2012 Fiscal Year Research-status Report
ダイレクトRNAシークエンスとメカノセンサーを用いた糖代謝関連転写因子の機能解析
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23592021
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
土谷 まり子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (00266826)
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Keywords | 転写因子 / 膵細胞 / maf / 細胞極性 / siRNA / 糖尿病 |
Research Abstract |
膵臓ではmafA mRNAが低下すると、insulin mRNA は低下し、脳ではmafA mRNA が低下すると、GHや体液電解質、摂食、睡眠リズムに関連する遺伝子の発現が変わる。糖代謝関連転写因子(mafA,mafB)は糖代謝の状態によって、それに関連する遺伝子の発現制御をおこなっており、転写制御を介して、糖代謝に関わる動的平衡を構築していくと考えられる。 AsPC-1 cell line にmafB siRNAをtransfect してmafB mRNAの発現を抑制した系で、E-cadherin, beta-catenin, alpha-catenin, actin, GSK-3b の発現変化を免疫組織染色で検討した。WNT blocker としてQuercetin, XAVを付加すると、これらの発現が変化し、そのcell migration activity も変わり、WNTsignalの かかわりが示唆された。 さらに、この系の3D culture を用いて、PKC-Z(apical marker), NaK-ATPase(basal marker) を免疫染色し、WNT blocker としてのQuercetin, XAVを用いて、極性形成の発現変化を検討したところ、この系では、E-cadherin, b-catenin, WNT signal を介して、膵細胞の極性をもたらし、分化増殖をpromoteしていることが示唆された。 そして脂肪細胞でも、mafA siRNA transfected 3T3L-1 cell では脂肪滴の減衰が見られるが、これがklotho蛋白の添加により改善することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転写因子mafのmRNAの変化が、どのような情報を伝え、どのような機能変化に至るかの情報を得ることが、本研究の目的。前回mafB siRNA transfected cell(Bx-Pc3 cell line)では、E-cadherin, b-catenin によるWNT系を介して、mafB の発現が膵細胞の分化・細胞極性の変化へと導かれている。転写因子maf の変化は、細胞骨格、細胞間コミュニケーション、細胞極性の変化を、細胞増殖分化、つまり、代謝の活性化、変化へとつなげるシグナルとしてとらえる役割を考えている。今年度はこれにklotho蛋白と、(FGF のみならず)growth factor としてのIGF-1の検討、脂肪細胞での検討を加え、極性から細胞機能へと方向つけられる過程をさらに検討していく。すでに、klotho siRNA や抗体については、共同研究者の土谷健がその腎臓培養細胞で実験系を確立しており、脂肪細胞、膵細胞で応用している。当初は、細胞骨格、細胞間コミュニケーションの定量的方法として、フレッツテンションセンサーによるテンション測定を予定していたが、BioStationCT による細胞接着因子の抗体染色に切り替えている。細胞の進展方向性や細胞間接着の定量性はないが、抗体染色による極性形成やその次の細胞シグナルにつなげる計測は可能であるので、3D-cultureは、引き続きBiostation CT timelapseで経時計測を続ける。 mRNAはdirect sequenceで定量性を求めたが、個々の細胞のmRAの動態を可視化できる蛍光プローブ法に切り替えていくつもりである。可視化することによって正確に継時的に追跡できること、蛍光プローブにより個々の細胞の変化が追跡できることが利点であり、当初の計画とは異なるが、成功すればより目的とする方向に沿っている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞が集合して、cell-cell comunicationをもち、それをもとに細胞極性を持ち、次第に分化していく過程、これはprogenitor cell が、内分泌細胞や上皮細胞、duct cell に分化をしていく過程であり、われわれはこれまで、ヒト胎児の膵組織の染色において、pancrea buds, endocrine progenitor にmafB の明らかな染色を認めていて、duct cell やendocrine cellの分化にmafBの発現が関わっていることは明らかではあるが、どのようにかは不明であった。これまでの結果から、mafBの発現は、E-cadの発現にかかわり ここで何らかのcell communication をもち、それをもとに、細胞の極性変化、極性に合わせた細胞機能獲得、つまり膜の機能分化、細胞内への物質の輸送、細胞機能の分化、それに関わるエネルギー代謝の関与としての、maf転写因子の役割をかんがえている。我々は mafB siRNA BxPC-3 cell の3D-cultureで、細胞極性変化が亢進すること、これに関わるsignal として、1つはWnt 系のシグナルを想定し、膜の機能分化にかかわる klotho、これに関わる増殖シグナルとしてIGF-1やFGFを検討し、代謝リンクとしての maf の動態を追随し、代謝と、つまり細胞の機能調節と、細胞の分化の方向、growthの接点が、どのような形でおこなわれ、細胞機能の維持がされているか、検討していく。 糖尿病が膵癌の発症の基盤となる機序であり、これはまたNASHにおける発がん機構にもつながり、Signalの活性化(脳)にもつながる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
個々の細胞でmRNAのprofileが違うことが細胞の運命の違いになっており、この検出に細胞一つ一つのRNA 変化をみられるよう、抗体プローブで検出する方向を検討している。このキットの購入費20万円予定している。 (Direct sequence とarrayの間にはよく相関するという論文があり、我々はarrayのデータをRT-PCRで補正して考えていたが、もう一度micro arrayの定量性を検討し比較する。)3D-cultureのモデルが現在のところ必須で、このモデルで細胞が立体的に構築されて行く過程が検討でき、これは平面培養の細胞とは異なっている。ゲル内で3Dcultureして、ゾル化して細胞回収できる方法を検討しており、このキットの購入、系の確立に20万円を予定している。さらにカルシウムfluxの検出を検討している。Klothoとmembrane cahnnnelの形成とのかかわり、それがカルシウムイオンの流れとしてとらえられ、情報伝達物質としてのカルシウムの動態、fluxをダイレクトに観察できるかは情報量が大きく異なる。細胞でのあるいは3D-Cultureにおけるカルシウム抗体による検出を検討していて、この抗体と系の確立に20万円の支出を予定している。 以上の、細胞レベルでのRNAの検出、カルシウムfluxの検出、を新たに加え、3Dcultureでの細胞維持とその細胞の解析にはゾルゲル培養基質が使えるか検討していくが、この検討は多くは、Biostation CT による経時観察と抗体染色の過程であり、この系の維持に20万円の支出を予定している。
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