2011 Fiscal Year Research-status Report
グリアの神経成長因子発現制御に基づいた脳血管障害の新規治療法開発にむけた基礎検討
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23592081
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉田 秀見 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40201008)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳血管障害学 / グリア / NGF / 脳保護 / カルノシン酸 / エダラボン / 神経変性疾患 / 神経毒性 |
Research Abstract |
ローズマリーの疎水性成分のひとつであるカルノシン酸が、酸化還元感受性転写因子Nrf2を介して、培養ヒトアストロサイトの神経成長因子NGFの発現を誘導することを見出した。また、脳梗塞急性期の脳保護薬として用いられているエダラボンは、カルノシン酸によるNGF発現を協調的に亢進させることを明らかにした。その協調効果は低酸素曝露3時間及び4.5時間培養細胞において、さらに、低酸素曝露4.5時間後の再酸素化培養細胞においても認められた。遺伝子ノックダウン実験の結果によると、この協調効果に対してもNrf2の核内蓄積が必要であった。種々のタンパク質リン酸化経路を検討したところ、この協調効果に対して、Nrf2蓄積に一部分が関与していたJNK (c-Jun N-terminal kinase) のリン酸化や、 Nrf2蓄積とは独立のMEK (mitogen-activated protein kinase/extracellular signal-regulated kinase kinase) のリン酸化が部分的に関与していることを明らかにした。 エダラボンとカルノシン酸の併用(24時間)により協調的に発現が誘導される因子を遺伝子発現マイクロアレイ法により網羅的に検索したところ、Nrf2標的遺伝子のほかに小胞体ストレス誘導遺伝子やグルタチオン枯渇誘導遺伝子、アミノ酸欠乏誘導遺伝子などが強く誘導された。とくに、カルノシン酸単独処理に比べてエダラボンとの併用処理により2倍を超える発現増加を示した遺伝子群にはグルタチオン合成に関係するものが見られた。カルノシン酸と類似の構造をもつカルノソールや4-ヒドロキシエストラジオールもまたエダラボンと協調的にNGF発現を誘導することがわかった。 以上の結果の応用により、脳内グリアのより効果的な神経保護・維持機能を引き出すことができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した研究実績の概要のとおり、平成23年度の研究計画についておおむね遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現マイクロアレイ法による網羅的な検索の結果、カルノシン酸単独処理に比べてエダラボンとの併用処理により2倍を超える発現増加を示した遺伝子の数は50を超えた。当初計画の期間及び予算のなかで、ひとつひとつの遺伝子の協調作用機序への関与を検討し終えるのは困難であることが予想される。そこで、これまでの知見を基に有力な候補に的を絞り込んでの検討を試みる。たとえば、上述したグルタチオン合成に関係するものなどである。 同時に、すでに研究計画調書に記したとおり、「4.培養グリア細胞を用いた網羅的誘導因子発現の検索結果において、当初計画や仮説が上手くいかなかった場合の対応」に沿って、研究の重点を神経(系)細胞における神経変性疾患関連遺伝子の解析へシフトする方策も視野に入れたい。たとえば、アルツハイマー病をはじめとする種々の神経変性疾患の治療戦略にもかかわる疾患原因分子生成の制御候補としてのセクレターゼや活性酸素生成酵素(Nox2 又はNox4)などに対する当該薬剤の効果にも注目し、有望な新知見を得ていく展開も考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の今後の研究の推進方策に沿い、カルノシン酸とエダラボンとの併用処理により強発現を呈した有力な遺伝子について、定量PCR法やウェスタンブロット法、RNA干渉法などを駆使し、協調効果を分子生物学的に検証する。その進捗・達成度を見極めつつ、同時に、神経変性疾患関連遺伝子及びその疾患原因分子、なかでも神経毒性の高い凝集・蓄積性タンパク質の生成制御について、培養アストロサイトや神経芽腫細胞を用いて当該天然有機化合物及び薬剤の効果を検討する。そのために必要な培養細胞や測定試薬を購入する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Edaravone and carnosic acid synergistically enhance the expression of nerve growth factor in human astrocytes under hypoxia/reoxygenation2011
Author(s)
Yoshida H, Mimura J, Imaizumi T, Matsumiya T, Ishikawa A, Metoki N, Tanji K, Ota K, Hayakari R, Kosaka K, Itoh K, Satoh K
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Journal Title
Neurosci Res
Volume: 69(4)
Pages: 291-298
DOI
Peer Reviewed
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