2012 Fiscal Year Research-status Report
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23591982
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高村 博之 金沢大学, 大学病院, 助教 (40377396)
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Keywords | がん幹細胞 |
Research Abstract |
① Chromatin immuno-precipitation (ChIP) assay を用いて検討した結果,Zfp57遺伝子のEnhancer領域にNanogが結合することが確認された. ② 食道癌,胃癌,大腸癌,膵癌,肝癌,乳癌などのヒト癌組織を用いてZfp57の発現を検討した結果,様々な癌組織でZfp57蛋白の発現が認められることが明らかとなった.特に大腸癌で高頻度に発現が認められた. ③ 悪性腫瘍由来のHT1080細胞を用いて,Zfp57過剰発現細胞とZfp57ノックダウン細胞を作成し,それらの増殖能を評価した.その結果,Zfp57過剰発現細胞は増殖能が高く,一方,Zfp57ノックダウン細胞は増殖が抑制されることが明らかとなった.さらにそれらの細胞をマウスの皮下へ移植したところ,Zfp57過剰発現のHT1080細胞は増殖能が高く,一方,Zfp57ノックダウン細胞は増殖能が低下することが明らかとなった. ④ Zfp57の下流分子について検討したところ,Imprinting gene に加えて Insulin like growth factor (IGF) 2 が制御を受けていることが明らかとなった.Zfp57を過剰発現させた細胞は増殖能が高く,足場非依存性に増殖するとともにIGF2の発現が亢進していた.これにIGF2の中和抗体を作用させたところ,HT1080細胞の足場非依存性増殖能が低下することが明らかとなった.つまり,Zfp57高発現 ⇒ IGF2の高発現 ⇒ HT1080細胞の足場非依存性増殖という図式が成り立つことが明らかとなった. ⑤ ES細胞も悪性腫瘍由来の培養細胞と同じようにNanogを過剰発現するとZfp57を介して足場非依存性増殖が促進されることが明らかとなり,このことが「がん幹細胞」と共通する生物学的な特性なのではないかと推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画した研究は以下のごとく達成しており,概ね順調に進展していると判断いたします. ① Zfp57遺伝子上流域の Nanog の binding site を確定するために Chromatin immuno-precipitation (ChIP) assay を行いZfp57遺伝子のEnhancer領域にNanogが結合することがほぼ確認されました. ② ヒトの各種癌の切除標本の病理検体を用いて,Nanog と Zfp57 の発現を詳細に検討し,臨床的な意義を明らかにしました. ③ Zfp57の下流遺伝子の探索を行った結果,imprinting gene に加えて Insulin like growth factor (IGF) 2 が制御を受けていることが明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
① Chromatin immuno-precipitation (ChIP) assay を用いて検討した結果,Zfp57遺伝子のEnhancer領域にNanogが結合することがほぼ確認されたので,論文投稿の準備を進めます. ② 当該年度は,悪性腫瘍由来のHT1080細胞を用いて,Zfp57過剰発現細胞とZfp57ノックダウン細胞を作成し,それらの増殖能をマウスの皮下移植モデルを用いて評価したが,今後はさらにマウスを用いて肺転移能を評価する予定である.マウスの大腿四頭筋内に各種細胞を移植し,Zfp57の発現状況が肺転移形成能にどのように影響するのかを評価する. ③ Zfp57の下流分子について検討したところ,Zfp57高発現 ⇒ IGF2の高発現 ⇒ HT1080細胞の足場非依存性増殖という図式が明らかとなったが,今後は上皮系悪性腫瘍(癌)由来の培養細胞を用いて,同様の評価を行い,上皮系細胞においても同様の図式が成り立つかどうかを評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
① Zfp57遺伝子のEnhancer領域にNanogが結合することがほぼ確認されたので,論文投稿の準備を進めますが,その投稿支援の費用や国際学会での発表の旅費に使用させていただきます. ② マウスを用いて肺転移能を評価する予定のため,マウスを購入・飼育するための費用に使用させていただきます. ③ 上皮系悪性腫瘍(癌)由来の培養細胞を用いてさらに実験を進めていくため,培養細胞の購入や培養液・器具の購入に使用させていただきます. ④ 各種ベクターや,抗体,試薬などの実験のための物品購入に使用させていただきます.
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