time PCR、を用いる。次年度の研究費は、実験動物の購入、浸潤炎症細胞の特徴や、産生サイトカインの解析のための各種抗体や消耗品に使用する。免疫寛容機序の検討のために、最初に網羅的な解析も予定しており、DNA arrayの解析のための消耗品にも使用する。研究のための情報収集、研究会や学会の参加やそのための旅費にも使用する。また結果の解析のためのコンピュータも購入の予定です。論文の作成には英文校正、投稿費や印刷代を含め、研究成果の発表のために使用する。
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Research Products
(4 results)