2011 Fiscal Year Research-status Report
ワルファリン代謝酵素のゲノム解析によるオーダーメイド医療に関する研究
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23592049
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
秦 光賢 日本大学, 医学部, 講師 (00350017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 元美 日本大学, 医学部, 教授 (20170847)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゲノム / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
開心術後の消化管出血予防に用いられるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と,抗凝固薬ワルファリン(WF)の併用は,両者が薬剤代謝酵素CYP2C19により代謝されるための薬剤相互作用により,プロトロンビン時間国際標準化値(INR)が異常高値となり出血合併症のリスクが高くなることが知られている.これに対するリスクマネージメントを目的に CYP2C19は遺伝子多型であるExtensive metabolizer(EM), Intermediate metabolizer(IM), Poor metabolizer(PM)に関するのゲノム解析を行い,WF投与量やPPIの選択におけるオーダーメイド処方の実現を検討した.23年度終了時点で69例が入力され,うち53例でゲノム解析,エンドポイントであるINR異常値や出血合併症に関する統計処理が終了した.対象例はCYP2C19で代謝されるPPIのLansoprozol(LP)群20例,非酵素的代謝のrabeprazol(RB)群33例に割り付けられた.各遺伝子型はEM45.3%,IM34.0%, PM20.7%で日本人の平均値に合致していた.INR異常高値(>3.5)例はLP群10例,RB群2例でLP群で有意に高値(P=0.0004)であったが,各遺伝子型に有意差はなかった.この12例中,消化管,眼球,関節内出血等の合併症を6例に認め,発症時の平均INRは4.43で全例LP群であった(P=0.0017).遺伝子型はEM1例,IM3例,PM2例と現時点で少数のため有意差はないもののIM,PM例で高い傾向であった.開心術後WFとPPIとしてlansoprazolを併用する場合,日本人の6割りを占める薬剤代謝速度の遅延したCYP2C19,IM,PM例においてはINRが異常高値をきたし出血合併症のリスクが高くなる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度終了時点で,目標症例の約60%の入力が終了しており,1次,2次エンドポイントに関しても,それぞれ有意差や傾向性が示されている.さらに,INR異常高値例はWFを一時中止し,投与量を慎重に調節し,頻回にINRを測定して目標値へ回復させるという,当初の研究計画を確実に実行することにより,合併症出現症例もすべて早期に改善し,その後の経過は良好である.したがって平成24年度における,症例入力の増加により,研究結果の有意差はさらに明らかにされると考えられる.本研究の中間解析結果については,2012年3月,インドネシアにおいて開催されたアジア胸部心臓血管外科学会において演題採用され,発表後には参加者から高い関心を集めた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度内に,残り40%の対象例に関するゲノム解析,統計処理を終了し,結果をまとめる.さらに全症例,全データを用いてサブ解析を行い,得られた結果を基に,オーダーメイド処方の実現に向けての計画を作成する.すべての結果は平成25年度に国際学会で発表し,論文作成を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては,残り40%の症例における個人情報入力のためのデータ記録媒体購入と,中間結果報告のための学会旅費の一部に研究費を使用する予定であり,今年度の研究費使用状況から判断しても十分妥当な金額であると考えられる.
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Research Products
(5 results)