2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒトCD133陽性膵癌幹細胞を用いた新規膵癌治療薬の開発
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23592007
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 一也 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (50335353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 裕一 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (80248004)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 膵臓癌 / 微小環境 |
Research Abstract |
研究の全体構想は膵癌幹細胞の新規治療薬の開発を目指すことである。我々は正常膵幹細胞と高悪性度のヒト膵癌が幹細胞マーカー(CD133)を発現することを明らかにした(Hori et al. Stem Cells 2008)(Shimizu et al. Pancreas 2009)(Hashimoto et al. Pathobiology 2011)。さらに既存の抗がん剤に耐性のヒト膵癌患者から10種類のCD133陽性膵癌幹細胞株の樹立に成功し、ケルセチンとNotch阻害剤がこの細胞株の増殖を抑制することを明らかにしている。本研究ではヒト膵癌幹細胞株の増殖阻害機構を分子レベルで解明し、これらを応用した新規治療薬の開発を目指すことを目的としている。今年度は、我々が樹立したCD133陽性膵癌幹細胞株が無血清培地下でfeeder細胞との細胞間接着依存性にコロニー形成し増殖することを明らかにした。さらに、ヒトCD133陽性膵癌幹細胞とfeeder細胞との細胞間接着機構の解明を主に行ない、特に膵癌幹細胞とfeeder細胞における基底膜成分や細胞外基質成分の解析を行なった。その結果、膵癌幹細胞とfeeder細胞を共培養したときのみ、feeder 細胞の基底膜成分であるラミニンやコラーゲンの発現が上昇することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) ケルセチン、Notch阻害剤によりCD133陽性膵癌幹細胞株で発現調整をうける因子の同定予備実験の結果、抗がん剤治療耐性のヒト膵管状腺癌の転移巣から樹立したCD133陽性膵癌幹細胞の自己増殖とヌードマウスでの膵癌形成がケルセチンとNotch阻害剤により阻害されることを明らかにしている。しかし、その後の実験でケルセチン投与により、マウスの耐糖能異常が起こる事を確認したため、この研究項目は中止した。
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Strategy for Future Research Activity |
抗がん剤耐性膵癌患者より樹立した癌幹細胞株を用いて、癌幹細胞特有の微小環境を再構築し、癌幹細胞やニッチを標的とした新規治療薬の開発を行う。具体的にはfeeder細胞(stroma細胞、血管内皮細胞、肝類洞内皮細胞、線維芽細胞)とCD133陽性膵癌幹細胞株の接着が、(1)癌幹細胞の細胞周期をどのように調節するのか、(2)feeder細胞は癌幹細胞によりどのような作用を受けてニッチを形成するのかを、分子レベルで解明することで癌幹細胞を標的とした新規治療薬の開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、Gemcitabine、TS-1によりCD133陽性膵癌幹細胞株で発現調整をうける因子の同定を行なう。 予備実験の結果、我々が抗がん剤治療耐性のヒト膵癌の転移巣から樹立したCD133陽性膵癌幹細胞株の培養条件では、抗がん剤未治療の患者の転移巣から精製した細胞分画を用いても細胞株を樹立できない。この結果よりGemcitabineあるいはTS-1による一定の期間の抗がん剤治療が樹立可能なCD133陽性膵癌幹細胞の出現を誘導している可能性がある。そこでもう一度我々が樹立したCD133陽性膵癌幹細胞をGemcitabineあるいはTS-1で処理したあとマイクロアレー法を使用して発現が増強あるいは抑制される遺伝子の解析を行う。我々が所有している膵癌患者の剖検サンプルを用いて、制御される遺伝子がGemcitabineあるいはTS-1による抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者の転移巣を含めた膵癌組織で異なった発現をしているか検討する。さらに制御される遺伝子をCD133陽性膵癌幹細胞内に導入あるいはKnock-downする方法を用いて、抗がん剤耐性能が増強あるいは減弱されるかを検討する。
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