2011 Fiscal Year Research-status Report
食道癌に対するDNA修復機構を標的とした分子治療に関する研究
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23591938
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江頭 明典 九州大学, 大学病院, 特任助教 (00419524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
掛地 吉弘 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80284488)
森田 勝 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), 統括診療部, 医師 (30294937)
大賀 丈史 九州大学, 大学病院, 助教 (60335958)
園田 英人 九州大学, 大学病院, 特任助教 (00465725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNA修復 |
Research Abstract |
本研究における目的は、「食道癌におけるDNA修復異常の分子機構を明らかするとともに、これらの経路を標的とした分子標的治療を検討すること」である。これまでの諸家の報告より消化管発癌におけるDNA修復機構関与は明らかであるが、食道発癌抑制においてのDNA修復経路の関与、その比重については定かではない。細胞が損傷を受けた時に、細胞周期を停止しDNA修復経路へと誘導するか、逆に細胞死経路へ至らせるかを選択する際にp53タンパク質が重要な役割を果たす。我々はこれまでに食道癌においてp53異常を高頻度に認めること、またp53遺伝子変異の原因としてDNA修復機構異常の関与が示唆されることを報告してきた(Egashira A et al., Cancer Sci, 2007)。そこでp53異常について、その遺伝子変異、LOHおよびタンパク質発現の解析を行った。食道扁平上皮癌90.6%に遺伝子変異を認め、その変異スペクトラムは他の癌腫と異なり、トランスバージョン(主にG:C→T:A)変異が優位であった。一方、p53遺伝子座のLOHを67.5%に、p53タンパク質発現異常を56.4%に認めた。これらの異常と予後との間に相関は認めず、悪性度ではなく発癌において重要であると考えられた(Egashira A et al., J Surg Oncol 2011)。これらの結果を踏まえ、DNA修復、特にDNA二本鎖切断修復機構に直接関わるRAD51について、タンパク質発現解析を行っている。現在約100例についての解析を行っており、これまでの観察と同様に約15%の症例で、細胞質優位の発現、細胞質および核発現消失などHR経路異常の関与が示唆される結果を得ている。症例の蓄積を行うと同時に、予後、化学放射線療法の感受性などとの関連を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「食道癌におけるDNA修復異常の分子機構を明らかするとともに、これらの経路を標的とした分子標的治療を検討すること」について、解析を行ってきた。まず、細胞が損傷を受けた時、DNA修復経路あるいは細胞死経路への誘導を選択する際に重要であるp53経路の異常を解析した。その結果は、食道扁平上皮癌90.6%に遺伝子変異を認め、その変異スペクトラムは他の癌腫と異なり、トランスバージョン(主にG:C→T:A)変異が優位であった。一方、p53遺伝子座のLOHを67.5%に、p53タンパク質発現異常を56.4%に認めた。これらの異常と予後との間に相関は認めず、悪性度ではなく発癌において重要であると考えられた(Egashira A et al., J Surg Oncol 2011)。また、DNA修復機構の中でこれまで解析があまり行われてこなかったDNAポリメラーゼの校正機能について、大腸癌を用いて解析を行った。その結果DNAポリメラーゼ校正機能異常の頻度は少ないものの大腸癌細胞において検出され、発癌に於いても何らかの役割を果たしていると考えられた。(Yoshida R et al., European Journal of human genetics 2011 )。またRAD51タンパク質については、現在約100例についての解析を行っており、これまでの観察と同様に約15%の症例で、細胞質優位の発現、細胞質および核発現消失 などHR経路異常の関与が示唆される結果を得ている。症例の蓄積を行うと同時に、予後、化学放射線療法の感受性などとの関連を観察中である。さらに研究代表者の異動に伴い解析対象例を増加することが可能となり、準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は「食道癌におけるDNA修復異常の分子機構を明らかするとともに、これらの経路を標的とした分子標的治療を検討すること」である。これまでの報告より食道癌においてもDNA修復経路、特にDNA二本鎖切断修復機構が関与していることが強く示唆され、同経路を標的とする治療が有用性である可能性がある。同時に、"synthetic lethality(合成致死)"即ち、あるDNA修復経路を欠損した癌細胞に対して、相補する他の経路をブロックすることで、両経路が抑制された癌細胞のみが致死的になるとの概念に基づき、相補する経路の同定が強く望まれる。今後の方針としては計画の如く、1.食道癌におけるDNA二本鎖切断修復機構に関わる異常の解析、2. 食道癌におけるDNA修復異常の包括的な解析による相補する経路の同定を行う。また最終的には食道癌に対する分子標的治療へと繋げるため、臨床病理学的因子や予後との関連を考察することが非常に重要である。前述したように研究代表者の異動に伴い、解析症例数の増加が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の方針としては計画の如く、1.食道癌におけるDNA二本鎖切断修復機構に関わる異常の解析、2. 食道癌におけるDNA修復異常の包括的な解析による相補する経路の同定を行うことである。研究代表者の異動に伴い解析症例数の増加が期待できる。。 そこで、平成24年度も引き続き食道癌臨床検体におけるDNA二本鎖切断修復関連分子(RAD51)の解析を行うと共に、細胞株を用いた解析を加えていく予定である。その上で平成25年度に予定している、食道癌におけるDNA修復異常の包括的解析および相補する経路の同定へと結びつけていく計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Loss of p53 in esophageal squamous cell carcinoma and the correlation with survival: analyses of gene mutations, protein expression, and loss of heterozygosity in Japanese patients2011
Author(s)
Egashira A, Morita M, Yoshida R, Saeki H, Oki E, Sadanaga N, Kakeji Y, Tsujitani S, Maehara Y.
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Journal Title
J Surg Oncol
Volume: 104
Pages: 169-175
Peer Reviewed
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