2011 Fiscal Year Research-status Report
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23592029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 稔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40270871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50178597)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血管吻合 |
Research Abstract |
ブタ冠動脈吻合実験の前段階として、ウサギ頸動脈を用いた血管吻合モデルを作成した。ウサギはNew Zealand White種の3-3.5kgのオスを使用した。まず急性期実験では1頭のウサギの両側頸動脈を同種他系のウサギの腹部大動脈をグラフトとして用いてバイパス手術を行い、吻合時間、吻合前後の血液流量、造影検査をデバイス(D)群およびコントロール(C)群(ポリプロピレン糸を使用)で比較検討した。吻合部狭窄・閉塞等の評価はFitzGibbon基準に従った。8羽のウサギに実験を行い(D群4羽+C群4羽)、吻合時間は、中枢側吻合の平均19.1分(D群)、17.4分(C群)、末梢側吻合の平均18.0分(D群)、17.0分(C群)と中枢側、末梢側で両群に有意差を認めなかった。血液流量については、両群とも吻合前から後で流量の低下を認めるものの、平均で-2.88ml/min(D群)、-7.88ml/min(C群)と両群に有意差を認めなかった。血管造影検査においては16個の吻合部のうち(D群8個, C群8個)、C群で1個のみ閉塞(FitzGibbon O)を認めたが、その他の吻合部には閉塞・狭窄を認めなかった(FitzGibbon A)。以上の結果より、我々の開発したデバイスの、従来の糸を用いた血管吻合に対する非劣勢を示すことができた。デバイスのサイズについては数例の試用により1.5倍サイズ(1.5×0.75mm)が最も操作性、視認性に優れていることが分かった。3月以降はウサギの慢性モデルの作成を開始した。さらに、デバイスを用いてブタの冠動脈吻合実験を2頭のLWDブタに対して行い、全身麻酔下に内胸動脈-冠動脈バイパス術が可能であった。すべてのバイパスにおいて有効な血流量、造影結果が得られ、このうち1頭は1か月程度生存したところで再度造影検査を行いグラフトの開存を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、内視鏡手術やロボット補助下の冠動脈吻合を想定してこのデバイスを考案し、本研究においては、デバイスの最適なサイズを検討し動物における長期植込みを行い吻合デバイスとしての安全性と有効性を評価することを目的とした。ブタ冠動脈吻合実験の前段階として、手技的に比較的容易なウサギ頸動脈を用いた血管吻合モデルを作成した。吻合時間は、中枢側吻合の平均19.1分(D群)、17.4分(C群)、末梢側吻合の平均18.0分(D群)、17.0分(C群)と中枢側、末梢側で両群に有意差を認めなかった。血液流量については、両群とも吻合前から後で流量の低下を認めるものの、両群に有意差を認めなかった。血管造影検査においては16個の吻合部のうち(D群8個, C群8個)、C群で1個のみ閉塞(FitzGibbon O)を認めたが、その他の吻合部には閉塞・狭窄を認めなかった(FitzGibbon A)。以上の結果より、我々の開発したデバイスの、従来の糸を用いた血管吻合に対する非劣勢を示すことができた。デバイスのサイズについては数例の試用により1.5倍サイズ(1.5×0.75mm)が最も操作性、視認性に優れていることが分かった。3月以降はウサギの慢性モデルの作成を開始した。さらに、デバイスを用いてブタの冠動脈吻合実験を2頭のLWDブタに対して行い、全身麻酔下に内胸動脈-冠動脈バイパス術が可能であった。すべてのバイパスにおいて有効な血流量、造影結果が得られ、このうち1頭は1か月程度生存したところで再度造影検査を行いグラフトの開存を確認できた。動物愛護の観点および手技の安定化の観点からウサギを使用した動物実験から始めたが、デバイスの急性期における有効性は示すことができた。また、今後のブタ冠動脈バイパスモデルの安定的確立に大きく貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の実験経過を踏まえ、24年度は次のように実験計画を立てた。まず、4月から5月にかけてはウサギの慢性モデル作成を継続する。これまでの実験によりデバイスは1.5×0.75mm(1.5倍)のサイズ、糸は8-0モノフィラメントの20cm長のものを使用し2点固定吻合で行うのが操作上最も有効であることが分かっている。評価期間は1か月、3か月、6か月を予定しており、それぞれの期間で造影検査、吻合部の病理検索を行いデバイスの安全性、有効性を評価する予定である。各期間でコントロール群4羽、デバイス群4羽、合計24羽を予定している(6か月モデルは実験結果により2羽+2羽に減らす可能性あり)。これに続いて6月以降はブタ冠動脈バイパスモデルの確立を目標とする。現在、左内胸動脈‐冠動脈前下行枝の吻合は安定して可能だが、ブタの頭数を減らす目的でもう1枝の吻合を行う方針である(右内胸動脈-右冠動脈バイパスを予定)。ブタの急性期実験においては、吻合時間、血液流量、造影検査を行い、コントロール群とデバイス群での差を検証する予定である。ブタ冠動脈は比較的厚いため7-0の糸を用い、1点固定での連続縫合を行う予定である。急性実験ではコントロール群4例、デバイス群4例の合計8例に対して実験を行う予定である。その後7月よりブタの慢性実験を行う。これも急性期と同様の手術を行い、1か月、3か月、6か月の評価期間で造影検査、病理学的評価を行う。術後は1日バイアスピリン100mgを内服する。各評価期間でコントロール群4例、デバイス群4例、合計24例を予定しており、順次手術および術後管理を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウサギを用いた慢性動物モデルの作成、ブタ冠動脈バイパスの急性期および慢性期モデルの作成が主要な研究内容となる。また、吻合部における病理検査標本作製が開始される。研究費の主要な使用目的は、動物購入および飼育費用、病理標本作製費用ならびに実験消耗品の購入である。
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