2012 Fiscal Year Research-status Report
癌宿主相互作用による肺癌の浸潤・転移におけるNECL5の役割の研究
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23592060
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
眞庭 謙昌 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50362778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 祥剛 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (50189669)
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Keywords | 原発性肺癌 / 肺腺癌 / 細胞接着分子 / Necl-5 / 浸潤能 / 上皮間葉移行 / 分子標的 / バイオマーカー |
Research Abstract |
(背景)Necl-5は、細胞間接着の制御の他、細胞運動や増殖にも関与し、癌細胞で発現が増加することが知られている。我々はこれまで、肺腺癌切除検体においてNecl-5の免疫染色を検討したところ、癌浸潤領域および術後生存率との相関を見いだした。今回我々は、肺腺癌浸潤におけるNecl-5の役割を明らかにするため、実験的検討を行った。 (方法) A549(肺胞上皮癌細胞) 、WI-38(肺線維芽細胞)のcell lineを用いた。我々が独自に開発した細胞の浸潤能を視覚化できるDouble-layered collagen gel hemisphere(DL-CGH)法を用いてこれらを共培養し、浸潤能を観察した。更に、RNAi法によってNecl−5の発現を抑制した際の浸潤能の変化を検討した。 (結果)Western blottingによりNecl-5の発現をみたところ、A549で強発現しており、WI-38と共培養しても発現に変わりはなかった。DL-CGH法においてこれらを共培養したところ、まず外層に向かってWI-38が伸び、単独培養では外層に向かって浸潤できないA549が、WI-38に沿ってアメーバ状に姿をかえつつ外層に侵入する様子が観察された。RNAi法によってNecl-5を抑制したA549を用いたところ、外層への浸潤能が有意に低下した。更に、Necl-5を抑制したA549では、移動能、増殖能も有意に低下することを確認した。 (結論)単独では浸潤能を持たないA549の浸潤にはWI38の足場が必要と考えられた(癌―間質相互作用)。またその際のA549の形状の変化も注目された(上皮間葉移行)。さらに、この現象にはA549由来のNecl-5の発現が重要な働きを持つことが示唆された。本タンパク質は癌浸潤コントロールのための有力な標的になりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、癌・宿主由来細胞間相互作用におけるNecl-5の分子機構を明らかにして、新しい癌浸潤コントロールのための標的となり得るかを見出すことを目的とし、ノックアウトマウスを用いた浸潤モデルと我々が開発した3D in vitroモデルを用いることにより、癌細胞の線維芽細胞周囲での運動のメカニズムを、両細胞におけるNecl-5のダイナミクスに注目して、明らかにすることを目的としている。 3年間の研究計画の中で、特にこの1年は、ヒト細気管支肺胞上皮癌(BAC)細胞A549と肺由来の線維芽細胞WI38を、我々が開発した3D in vitroモデルである2層化コラーゲンゲル半球(Double-layered Collagen Gel Hemisphere; DL-CGH)に封入することにより、「癌浸潤における癌細胞-炎症細胞相互作用」をシミュレートし、蛋白質の発現と細胞運動・接着との関係を観察することに研究の重点をおいた。そして、研究実績の概要に記載した通りの結果を得て、その内容はすでに英文の学術雑誌(Exp Mol Pathol. 2013 Apr;94(2):330-5)に掲載され、国際的にも評価を得ている。 当初の計画では、論文の出版は3年目以降になるとしていたため、計画以上の進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、当初の研究計画に基づいて、肺癌の浸潤、転移におけるNecl-5の役割の解析を進める。マウスによる肺癌細胞の血行性転移モデル用いて、癌細胞のNecl-5の発現を調節し、また宿主についてはNecl-5 ノックアウトマウスと野生型マウスを比較することにより、in vivoにおける癌-宿主相互作用におけるNecl-5の働きの検討を行う。その中で得られた結果を癌細胞、宿主側線維芽細胞の両面から、3D in vitroモデルを用いて分子生物学的に分析し、本蛋白質の浸潤・転移における機能を明らかにする。 特に本年度は、我々が開発した3D in vitroモデルを用いて、細胞の動きをリアルタイムに観察し、動画として連続的に変化を捉、また画像処理により浸潤の定量的に評価を進める。そして本法により、単独では遊走能を持たない癌細胞が線維芽細胞周囲をアメーバ様に盛んに運動することを見出しており(Takata M, et al. Cell commun adhes, 14:157-67, 2007)、これに基づいて、上皮間葉移行に着目して肺癌細胞浸潤のメカニズムの解析を進める。 具体的には3D in vitroモデルによる細胞浸潤の分析として、コラーゲン液に肺癌細胞および線維芽細胞を混合しこれをプラスチックシャーレに滴下して半円球のゲルを作成する(内層)。この上にコラーゲン液を重層(外層)してDL-CGHを作成する。これを培養液に浸し、培養を開始、内層の細胞がその浸潤能によって外層内に成長する様子を顕微鏡により観察し、さらにタイムラプス機能によって動画に編集しダイナミクスを捉える。蛍光標識されたNecl-5の癌細胞および線維芽細胞の局在を調べることにより、Necl-5の働きを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蛍光標識蛋白発現ベクターの作成のため、ベクターおよび遺伝子組み換えのための試薬等の消耗品を購入する。またベクターに組み込む目的遺伝子の合成費用を計上する。 細胞の継代・培養のための試薬を購入する。 病理組織学的検討のため、浸潤・転移関連蛋白質に対する抗体を用いた免疫染色を行うため、染色用試薬を消耗品として計上する。 RNAiによる蛋白発現の抑制とその効果の検討のため、消耗品としてsiRNA、導入試薬の購入費を計上する。 2層化コラーゲンゲル半球作成のためのコラーゲンゲルを消耗品として購入する。
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Research Products
(2 results)