2012 Fiscal Year Research-status Report
食道癌に対するDNA修復機構を標的とした分子治療に関する研究
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23591938
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Cancer Center |
Principal Investigator |
江頭 明典 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00419524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
掛地 吉弘 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80284488)
森田 勝 九州大学, 大学病院, 講師 (30294937)
大賀 丈史 独立行政法人国立病院機構福岡東医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (60335958)
園田 英人 九州大学, 大学病院, その他 (00465725)
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Keywords | 食道癌 / DNA修復 |
Research Abstract |
本研究における目的は、「食道癌におけるDNA修復異常の分子機構を明らかするとともに、これらの経路を標的とした分子標的治療を検討すること」である。これまでの報告より消化管発癌におけるDNA修復機構関与は明らかであるが、食道発癌抑制においてのDNA修復経路の関与、その比重については定かではない。 食道扁平上皮癌において、p53遺伝子変異90.6%に、p53遺伝子座のLOHを67.5%に、p53タンパク質発現異常を56.4%に認める、しかしながら予後との間に相関は認めず、悪性度ではなく発癌において重要であることを報告した。(Egashira A et al., J Surg Oncol 2011)。 また、DNA二本鎖切断修復機構に直接関わるRAD51タンパク質発現解析を行い、約15%に細胞質優位の発現、細胞質および核発現消失などHR経路異常の関与が示唆される結果を得た。 今年度は、食道癌に対する化学(放射線)療法の感受性およびその効果についての解析を加えた。術前化学療法(NAC)を施行した37例の解析し、臨床的奏効率48%と比較的高率であるが、組織学的治療効果においてgrade 1b以上(癌細胞の1/3以上が死滅)のresponderは29.4%であった。また、食道癌245例を対象とした解析にて、根治的化学放射線療法における治療効果完全寛解(CR)が得られた症例は、進行度と相関しcStage0/1/2/3/4a: 100 / 94.7 / 73.3 / 36.6 / 13.3%であった。 放射線および化学療法(シスプラチン及び5FU)によって引き起こされるDNA損傷については、複数の修復経路が関与していることが知られている。これらの結果を踏まえ、さらに症例の蓄積を行うと同時に、治療前の生検材料を用いた解析の準備を進め、予後、化学放射線療法の感受性などとの関連を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は実臨床における、食道癌に対するDNA修復経路を標的とした治療効果および治療成績を中心とした解析を行った。研究代表者が異動となったため解析系の再構築などが必要となったためである。 その途中に、食道癌の特徴の一つである重複癌症例についての解析を行い、重複癌を有する食道癌においてもその治療成績は変わらないことを報告した(Egashira A. et al. submitted)。食道癌に合併する重複癌としては頭頚部癌が多く、その多くは食道癌と同じcarcinogenに暴露されており、発癌経路は類似していると考えられる。この知見により、たとえ重複癌を有していてもそれぞれに対する治療を的確に行う事で、比較的良い成績が得られることを示している。 上述の術前化学療法および根治的化学放射線療法の結果を踏まえ、症例の蓄積を行うと同時に、治療前の生検材料を用いた解析の準備を進め、予後、化学放射線療法の感受性などとの関連を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は「食道癌におけるDNA修復異常の分子機構を明らかするとともに、これらの経路を標的とした分子標的治療を検討すること」である。 これまでの報告より食道癌においてもDNA修復経路、特にDNA二本鎖切断修復機構が関与していることが強く示唆され、同経路を標的とする治療が有用性である可能性がある。同時に、 ”synthetic lethality(合成致死)”即ち、あるDNA修復経路を欠損した癌細胞に対して、相補する他の経路をブロックすることで、両経路が抑制された癌細胞のみが致死的になるとの概念に基づき、相補する経路の同定が強く望まれる。 今後の方針としては、1.食道癌におけるDNA二本鎖切断修復機構に関わる異常の解析を行うと共に、2.術前化学療法および根治的化学放射線療法にて治療効果が明らかな生検サンプルを用いることで、化学放射線療法の感受性や予後との関連の解析を行う。さらには、3.食道癌におけるDNA修復異常の包括的な解析による相補する経路の同定を行う、ことが非常に重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の方針としては計画の如く、1.食道癌におけるDNA二本鎖切断修復機構に関わる異常の解析を行う。2.術前化学療法および根治的化学放射線療法にて治療効果が明らかな生検サンプルを用い、化学放射線療法の感受性や予後との関連の解析を行う。3.食道癌におけるDNA修復異常の包括的な解析による相補する経路の同定を行う。 そこで、引き続き食道癌臨床検体におけるDNA二本鎖切断修復関連分子(RAD51)の解析を行うと共に、治療効果が明らかな生検サンプルを用いた解析を加えていく予定である。食道癌におけるDNA修復異常の包括的解析および相補する経路の同定および臨床病理学的および予後との関連の解明へと結びつけていく計画である。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Lymph node metastasis from cancer of the esophagogastric junction, and determination of the appropriate nodal dissection.2012
Author(s)
Kakeji Y, Yamamoto M, Ito S, Sugiyama M, Egashira A, Saeki H, Morita M, Sakaguchi Y, Toh Y, Maehara Y
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Journal Title
Surg Today
Volume: 42(4)
Pages: 351-358
DOI
Peer Reviewed
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