2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591999
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
林 道廣 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90314179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 真司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (80288703)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝炎 / キマーゼ |
Research Abstract |
「研究の目的」は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と脂肪肝及び肝線維化へ至る経緯におけるキマーゼとの関連性をNASHモデルにて解析しキマーゼ阻害薬の脂肪肝及び線維化に対する予防・治療効果を検討する事であった。 「23年度の実施計画」は、メチオニンコリン欠乏食(MCD)誘発性NASHモデルをハムスターで作製し、経時的に血液及び肝臓組織の脂肪化ならびに線維化とキマーゼとの関連性を明らかにする事であった。 「23年度の実績」は、ハムスターにMCD食を負荷し、負荷前(正常)、負荷後12週及び24週において、肝機能関連因子、摘出肝の脂肪肝ならびに線維化の程度を組織学的、生化学的に解析した。MCD食負荷後12週の時点で、正常群に比し、(1)血中AST・ALT値が有意に増加。(2)普通食で認められなかった肝脂肪滴が、MCD食負荷群で検出。負荷群において、(3)シリウスレッド染色による肝の線維化面積、(4)肝のキマーゼ活性、(5)肝組織中マロンジアルデヒド(MDA)値、(6)コラーゲンI、III、α-SMAの遺伝子発現、が有意に増加した。次に、(7)MCD食負荷後24週の時点で、正常群に比し血中AST・ALT値が増加し、その値は12週より増加。負荷後24週の(8)肝脂肪滴、(9)肝の線維化面積、(10)キマーゼ活性、(11)MDA値、(12)コラーゲンI、III、α-SMAの遺伝子発現、が12週よりも増加した。 以上、MCD食を12週負荷する事で、NASHモデルが確立される事が明らかとなった。12週においては、肝臓のキマーゼ活性も有意に増加していた事より、NASH発症にキマーゼ活性の上昇が関与する可能性が示唆された。 さらに、12週で認められたNASHの病態が、負荷を24週間行う事で更に進行する事が確認でき、24週の時点においてもキマーゼ活性は上昇した状態であった事より、キマーゼは、NASHの病態進行にも関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「23年度の実施計画」であったメチオニンコリン欠乏食(MCD)誘発性NASHモデルをハムスターで作製し、経時的に血液および肝臓組織の脂肪化ならびに線維化の変化とキマーゼとの関連性を明らかにすることであった。 概要に記載したとおり、MCD食負荷12週において、血中の肝機能マーカーであるASTとALTが共に上昇し、肝臓組織中の脂肪滴および肝臓線維化が確認できた。また、肝臓組織中の線維化の指標であるコラーゲンI、コラーゲンIII、肝星細胞のマーカーであるα- SMAの遺伝子発現がすべて増加していた。さらに、肝臓の酸化ストレスの指標であるMDA値も有意に増加した。これらのことより、MCD食を12週間負荷することで、NASHモデルが確立されることが明らかとなった。MCD食負荷12週においては、肝臓のキマーゼ活性も有意に増加していたことより、NASHの発症にキマーゼ活性の上昇が関与する可能性が示唆された。 MCD食負荷24週においては、MCD食負荷12週において認められた血中のASTとALTの上昇、肝臓組織中の脂肪滴および肝臓線維化、コラーゲンI、コラーゲンIII、α- SMAの遺伝子発現の更なる増加が確認された。これらのことより、12週間で認められたNASHの病態が、MCD食負荷を24週間行うことで、更に進行することが確認できた。このMCD食負荷24週の時点においてもキマーゼ活性は上昇した状態であったことより、キマーゼは、NASHの病態進行にも関与する可能性が示唆された。 今年度の目的に対する達成度は、ほぼ100%で、最終目的に対する現在までの達成度は、約40%である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の実績を踏まえ、24年度以降は、MCD食負荷後12週の時点(NASHが形成)からキマーゼ阻害薬の投与を開始し、MCD食負荷後24週まで投薬を行い、キマーゼ阻害薬によるNASHの病態進行に対する影響を解析する予定である。 具体的には、MCD食負荷後12週の時点で、モデル動物の一部を用いて、血中のASTおよびALTの定量、肝臓組織の脂肪滴および線維化面積の定量、線維化の指標であるコラーゲンI、コラーゲンIII、肝星細胞のマーカーであるα- SMAの遺伝子発現の定量、活性酸素の指標であるMDAの定量、そして、キマーゼ活性を測定する。そして、残りのMCD食負荷モデルには、更にMCD食を12週間行い、その間、キマーゼ阻害薬もしくはプラセボの投与を行う予定である。MCD食負荷後24週の時点で、MCD食負荷後12週の時点で解析した同じ項目を定量し、NASHの病態進行に対する影響とキマーゼ活性との関連を解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ハムスターにMCD食を与えて作製するNASHモデルを作製し、NASH発症後(試験開始後12週)の時点からキマーゼ阻害薬を投与し、NASHの病態進行に対するキマーゼ阻害薬の影響を解析する予定である。キマーゼ阻害薬の投与を開始し、NASHの病態進行に対する影響を解析する。具体的には、試験開始投薬前、つまり、MCD食負荷後12週の時点で、普通食群とMCD食負荷群の2群を解析する。1群あたり8匹を使用する予定で、計16匹を使用する予定である。MCD食負荷後12週よりキマーゼ阻害薬またはプラセボの投与を開始する予定であるが、キマーゼ阻害薬およびプラセボは、オスモティックミニポンプにて行う予定である。24週の時点で解析するハムスターは、普通食群、キマーゼ阻害薬群、プラセボ群の3群で、各群8匹を使用予定で、計24匹を使用する予定である。これらの消耗品に助成金を使用する予定である。また、23年度の成果を学会および科学雑誌にて公表して行きたいと考えており、それらに対する費用に使用する予定である。なお、平成24年度の実験計画では薬物投与を予定しており、その際、オスモティックミニポンプ(ALZET 2ML4型 48個:税込33万6千円)を必要とする。そのため、平成24年度にその費用(330170円)を繰り越した。
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