2012 Fiscal Year Research-status Report
TrkB/BDNF経路を標的とした肺神経内分泌腫瘍に対する治療法開発
Project/Area Number |
23592065
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 勝也 九州大学, 大学病院, 助教 (60585743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片野 光男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10145203)
大西 秀哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30553276)
中野 賢二 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 教授 (00315061)
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Keywords | TrkB / BDNF / 肺大細胞神経内分泌癌 / MMP-2 / MMP-9 / 腫瘍形成能 |
Research Abstract |
TrkB/BDNF経路を標的とした肺神経内分泌(NE)腫瘍に対する診断および治療法を開発することである。目的の達成は、次の三段階、すなわち、1.TrkB/BDNF経路の診断・予後予測への応用を検証するための、肺NE組織におけるNTファミリー分子発現プロファイルを作成、2.TrkB/BDNF経路の治療標的としての可能性を検証するための、NE腫瘍細胞株を用いて、TrkB/BDNF経路の細胞生物学的意義の解析、および、3.臨床応用の可能性を高めるための、特異性の高いTrkBおよびBDNF抗体の作成により遂行する。 我々は既に前年までに各種癌組織のTrkB/BDNF発現プロファイルの作成を行い、TrkB/BDNF経路関連分子発現を解析した。小細胞癌8例、大細胞神経内分泌癌(LCNEC)11例、大細胞癌10例、腺癌20例、扁平上皮癌55例の計104症例での免疫組織学的解析を行った。各組織型毎にTrkB高発現群と低発現群に分け、その予後解析を行った。LCNECはすべてTrkB高発現であった。全組織型における解析でTrkB高発現群は有意に病期分類で進行例が多く、術後再発率が高い結果であった。また、TrkB陽性肺NE細胞株(NCI-H460, NCI-H810)を標的細胞とした検討では、TrkB/BDNF経路が、細胞増殖には影響を及ぼさないが、細胞浸潤(Matrigel invasion assay)に大きく関与していることをsiRNAを用いて検証した。また、その浸潤能にMMP-2,MMP-9が関与していることも検証し得た。以下、本年度に得られた新たな成果を記述する。 1)両細胞株における足場非依存性増殖はTrkB/BDNF経路の活性化により亢進し、経路抑制により低下した。2)マウス移植モデルにおいて、移植細胞のTrkB発現抑制により有意な腫瘍形成能の低下を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの我々の研究の結果、TrkB/BDNFシグナル経路は肺大細胞神経内分泌癌細胞で浸潤能、足場非依存性増殖、腫瘍形成能に関与していることが示唆され、肺大細胞神経内分泌癌に対する治療標的となる可能性が示された。この成果を既にLung Cancer誌に投稿し、掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
TrkB/BDNF経路を標的とした肺神経内分泌(NE)腫瘍に対する診断および治療法の開発を行うことが最終目標である。このため、 1.TrkB/BDNF経路関連分子発現プロファイルの症例数を蓄積していく予定である。 2.TrkB陽性肺NE細胞株(NCI-H460, NCI-H810)を標的細胞とした検討では、TrkB/BDNF経路が、細胞浸潤能亢進にMMP-2,MMP-9が関与していること、足場非依存性増殖、腫瘍形成能が関与していることを検証した。今後、この細胞株を用いたin vivoでの検証を行う。 3.現在、マウス異種移植治療モデルの治療実験を進行中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TrkB/BDNF経路関連分子発現プロファイルのさらなる作成のため、手術摘出腫瘍組織を用いた免疫染色法を行うため、抗体等の消耗品購入が必要となる。 In vivoでのTrkB/BDNF経路の検証のため、ヌードマウスの購入が必要となる。 全国学会・海外学会での研究成果の発表を行う予定である。
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