2011 Fiscal Year Research-status Report
膵癌のMesopancreasへの進展に対する臓器発生と筋膜の構造からみた戦略
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23592005
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北川 裕久 金沢大学, 大学病院, 講師 (80272970)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 膵頭部癌 / mesopancreas / 癒合筋膜 / 後腹膜腔 |
Research Abstract |
本年度は、膵癌の後方への浸潤が、膵実質をどの程度越えているのか、さらにその後面に拡がっている癒合筋膜をどの程度の割合で越えて後腹膜腔へと及ぶのかを病理学的に解明することに取り組んだ。 その結果、当科で切除された膵頭部癌94例、膵体尾部癌46例の計140例において、膵実質を越えて後方に浸潤が及んでいたのは106例76%であった。しかし、さらにその後方にある癒合筋膜を越えて浸潤が後腹膜腔に及んでいたのは4例3%にすぎなかった。膵実質と癒合筋膜との間にはマクロでは確認できないほどの非常に薄い脂肪層しか存在せず容易に癒合筋膜にまで及ぶが、癒合筋膜を越えて後腹膜腔にまで進むことは非常に少ないという結果であった。癒合筋膜が癌浸潤の防御柵として重要な働きをしていることを明らかにした。 これは、膵頭部癌の場合には基本的にMesopancreasの範囲内で進展するのであり、Mesopancreasから外れて無秩序に後腹膜方向へは進展しないことを意味している。Mesopancreasは膵頭部、特に腹側膵領域の動脈、神経、リンパ管が通過する、結腸にとっての結腸間膜に相当するものである。膵頭部癌の手術では膵の担癌部とともにMesopancreasを一括切除(total mesopancreatectomy)することが理想であるが、後面は癒合筋膜で被われている。癒合筋膜は、後腹膜腔を被う腎前筋膜と腹腔内臓器の固有の筋膜(臓側腹膜)とが癒合して形成されるものである。膵頭部癌では癒合筋膜を含めて切除することは根治性をえるための重要な要素であることを証明するのに意義あるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、膵癌手術切除材料を用いた後方浸潤と癒合筋膜との関係の研究は予定どおり順調に進んでいる。正常組織の解析の方は、ひとかたの90歳代とかなりご高齢かつ低栄養状態のご遺体から標本をいただき、プレパラートを作製して癒合筋膜の拡がりを検討しているが、膵の脂肪変性と自己融解があり、膵後面の癒合筋膜が非常にわかりにくい症例であったため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、正常組織での解析を、症例を重ねて進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HE染色、弾性線維を染色するためのElastica van Gieson染色、中皮細胞を観察するための銀染色、脈管識別のためのCD34モノクローナル抗体を用いた免疫染色、リンパ管識別のためのD2-40モノクローナル抗体を用いた免疫染色、腹側膵と背側膵領域を識別するためのpancreatic polypeptide免疫染色を行うための試薬、プレパラート、カバーグラスを購入する計画である。
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Research Products
(2 results)