2011 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンレセプター/ヘッジホッグ両シグナル経路を標的とした包括的乳癌治療
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23591895
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 晴生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90585746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片野 光男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10145203)
大西 秀哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30553276)
中野 賢二 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 教授 (00315061)
白羽根 健吾 九州大学, 大学病院, 助教 (10529803)
宗崎 正恵 九州大学, 大学病院, 医員 (40610613)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 乳癌 / Estrogen receptor経路 / Hedgehog経路 / 癌幹細胞 / 包括的乳癌治療法 |
Research Abstract |
現在の乳癌治療は、個々の癌のホルモンレセプター発現状態に基づいて行われている。我々は、乳癌の形態形成シグナル系を解析中、現在の治療選択の指標となっている乳癌の特性を越えて、二つのシグナル系(Estrogen receptor経路およびHedgehog経路)が幅広い乳癌で機能している可能性を見出した。したがって、上記二つのシグナル系を標的とする包括的な乳癌治療法の開発の可能性を、本研究の目的とした。 目的の達成は、(1)乳癌組織を用いて、ERおよびHhシグナル系活性化を定量的に解析、さらに病理学的因子との関連を解析し治療対象となる乳癌症例の頻度を算定し、包括的治療対象としての可能性を検証する。(2)乳癌細胞株を用いて、シグナル阻害剤およびRNA干渉法により、治療標的となる機能(増殖、浸潤、抗癌剤感受性など)を同定する。(3)乳腺上皮細胞および種々の乳腺疾患組織を用いて、ERおよびHhシグナル系の発癌予防・癌浸潤への関与を解析する。これら成果に基づき、(4)免疫不全マウスの系を用いて、治療および予防効果を検証する。 本年度は、1)乳癌組織において9割以上の症例で、明らかにHhシグナル系が活性化しており、かつ、2)Hh活性化が乳癌細胞の進展(増殖・浸潤)に関与していることが検証された。Hhシグナル系がERやHER2発現状態に依存しない広範囲の乳癌に対する包括的治療標的となる可能性が示された。3)ERα陽性乳癌細胞においてはERα経路がHhシグナル系の活性化機序の一つとして相乗的に働いており、ERが乳癌の進展に関与している可能性が示唆された。ERおよびHhシグナル系の両者の阻害は、治療効果を増強するだけではなく、非浸潤性乳癌の浸潤癌への進展抑制、発癌予防として働く可能性を示唆するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、1.乳腺組織におけるERαおよびHhシグナル関連分子発現プロファイル作成を行った。手術時摘出乳腺組織(乳腺炎100例、線維線腫100例、非浸潤性乳管癌症例(DCIS)150例、微小浸潤癌50例、浸潤性乳管癌(IDC)300例を目標として、ERα発現、Hhシグナル関連分子(Shh、Patched1, Smo, Gli1)発現を、我々が改良中の半定量的三重蛍光免疫組織染色法にて、これら分子の発現形式を半定量的に解析し、両シグナル系抑制療法の治療標的となる乳腺疾患およびその頻度(包括的治療となりえるか)を検証した。このうち本年度は乳腺炎30例、線維腺腫30例、DCIS50例、微小浸潤癌、15例、IDC80例に対して、ERα発現、Hhシグナル関連分子(Shh、Patched1, Smo, Gli1)発現を解析した。2.乳癌幹細胞に対する治療法としての可能性を検証する目的で、乳癌組織における乳癌幹細胞分画(CD44+CD24-細胞)の存在およびERおよびHhシグナル関連分子の発現を半定量的三重蛍光免疫組織染色法にて解析した。さらに、術前化学療法施行前後の同分画の細胞数の変化を解析し、抗癌剤抵抗性を検証した。3.ERαおよびHER2発現パターンの異なる乳癌細胞株を標的として、ERおよびHh両シグナル阻害(各種阻害剤、RNA干渉法:siRNA)による遺伝子発現ノックダウンによる増殖(FACScan、コロニー形成)、浸潤(Matrigel invasion assay)、薬剤感受性(FACScan、コロニー形成)に及ぼす影響を解析し、治療標的となり得る機能を同定した。4.乳癌組織より分離した新鮮乳癌細胞を標的とし、上記解析で同定された治療標的機能を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度免疫不全マウス移植系における包括的治療法としての検証:細胞移植系、現在、治療法選択に難渋する形質特性を有する乳癌(ER陰性乳癌、ER陰性・HER2陰性乳癌、エストロゲン耐性乳癌、CD44+CD24-乳癌細胞など)細胞株を中心に、免疫不全マウス移植系を用いてシグナル阻害剤による治療効果を検証する。我々の開発したNon-invasive in vivo imaging systemを応用する平成25年度免疫不全マウス移植系における包括的治療法としての検証:組織移植系。手術時摘出新鮮乳癌組織を移植する系を用いて、同様の方法でシグナル阻害による抗腫瘍効果を確かめる。また、治療後組織におけるER, HER2, Hh関連分子の発現解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、機能解析関連物品に加え、治療実験を開始するため、免疫不全マウス等の購入が中心となる。平成25年度は、治療実験が中心となるため、免疫不全マウス購入が必要である。また、旅費等については国内外の学会発表と論文投稿などに関連した経費が中心となる。
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Research Products
(5 results)