2013 Fiscal Year Annual Research Report
ROS産生からみたCD133陽性腫瘍細胞の癌幹細胞性と大腸がん治療への基盤研究
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23591978
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
早田 浩明 千葉県がんセンター(研究所), 医療局・消化器外科, 研究員 (90261940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下里 修 千葉県がんセンター(研究所), 研究所・発がん研究グループ, 上席研究員 (30344063)
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Keywords | 大腸がん / 癌性幹細胞 / CD133 / ROS産生 |
Research Abstract |
近年、がんの難治性を説明しうる「癌性幹細胞仮説」が提唱され、当該細胞を標的とした新規治療開発を目指した基盤研究を行っている。昨年度に引き続いて平成25年度は、ヒト大腸がん培養細胞株およびヒト大腸がん臨床検体を用いて、CD133とPI3キナーゼ経路との機能的連携の有無を検討した。まず、ヒト大腸がん初代培養細胞にCD133を過剰発現させた場合、培養細胞株と同様に下流のAKTリン酸化は亢進した。次に、CD133のカルボキシル末端にある二つのチロシン残基のリン酸化レベルはEGFからのシグナルによって上昇した。またこのリン酸化は、下流のAKTリン酸化を活性化するだけでなく、ヌードマウス皮下腫瘍モデルでの腫瘍形成速度、ならびにスフェア形成速度をも上昇させた。これらの結果から、CD133のチロシンリン酸化の持つ生物学的意義が初めて見出された。 つづいて、CD133のカルボキシル末端に結合する分子として昨年度に同定した受容体型蛋白質チロシン脱リン酸化酵素PTPRKの機能を生化学的に検討した。その結果、CD133でリン酸化されている二つのチロシン残基は、それぞれがPTPRKの標的となり、脱リン酸化された。さらに、この脱リン酸化反応は、下流のAKTリン酸化を減弱した。つづいて、オンラインで利用可能な大腸がんコホートの臨床情報を用いた無再発生存期間(RFS)の解析から、CD133の高発現およびPTPRKの低発現が患者のRFSの短縮につながることが示された。さらに、CD133高発現群の患者においてもPTPRKの低発現はRFSを短縮した。これらの結果をまとめると、PTPRKは脱リン酸化を介して、CD133の持つ腫瘍形成を増強する機能を抑制している可能性が示唆された。 なお、この成果は、学術雑誌Oncogeneへ投稿され、2014年4月に受理されている。
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