2011 Fiscal Year Research-status Report
ROS産生からみたCD133陽性腫瘍細胞の癌幹細胞性と大腸がん治療への基盤研究
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23591978
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
早田 浩明 千葉県がんセンター(研究所), 医療局・消化器外科, 研究員 (90261940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下里 修 千葉県がんセンター(研究所), 研究局・発がん研究グループ, 上席研究員 (30344063)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大腸がん / 癌性幹細胞 / CD133 / ROS産生 |
Research Abstract |
近年、がんの難治性を説明しうる「癌幹細胞仮説」が提唱され、当該細胞を標的とした新規治療開発を目指している。平成23年度は、大腸がん培養細胞株およびヒトヒト大腸がん臨床検体を用いて、CD133発現とROS産生レベルについて検討した。RNA干渉法によってCD133発現レベルを人為的に低下させたヒト大腸がん細胞株を用いて、DCFDAの蛍光強度を指標にしてROS産生レベルを検討した。その結果、CD133発現低下細胞は、コントロール細胞と比較して平常時のROS産生レベルに大きな差が見られなかったが、過酸化水素による酸化ストレス条件下でのROS産生レベルが上昇していた。このことから、CD133は大腸がん細胞における酸化ストレス耐性に機能していることが示唆された。ヒト大腸がん組織におけるCD133発現とROS産生との関連性をフローサイトメトリー法で検討した。ヒト大腸がん組織におけるCD133発現細胞は、多くの腫瘍でがん幹細胞マーカーとして報告されているEpCAMとCD44を同時に発現することが、明らかになった。また、CD133陽性細胞のCD44発現はCD133陰性細胞のそれと比較して高かった。CD44は胃がん細胞において酸化ストレスの回避機構に関与することが報告されている。したがって、ヒト大腸がん組織においても、CD133発現はCD44を介して酸化ストレス耐性を発揮させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヒト大腸がん組織を用いて実施することを主眼としている。したがって、臨床材料の蓄積が重要であり、これには一定の期間を要する。また、、がん組織を提供していただいてからの期間が短いために臨床情報の顕著な変化はほとんど出ていない。現在までの臨床検体の収集状況は概ね順調であると考え、得られた検体数を増やしていき、当該患者のフォローアップを確実にすることで、一定の成果が得られると想定している。また、培養細胞を用いた解析も年度当初に申請した計画内容を実施することができ、ヒト大腸がんの酸化ストレス耐性におけるCD133の機能が明らかになりつつある。したがって、現在の達成度は概ね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、ヒト大腸がん組織を用いた解析を継続していくが、以下に挙げた試験管内での解析を中心に、研究を推進する予定である。1.ヒト大腸がん細胞のin vitro解析:CD133からPI3キナーゼ経路へのアダプター分子の同定(担当:早田)C-末端部チロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異型CD133蛋白質あるいは野生型CD133遺伝子をヒト大腸がんSW480細胞株に導入し、当該細胞のPI3キナーゼの活性化状況の解析から、CD133とPI3キナーゼ経路との機能的連携の有無を検討する。同時に、酵母Two-hybridシステムを用いて、CD133のC末端部と会合し、PI3キナーゼの活性化を制御するアダプター分子を探索し、その分子機序を生化学・分子生物学的に解明する。また、当該蛋白質のCD133との結合部位のみからなる変異型蛋白質断片がPI3キナーゼ活性化を阻害できるかどうかを検討する。2.ヒト大腸がん細胞のin vitro解析:ROS産生レベルと幹細胞性およびストレス耐性の検討(担当:下里)前年度で得られた幹細胞マーカーの発現レベルとROS産生レベルの異なるヒト大腸がん細胞のsphere形成と崩壊および幹細胞マーカーおよび分化マーカーの発現誘導を検討する。さらに、ROS産生誘導あるいはROS産生阻害させたときの、上記の幹細胞様細胞が幹細胞性の維持を上記のsphere形成、幹細胞マーカー発現などで検討する。同時に、I) ROS産生の低い細胞が細胞静止期(G0期)にあるかどうか、II) ROS産生阻害剤の存在下で、細胞静止期(G0期)にある細胞の割合が上昇するかどうか、III) ROS産生を上昇させた場合の細胞周期や抗がん剤感受性の変化、を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、学会参加や論文投稿などの成果発表に関する費用を除いた全てを実験用試薬やプラスチック製品などの消耗品の購入に充当する予定である。また、次年度も1式が50万円を上回る物品を購入する予定はない。次年度使用予定の研究費が生じた理由は、試薬の使用量が想定よりも少なかったことが主たる原因と考える。試薬にも消費期限があるので、前もって購入することはしなかった。当該研究費も次年度の試薬購入に充当する計画である。なお、本研究には代表者を含めて2名の参画がある。エフォートの配分を考慮して、研究費の7割を研究代表者が、3割を分担研究者が使用する予定である。
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Research Products
(14 results)