2011 Fiscal Year Research-status Report
胃癌腹膜播種形成に関与するエピジェネティック変化の分子機構と治療への応用
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23591926
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
安田 裕美 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (60586767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 靖浩 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20324535)
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胃癌 / 腹膜播種 / マイクロRNA / メチル化解析 / cDNA解析 |
Research Abstract |
腹膜播種は胃癌における最も頻度の高い転移・再発形式であり,腹膜播種の治療の成績は胃癌の予後を大きく左右する。しかしながら、腹膜播種に対しては、これまでに「標準的治療」と言うべき治療法は存在しないのが現状である。腹膜播腫形成の過程は、癌細胞の胃壁深層への浸潤,漿膜面からの解離,腹膜への接着・浸潤というステップがあり、それぞれの過程において腹膜播種に関わる因子があるが、それらがどの様に関連し転移が成立しているのか、まだ十分には解明されておらず、この機序解明が新なた治療法の開発に貢献する可能性がある。 そこで本研究では、癌転移、とりわけ胃癌腹膜播種転移の分子シグナル機構の解明を目的として腹膜播種高発現胃癌細胞株と胃癌同時性腹膜播種を認めたhuman clinical sampleを中心としたmiRNA解析、メチル化解析とcDNA発現解析により癌転移の臓器特異的なシグナル分子を同定することを目的とする。 本年度は、胃癌にて当院で切除された摘出標本99例から胃癌組織と正常組織からまずは、miRNAの抽出とcDNA化を行い、realtime PCRにて測定し、その発現と臨床病理学的因子の検討を行った。今年度は胃癌腹膜播種形成には癌細胞のHGF,c-METの共発現によるAutocrine pathwayの関与が示唆され,この制御が今後の治療戦略につながる可能性があることを報告し、また胃癌患者血清sVAP-1低発現が胃癌進展と相関し、予後マーカーとなることを報告した。さらに胃癌組織におけるmiR-155発現の解析を行っているが、臨床病理学的因子や予後解析においても有意差を認めなかった。今後はさらにmiRNA解析, メチル化解析を中心に鋭意、実験を計画的に進めている。また、胃癌組織におけるcDNA発現解析と臨床病理学的因子の検討も並行して遂行し、国内外の学会や論文等で発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでにcinical sampleからのmicro RNAの抽出も終了しておりすでに測定を開始。いくつかのmicro RNA発現解析をすすめており、現時点では有意なもののpick upはできていないものの、今年度、さらにcDNA解析、タンパク発現解析のほか、メチル化解析まで進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に抽出し終えたmicro RNAの解析を中心にその機能解析と、遺伝子発現解析を並行して進め、あらたなtargetの癌進展への機序を解明し、そのvitro, vivoでの証明を鋭意進めていく。またタンパク機能解析のほかその発現調節をおこなうメチル化解析までさらに進めていく必要がある。また、腹膜播種高発現株作成に関しては、手技的にもcontaminationのリスクと生着率の低さが問題となっており、その影響もありやや実験がおくれ、未使用額3934円が生じた。今年度は、さらに腹膜播種関連遺伝子の機能解析を中心に、鋭意、実験を進めていく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究進捗状況に関連した未使用研究費が止む無く生じたが、平成24年度分と合算し十分検討したうえで使用していく予定である。<Human clinical sample(原発巣)でのDNA methylation statusと臨床病理学的検索> 1.胃癌切除症例約150例を対象に、CPG island methylation statusに関してmethylation specific PCRにて評価し、臨床病理学的因子や予後との相関をRetrospectiveに解析する。<胃癌患者の腹水および末梢血での発現確認と臨床病理学的検索> 1.胃癌同時性腹膜播種を呈した患者群と同時性腹膜播種を呈していない早期胃癌の腹膜播種マーカーの可能性を模索する。<腹膜播種関連遺伝子の機能解析:In vitro> 1.上記候補遺伝子の胃癌における機能解析候補遺伝子をoverexpressionさせた細胞株を作製する。また対象群のMKN-7, 45, KATO-III(P0)に、この候補遺伝子をSi RNA transfectionにて抑制し、下記の機能解析を行う。・cell proliferation assay・ colony formation assay ・ migration assay・ invasive assay・ anoikis assayなど<腹膜播種関連遺伝子の機能解析:In vivo> 1.上記候補遺伝子をstable knockdownした胃癌細胞株を作成する。2. 上記のノックダウン細胞株と対象群をそれぞれヌードマウスの腹腔内注入し、腹膜播種の形成への影響を確認する。3.上記のノックダウン細胞株と対象群をそれぞれヌードマウスに胃壁に注入し、腹膜播種の形成への影響を確認する。
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