2012 Fiscal Year Research-status Report
切除不能大腸癌に対する抗癌剤感受性予測遺伝子による個別化医療の実践
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23591972
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
緑川 泰 日本大学, 医学部, 助教 (10292905)
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Keywords | 癌 / 核酸 / 薬剤反応性 / 遺伝子 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
切除不能大腸癌に対するFOLFOX療法の奏功率は約50%とされ、臨床病理学的因子による治療前の抗癌剤治療効果予測は依然として困難である。一方で抗癌剤感受性予測については機械学習アルゴリズムが発現プロファイルに応用され感受性予測が試みられ、決定木による予後予測遺伝子の選択をBootstrap Aggregation (Bagging)法により1-100万回シュミレーションを繰り返すランダムフォレスト法は、予測因子が症例数を大幅に上回る発現プロファイルの判定を行う目的で開発された解析法である。今回我々はmFOLFOX6により治療された切除不能大腸癌83例(4コース終了後CTにより判定:有効42例、無効41例、奏効率50.6%)を54例のトレーニングセットと29例のテストセットに分けて遺伝子発現プロファイリングを行い、ランダムフォレストにより薬剤感受性遺伝子セットの選定、及びcross validationによる各症例の効果予測判定を行った。トレーニングセットで構築した14個の予測遺伝子(SMURF2, MBTD1, AP3M2, RNF141, NPEPPS, BPTF, FAM73A,APPBP2,AMZ2P1,SRGAP1,NMT1,CSPP1,EIF1,CEP290)を用いた予測モデルでは感度91.3%、特異度95.6%で効果予測が可能であった。さらにこの予測モデルを用いたテストセットでは感度80.0%、特異度92.8%であった。すなわち治療による奏功率が50.6%であったFOLFOXによる治療効果を発現プロファイルに対するランダムフォレストを用いた解析により、より高い確率で予測することが可能であり、有効な治療法を選択する個別化医療が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切除不能大腸癌のFOLFOX療法による感受性については、すでに83例の治療前に得られた検体からRNAを抽出してマイクロアレイを行い、ランダムフォレスト法により良好な予測結果が得られる遺伝子セットの抽出をおこった。これは前半2/3の症例をテストセットとし、後半1/3の症例をバリデーションセットとして予測を行い予測の信頼性について確認し得た。また、この操作についてはテストセットとバリデーションセットをランダムに入れ替えを行い5回同様の解析を行ったが良好なFOLFOXに対する良好な薬剤感受性予測が可能であったことから十分に信頼性の得られた結果となった。この結果についてはすでに学会などでは報告しており、最終年度となる今年度ではこのデータを英文による論文化を行い公表してゆく予定である。 以上のように、前半の2年間で実験とデータベースの構築、及びバイオインフォマティクスによる解析をおこない、当初の目的であった薬剤感受性を規定する遺伝子を同定できたため、研究は順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現値に加えて包括的にメチル化解析を前年度まで解析したのと同一サンプルについて行っており、これらの発現値とプロモーターメチル化の二つの異なるパラメータを統合的に解析することを最終年度のテーマとする。具体的にはiClusterと呼ばれるバイオインフォマティクスの解析方法を用い、単独の解析のみからは得られないクラスタリングや表現型を抽出することを目的とする。 薬剤感受性についてはこのような統合解析はいまだに報告されてなく、今後新しい知見が得られる可能性がある。また、肝転移、リンパ節転移など抗がん剤感受性のみでなく、ほかの臨床情報もリンクさせることが可能であるため、病態生理に関与する遺伝子の発現状態およびプロモーターメチル化状態を同定することが可能であると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部のサンプルについてはまだプロモーターメチル化解析が未施行のため、今年度は残りのサンプルの解析を行う。ただし、大部分の症例については実験、解析およびバイオインフォマティクス解析まで終了しているため、今後はこのデータの発表を中心に研究費を使用してゆく。具体的には謝金、人件費、英文校正、投稿料、学会発表の旅費などに充てられる予定である。また、その過程で解析用のソフトも必要となると考えられる。
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