2011 Fiscal Year Research-status Report
消化器癌における新規癌関連遺伝子DTLの癌化機構の解明と臨床応用
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23591945
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
當麻 敦史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30516191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
小松 周平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40578978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 消化器外科学 / 分子標的 / DTL |
Research Abstract |
食道癌は、極めて悪性度の高い難治性の癌であり、手術、化学放射線療法、抗癌剤及び分子標的治療等の集学的な治療が望まれる。しかし、未だ実地臨床の現場で有望な診断及び治療標的分子は少ないのが現状である。申請者らは、43種類の食道扁平上皮癌細胞株に対してアジレント244KオリゴアレイCGH解析を行い、既知の増幅・欠失領域の再評価を行った。(Komatsu S. et al. Carcinogenesis 2009, Haruki S, Komatsu S et al. Carcinogenesis 2010)。本研究は、食道扁平上皮癌株の1q32-41増幅領域に坐位し、高発現するDTL遺伝子について、(1)食道癌臨床検体を用いたDTLの蛋白発現解析による予後、悪性度に対する評価 (2)発癌、悪性度に関するDTL分子機構の更なる解明(下流分子、標的分子の同定)、(2)化学・放射線療法の感受性予測や耐性作用の解明、(4)、p53発現の同時測定による診断マーカーとしての応用、(5)血中遊離DNAのDTL遺伝子コピー数の定量による血液・体腔液診断、早期診断への応用、(6)他臓器癌におけるDTL遺伝子発現亢進による腫瘍の増殖・悪性度への関与の評価、を評価することを目的とした。今回、(2)に関して、食道扁平上皮癌細胞株のDTL発現株を用いて、数種類のDTL特異的siRNAを用いて、DTL遺伝子をノックダウンしたとき、G2/Mアレストを伴う細胞増殖抑制が認められた。これらはp53非依存的に起こり、FACS解析で確認した。現在、アレイ解析によりDTLと関連するmicroRNA、標的分子の解析を進めている。さらに、(1)に関して、臨床検体80例を用いてDTL発現と関連する臨床病理学的因子、予後と関連を解析している。また、本年度は、以前から解析を進めている研究と当研究にに関連する消化器癌コホート作成に関連した臨床研究成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DTL遺伝子と食道扁平上皮癌との関連について解析を進めてきた。食道癌は、DTLの坐位する1q32に約15%の頻度で増幅を持つ。細胞株レベルでは正常食道発現と比較しDTLは100%高発現を認める。過去の報告と我々の知見をあわせると、他の臓器や正常組織での発現を認めないため、治療標的分子として極めて有望である。今回、DTL発現細胞株を用いて、腫瘍の増殖に関連する分子であることを明らかにした。すなわち、数種類のDTL特異的siRNAでノックダウンすると、G2/M細胞周期停止を起こすことも明らかにした。臨床検体でも、悪性度や予後との関連が明らかになりつつある。現在、計画通りに研究は進んでおり、今後、DTLが制御するmicroRNAや標的分子の網羅的解析を含めた詳細な解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
DTL遺伝子の癌の悪性度、予後との関連をさらに明らかにする。すなわち、浸潤、転移に関連する分子であることを、基礎的に明らかにする。また、DTLが制御するmicroRNAや標的分子の網羅的解析を含めた詳細な解析を進める。一方、国立がん研究センター病理の津田 均博士の指導のもと、臨床検体を用いてDTL発現の臨床的意義を明らかにし、抗癌剤や放射線感受性分子であるかの評価も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度において以下の研究を計画している。(1)DTLが制御するmicroRNA、遺伝子の網羅的解析:アレイ解析を用いての解析を準備している。(2)化学・化学放射線療法の感受性予測や耐性作用の解明:乳癌細胞株や胃癌細胞株レベルでの実験でDTL遺伝子をsiRNA でノックダウンすると細胞増殖が抑制される報告され(Ueki T et al. Oncogene 2008, J Li et al. Br J Cancer)、食道癌患者の化学放射線療法の治療感受性やその他消化器癌の化学療法の感受性を予測し、治療の個別化が可能であることを検証する。(3)DTL遺伝子発現 、p53発現の同時測定による診断マーカーとしての応用:本邦では2007年11月に食道癌、大腸癌、乳癌でp53血清抗体価の測定が保険収載され可能となった。DTL蛋白発現評価に加えて、p53血清抗体価のデータを追加することで、保険医療として予後の個別化が可能となると考えられる。また、将来的には多くの癌でDTL発現が陽性となる患者を術前・術後採血で評価可能とするために、DTLの血清抗体価を測定するシステムの構築を目指す。
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Research Products
(4 results)