2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591970
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 良幸 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30255468)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | colorectal cancer / chemotherapy / seisitivity / heat shock protein 27 |
Research Abstract |
HSP27 の発現および機能抑制による抗癌剤(5-FU)感受性亢進よる新たな大腸癌治療法を開発すること、5-FU以外の抗癌剤(CPT-11、l-OHP)耐性とHSP27との関連について明らかにすることを目的とし以下の実験を行い成果を得た。1)HSP27発現抑制による5-FUの抗腫瘍効果の検討をxenograft modelで検証した。HSP27高発現で5-FU低感受性のヒト大腸癌細胞株HCT116にHSP27 shRNAを導入し、stable knock down transfectantsを作成した。In vitroにおいてHSP27蛋白発現量と5-FU感受性(IC50)との相関が確認できた。さらに、HSP27 shRNA導入stable clonesを用いたxenograft model(ヌードマウス皮下移植モデル)において、HSP 27蛋白抑制clonesでは5-FU感受性が増強(腫瘍が縮小)する結果が得られ、xenograft modelにおいてもHSP27が5-FU感受性に関与する因子であることを明らかにした。2)他抗癌剤(CPT-11およびl-OHP)感受性とHSP27発現との関連について検討した。各種ヒト大腸癌細胞株(HT29, SW480, SW620, RKO, SW1116, T84, WiDr, HCT-116, HCT-15, LoVo, DLD-1, Colo201, Colo205)におけるCPT-11とl-OHPの感受性をMTT法によりIC50で評価し、HSP27蛋白発現(western blot法)と比較検討した。in vitroにおいてHSP27を高発現する大腸癌細胞株では5-FUと同様に、CPT-11およびl-OHPに抵抗性を示した。以上より、HSP27は大腸癌細胞において多剤抗癌剤に対する感受性(耐性)因子である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれは、これまでの基礎的実験において大腸癌における5-FUの薬剤耐性とHSP27発現が強い関連があること、さらにRNA干渉(siRNA)によりHSP27蛋白発現を抑制すると5-FU耐性を緩和することができることをin vitroで明らかにしてきた。平成23年度は、大腸癌細胞株へのHSP27 shRNA導入によりHSP27蛋白発現を恒常的に抑制する大腸癌細胞株(transfectants)を樹立することができ、HSP27発現および機能の解析を行う実験の幅が拡大した。そして、このtransfectantsを用いHSP27発現と5-FU感受性との関連(HSP27発現抑制は5-FU感受性を増強)を動物実験モデルで明らかにすることができた。また、5-FUのみならず、他の大腸癌に対する抗癌剤(CPT-11およびl-OHP)についても、in vitroにおいてHSP27発現大腸癌細胞株では耐性を示すことを明らかにでき、HSP27は大腸癌における多剤抗癌剤耐性因子である可能性を示すことができた。今後は、新たな大腸癌治療として、HSP27を標的とした遺伝子治療(発現抑制)、drug delivery systemによる腫瘍特異的治療、HSP27機能抑制(リン酸化阻害)による治療の開発を目指すことは有意義であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)GFP組み込み HSP27 siRNA plasmid封入抗EGF-R抗体結合のPMDN complexの作成と特異性の検討 抗EGF-R抗体結合PMDN complexを作成し、GFP組み込みHSP27 siRNA plasmidを封入する。このPMDN complexを各種ヒト大腸癌細胞株にin vitroで添加し、それぞれの細胞を蛍光顕微鏡にて観察し組織移行性を確認する。Negative controlとしてscramble siRNA plasmid 封入抗EGFR 抗体結合 PMDN complexを作製し、これと比較して大腸癌細胞株におけるHSP27蛋白の発現レベルと5-FU耐性に対する抑制効果をin vitroで検証する。2)5-FU感受性とリン酸化 HSP27(p-HSP27)発現およびリン酸化阻害との関連 各種ヒト大腸癌細胞株(HT29, SW480, SW620, RKO, SW1116, T84, WiDr, HCT-116, HCT-15, LoVo, DLD-1, Colo201, Colo205)における5-FU暴露時および非暴露時におけるHSP27蛋白発現変化およびp-HSP27(ser15, ser78, ser82)発現変化と5-FU感受性(IC50)との関連を検討する。また、同様にHSP27 stable knock downおよびstabke expression transfectantを用いて検討する。さらに、各種HSP27リン酸化酵素阻害剤(SB203580, Go6983, GF109203, Rapamycin)を用いてHSP27 ser15, ser78,ser82のリン酸化を阻害し、リン酸化抑制程度と5-FU感受性変化との関連をin vitroおよび動物モデルで検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に賦与された研究助成金について、次年度への繰越金が生じた理由は、1)実験助手の都合により勤務日数が減少し、実験助手への謝金額が減少したこと、2)本研究に関し国外での研究発表を予定していたが、震災の影響より海外渡航を自粛したため旅費が減少したことの2点が大きな原因である。平成24年度の研究助成金の運用については、繰越金と合わせ研究費の多くを、細胞培養関連物資(培養液、牛胎児血清、培養容器など)や抗体・試薬、動物(マウス)などの消耗品の購入費、さらに試薬調整や細胞培養管理を行う実験助手への謝金に運用する予定である。また、抗癌剤耐性にかかわる情報を速やかに入手できるよう国内外の研究会・学会(アメリカ癌学会、アメリカ癌治療学会、日本癌学会など)に参加するとともに、本研究により更なる成果が得られれば学会発表も行うため、経費として旅費も申請する。
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