2012 Fiscal Year Research-status Report
心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害の機序解明と抑制
Project/Area Number |
23592063
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岡崎 幹生 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (50467750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 正修 岡山大学, 医学部附属病院, 助教 (20432643)
佐野 由文 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (60322228)
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Keywords | 肺移植 / 心停止ドナー / 虚血再灌流障害 |
Research Abstract |
心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が必要である。本研究では心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害のメカニズムおよび抗炎症作用の働きを解明し、さらに心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害の抑制および予防を目的とした。ラット同所性肺移植モデルを用いて、総虚血時間が4時間になるよう冷虚血肺(生体ドナー群)と温虚血肺(心停止ドナー群)を作製し、移植した。移植から1時間後に心停止ドナー群で有意にPaO2は低値だった(p < 0.05)。しかし、移植から4時間後には心停止ドナー群の肺機能は改善し、生体ドナー群と同等の良好なPaO2を呈した。心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善しており、このような現象は生体ドナー群ではみられにくく、新しい発見と考えられた。グラフト内のIL-10、HO-1などの抗炎症性サイトカインの発現量や経時的発現パターンをPCR法で分析したところ、心停止ドナー群では移植から1時間後に生体ドナー群と比較して有意に高発現していた(p < 0.05)。移植から4時間後には生体ドナー群でも高発現しており、両群に有意差は認めなかった。またIL-10、HO-1の経路で重要なp38MAPKsの発現もウェスタンブロッティング法で分析したところ、同様の変化を認めた。この結果から、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害が速やかに抑制されたのは、抗炎症作用が重要な働きをしているためであることが示唆された。心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害に対する治療のターゲットの特定につながると考えられ、引き続き本研究を推進する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺移植におけるドナー不足は深刻で、その改善策として心停止ドナーからの肺移植がある。しかし、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が必要である。本研究では、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害のメカニズムおよび抗炎症作用の働きを解明し、さらに心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害を抑制・予防することを目的とする。同所性肺移植モデルを作製し、総虚血時間が4時間になるよう冷虚血肺(生体ドナー群)と温虚血肺(心停止ドナー群)を作製した。左片肺移植から1時間後と4時間後に肺機能を測定し、心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善することが明らかとなった。また、グラフト肺内のIL-1b, IL-6, MCP-1, MIP-2, TNF-a, ICAM-1, cox-2, PAI-1をPCR法で分析したところ、冷虚血再灌流障害と温虚血再灌流障害のメカニズムの相違が示唆された。さらに、IL-10、HO-1、p38MAPKsなどの抗炎症作用について分析したところ、移植から1時間後に心停止ドナー群で有意に高発現しており、心停止ドナーからの肺移植後の虚血再灌流障害が速やかに抑制されたのは、抗炎症作用が重要な働きをしているためであることが示唆された。このように一定の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
心停止ドナー肺は移植後にレシピエント体内で著明に肺機能が改善しており、このような現象は生体ドナー群ではみられにくく、新しい発見と考えられた。心停止ドナーからの肺移植後虚血再灌流障害における抗炎症作用の分析では、グラフト肺内の抗炎症性サイトカインなどの抗炎症物質(IL-10、HO-1など)が高発現しており、虚血再灌流障害の改善に重要な働きをしていると示唆された。今後も抗炎症作用の分析を中心に研究を推進するが、まずBALやグラフト肺から採取したリンパ球、マクロファージ、血管内皮細胞をフローサイトメトリー法で分析する。また病理組織学的には再灌流障害の程度(H&E、免疫染色)やネクローシス・アポトーシス(Tunnel染色)の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物、実験用縫合糸の他、PCR、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング等に使用する各種抗体や、染色用試薬に使用する。また機器使用料、動物飼育料、学会参加費用等にも使用する計画である。
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