2011 Fiscal Year Research-status Report
肝類洞機能を重視した新しい視点に基づく人工肝臓補助システムの開発
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23591984
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30181316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 寛 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (40322127)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人工肝補助装置 / Kupffer細胞 / CLP model / IL-17A / ノックアウトマウス / HMGB1 / 肝温虚血再還流モデル / glycyrrhizin |
Research Abstract |
肝類洞内のresident macrophage である Kupffer細胞が肝細胞の増殖、ならびにその機能保持に如何なる作用を有するかの検討を施行した。この検討は申請者がKupffer細胞と肝実質細胞の共存が人工肝補助装置の新たなるツールになるとの発想の根拠になる重要な課題である。至的な肝類洞内の Kupffer細胞の活性化を検討するために、ラットにCLP modelという腹腔内の感染巣モデルを作製し検討した。その結果、肝類洞内の Kupffer細胞はその刺激のソースならびにその程度により、産生されるサイトカインの質と量さらにその影響が異なることが今年度の研究により明らかになった。要約すれば、CLPモデルにおいては重篤な肝障害は惹起されず、肺障害が惹起されることが明らかにされた。すなわち、このモデルにおける肝類洞内のKupffer細胞は肝障害を惹起させることはないことが明らかになった。しかも、IL-17A ノックアウトマウスによる検討ではIL-17A 非存在下ではHMGB1の血中濃度が上昇し多臓器不全の原因になることが示唆された。すなわち、IL-17Aが肝細胞障害ならびに肺障害を防御する、キーとなるサイトカインであることが明らかになった。さらに肝障害性に働くと考えられる肝類洞内のマクロファージがKupffer細胞であるかを検討したところ、脾臓からのマクロファージもきわめて重要な働きをしていることが明らかになった。また、別の肝障害モデルである肝温虚血再還流モデルでは、肝細胞障害により誘導される障害性サイトカインであるHMGB1の上昇がglycyrrhizinの投与により抑制されることも明らかにした。この結果は、申請者らが目指している、肝細胞機能の代替のみではなく、全身の感染、また免疫機能の制御の中心としての肝臓を意識した人工肝補助装置の開発に向けての大きな成果と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初は人工肝補助装置の実用化に向けた肝実質細胞ならびにKupffer細胞の至的な共培養の方法の確立に主眼が置かれた。しかしながら、共培養における両者の機能を高いレベルで維持しつつ、双方が如何に合目的的に作用するかを解析する中で、種々のモデルを開発し検討した結果、人工肝臓補助装置のハードの面のみならず、その基盤となる種々の病態が明らかになり、この面から本研究は格段に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ハード面での取り組みを開始したい。具体的には肝細胞をスフェロイドの形態でしかも血液還流可能なポリウレタン膜上での高密度培養を確立したい。さらにそのポリウレタン膜上に、段階的に肝Kupffer細胞を添加し、種々の生体由来刺激を肝Kupffer細胞に加えることにより、肝細胞をスフェロイドにいかなる形態的、機能的変化が生じるかを明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝細胞障害を惹起しない肝Kupffer細胞からの至適サイトカイン量測定のため、ラット及びサイトカイン抗体を購入する予定である。また、肝細胞、Kupffer細胞によるスフェロイド作成及び肝細胞オルガノイドの作製のため、細胞培養関係、ポリウレタン膜、ハイドロゲルを購入する予定である。
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