2011 Fiscal Year Research-status Report
HGF/cMET axisとHBーEGFを標的とした胃癌標的治療法の開発
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23591921
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安本 和生 金沢大学, 大学病院, 講師 (90262592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胃癌 / 癌性腹膜炎 / MET / HGF / 分子標的治療 |
Research Abstract |
本年度は、胃癌性腹膜炎発症進展におけるHGF/MET axisの役割を明らかにするために、まずin vitroでの検討としてヒト胃癌細胞株や線維芽細胞(がん微小環境の構成員)を用いて、western blot法によりMET蛋白の発現状況、また細胞培養上清や癌性腹水中でのHGF蛋白量の検討を行った。次に、今回検討したヒト胃癌細胞株すべてでMET蛋白の発現が確認されたため、HGF刺激による生物活性(増殖・遊走)、細胞内増殖シグナル(Akt, ERK)活性化の有無を検討した。 その結果、検討したヒト胃癌細胞株5種(NUGC4,NKPS, MKN45, MKN28, TMK-1)すべてでMET蛋白の発現が観察された。一方、線維芽細胞ではMETの発現は認められなかった。とくにMET遺伝子増幅が知られているMKN45株では高発現していた。リン酸化MET蛋白についても検討を行い、MKN45,NUGC4ならびにNKPS の3株で発現が確認された。また、HGFの発現状況についての検討では、胃癌細胞株5種すべての培養上清中には測定感度以下であった。一方、線維芽細胞培養上清や癌性腹水中には、1 ng/mL以上の高いHGF蛋白の存在が確認された。次に、HGFによる生物活性誘導の有無について検討した結果、胃癌細胞株5株中NUGC4細胞の1株にのみ増殖活性の誘導が確認された。本NUGC4細胞を用いてHGF刺激による細胞内増殖シグナル(Akt, ERK)活性化の有無を検討した結果、MET,AKT,ERKのリン酸化の亢進が確認された。さらに遊走活性の誘導についての検討では、すべての胃癌細胞株で有意な活性の亢進が確認された。 今年度の検討から、HGF/METが、主にパラクリン機序で胃癌性腹膜炎発症進展とくに癌間質増生を伴うび漫浸潤性胃癌の癌性腹膜炎形成への関与を強く示唆する結果と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)ヒト胃癌細胞ならびにがん微小環境を構成する線維芽細胞におけるHGF/MET発現の検討 (2)臨床サンプルを用いたHGF/MET発現の免疫組織学的検討 (3)胃癌性腹水中のHGF蛋白濃度の測定ならびにHGFの胃癌細胞に対する生物活性誘導の有無についての検討を予定していた。これまでの検討で、(1)および(3)についてすでに検討を終え、現在臨床サンプルの免疫組織学的検討をここ1ヶ月以内に完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの検討と併せ、すでに確立済みの癌性腹膜炎発症マウスモデルを用いてin vivoにおけるMET阻害剤の抗腫瘍効果の検証を早い段階から開始する。すでに既知あるいは新規のMET阻害剤は入手済みで、in vitroでのHGF誘導性生物活性の阻害作用は確認している。専門家との意見交換などを通じて可能な限り連携協力を図り、効率の良く研究の精度ならびに深度の向上を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HGFが、がん微小環境を形成する線維芽細胞から産生誘導されることが明らかとなり、本誘導機序の分子生物学的解析、HGF産生能を有する線維芽細胞の増殖/遊走活性が癌性腹水中に高濃度に存在するEGFRリガンドならびにCXCL12(癌性腹水中高濃度存在)等の刺激による誘導されるか否かの検討、なかでもHB-EGFが3倍を超える線維芽細胞増殖を誘導することを明らかにしたが、HB-EGF産生誘導機序、とくにマクロファージから(胃癌細胞や線維芽細胞からの産生誘導は見られないことは確認済み)の誘導機序を詳細に検討する(150万)。さらにすでに確立済みの癌性腹膜炎発症マウスモデルを用いてin vivoにおけるMET阻害剤の抗腫瘍効果の検証を行う(200万)。すでに既知あるいは新規のMET阻害剤は入手済み、in vitroでの生物活性の阻害作用を現在進行中である(50万)。 なお、次年度使用額については、効率的な使用により端数が生じ残額となった。
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