2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトCD133陽性膵癌幹細胞を用いた新規膵癌治療薬の開発
Project/Area Number |
23592007
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 一也 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (50335353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 裕一 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (80248004)
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Keywords | 膵臓がん / がん幹細胞 |
Research Abstract |
研究の全体構想は膵癌幹細胞の新規治療薬の開発をめざすことである。われわれは正常膵臓組織幹細胞と高悪性度のヒト膵癌が幹細胞マーカー(CD133)を発現することを明らかにした(Hori et al. Stem Cells, 2008)(Shimizu et al. Pancreas, 2009)(Hashimoto et al. Pathobiology, 2011)。さらに、既存の抗がん剤に対して耐性を示した進行膵癌患者から10種類のCD133陽性膵癌幹細胞株の樹立にも成功し、ケルセチンやNotch阻害剤がこれらの細胞株の増殖を抑制することを明らかにしている。本研究ではヒト膵癌幹細胞株の増殖阻害機構を分子レベルで解明し、これらを応用した新規治療薬の開発をめざすことを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに、我々が樹立したCD133陽性膵癌幹細胞株が無血清培地下でfeeder細胞との接着依存性にコロニーを形成することを確認した。さらに、膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により基底膜の主成分であるラミニンの発現誘導を遺伝子発現や蛋白発現で確認している。また、in vitroで腫瘍抑制効果が確認されたNotch阻害剤がヌードマウスにおいても腫瘍増殖を阻害することを明らかにした。一方、ケルセチンはマウスにおいては耐糖能異常を引き起こすことが明らかになったので、中止した。Notchシグナルの関与については解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
抗がん剤耐性膵癌患者より樹立した膵癌幹細胞株を用いて、癌幹細胞特有の微小環境を再構築し、癌幹細胞やニッチを標的とした新規治療薬の開発をおこなう。1. 膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により発現調節をうける因子の同定:われわれが樹立した膵癌幹細胞株は、in vitroやin vivoにおいて依然として抗がん剤に対する反応を呈することが明らかになっている。抗がん剤投与により変化する遺伝子を網羅的に解析するため、DNA chipをおこなう。その結果、同定された因子について、免疫染色、RT-PCRにより、発現を確認する。また、Notchシグナルの関与や阻害剤の効果を検討する。2. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により分泌される増殖因子の同定: 培養により得られた培養液内の分泌因子を同定するため、ELISA法により、同定する。候補因子が明らかになれば、免疫染色やウェスタンブロット法により確認する。また、中和抗体やshRNA導入によって阻害効果を検討し、新規分子標的薬の開発を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は膵癌患者より樹立した初代膵癌幹細胞株を用いて、1. 膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により発現調節をうける因子を同定する。抗がん剤のGemcitabine投与により変化する遺伝子、特にシグナル伝達分子や細胞外基質分子、上皮間葉転換に関わる分子をPCRやrealtime-PCRさらに免疫染色法で探索する。可能であれば、DNA chipによる網羅的な解析もおこない、新規分子の探索もおこなう予定である。2. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により分泌される増殖因子を探索する。培養により得られた培養液のみで初代膵癌幹細胞株は培養可能である、すなわちfeeder 非依存性になる。この培養液中の分泌因子を同定するため、サイトカインELISA法により、同定する。可能であれば、中和抗体やshRNA導入によって阻害効果を検討し、新規分子標的薬の開発を探索する。
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