2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591982
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高村 博之 金沢大学, 大学病院, 助教 (40377396)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | Zfp57 / Nanog |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに胚性幹細胞(ES細胞)と癌細胞株の詳細な遺伝子 profiling の結果,Zfp57遺伝子が両者に共通した増殖関連転写因子であることを明らかにした.さらに申請者らは,Zfp57 が幹細胞の未分化能維持に欠かすことのできない STAT3 や Oct3/4 の下流に位置する転写因子であり,Nanog を介してβ-catenin 転写経路の下流にも位置し,胚性幹細胞や癌細胞株の自己複製能と増殖能にきわめて重要な役割を担っていることを明らかにしつつある.Nanog はES細胞や癌細胞の重要な転写因子であり,ヒトの各種癌において,その高発現が予後不良の因子と報告されている.しかし,これまでZfp57遺伝子そのものについては,十分な検討が行われていなかった.そこで,申請者らは初年度に以下の研究を行い成果をあげた.【研究成果】(1) Enhancer領域を改変したさまざまなZfp57遺伝子のクローンを作成して,Nanog の発現と Zfp57 の発現との関係について検討を行った.その結果,Nanog は転写因子として Zfp57 のすぐ上流に位置し,Zfp57 は Nanog の直接支配を受けることを明らかにした.(2) (1)の結果をもとに,Zfp57遺伝子の enhancer 領域を改変した様々な vector を用いて解析を進めた結果,Zfp57遺伝子の「-210~+79」領域に Nanog の binding site が存在することが明らかとなった.さらに,Nanog の binding site に関する過去の報告をもとに検討した結果,同領域の3か所の「ATT」領域が Nanog の binding site であることがほぼ確定した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的は,(1) Nanog は転写因子として Zfp57 のすぐ上流に位置し,Zfp57 は Nanog の直接支配を受けていることを明らかにすること,(2) Zfp57遺伝子の enhancer 領域の解析を進め,Nanog の binding site を明らかにする2点であった.(1) Enhancer領域を改変したさまざまなZfp57遺伝子のクローンを作成して,Nanog の発現と Zfp57 の発現との関係について検討を行った結果,Nanog は転写因子として Zfp57 のすぐ上流に位置し,Zfp57 は Nanog の直接支配を受けることを明らかにした.(2) Zfp57遺伝子の enhancer 領域を改変した様々な vector を用いて解析を進めた結果,Zfp57遺伝子の「-210~+79」領域に Nanog の binding site が存在することが明らかとなった.さらに,Nanog の binding site に関する過去の報告をもとに検討した結果,同領域の3か所の「ATT」領域が Nanog の binding site であることがほぼ確定した.以上より,初年度の目的はほぼ達せられており,研究はおおむね順調に進展していると自己評価いたします.
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) まずはじめに,Oligo DNA を用いた Pull down assay (in vitro) や Chromatin immuno-precipitation (in vivo) を行い,Zfp57遺伝子上流域の Nanog の binding site を確定いたします.それをもとに論文を投稿します.(2) ヒトの各種癌の切除標本の病理検体を用いて,Nanog と Zfp57 の発現を詳細に検討し,臨床的な意義について明らかにします.(3) 各種チップを用いて,Zfp57の下流遺伝子の探索を行います.これまでの研究で implinting gene がそのターゲットの有力候補の一つであることを突き止めています.これが直接的なものなのか,あるいは他の因子を介した間接的なものなのかを明らかにする必要があります.(4) Zfp57遺伝子と癌細胞の足場非依存性増殖に関する検証を行います.Zfp57遺伝子の高発現により,増殖に足場を必要とする培養細胞が足場非依存性に増殖できるようになりることを明らかにしました.Zfp57下流遺伝子候補の中のどの遺伝子が,この足場非依存性の増殖により深く関与しているのかを明らかにします.これに深く関与する遺伝子こそが癌幹細胞表現系の一躍を担っているものと推察します.ES細胞やiPS細胞は Nanog を介した Zfp57 の過剰発現により造腫瘍性を引き起こすと可能性が推察されます.ES細胞の self renewal に必ずしも必要でない Zfp57 とその下流の遺伝子を制御することで,ES細胞やiPS細胞の未分化能が損なわれずに造腫瘍性のみを欠失させることができれば,きわめて画期的なことです.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) Zfp57遺伝子上流域の Nanog の binding site を確定するために Oligo DNA を用いた Pull down assay (in vitro) や Chromatin immuno-precipitation (in vivo) を行う必要があります.そのための試薬や器材・器具の購入に使用させていただきます.この結果をもとに論文を投稿する予定のため,この経費に使用させていただきます.また,この結果を国内,国際学会で発表するための経費の一部に使用させていただきます.(2) ヒトの各種癌の切除標本の病理検体を用いて,Nanog と Zfp57 の発現を詳細に検討し,臨床的な意義について明らかにするために,抗体を含めた試薬や器材・器具の購入に使用させていただきます.(3) 各種チップを用いて,Zfp57の下流遺伝子の探索を行います.これまでの研究で implinting gene がそのターゲットの有力候補の一つであることを突き止めています.これが直接的なものなのか,あるいは他の因子を介した間接的なものなのかを明らかにする必要があります.このチップを購入するための費用に使用させていただきます.
|