2012 Fiscal Year Research-status Report
脳虚血耐性現象におけるエピジェネティクスを介した神経保護機序の解明
Project/Area Number |
23592088
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉岡 秀幸 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (20402076)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 博之 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30241623)
|
Keywords | 脳虚血耐性現象 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
非致死的な短時間の虚血負荷は、引き続く致死的虚血負荷に対する耐性現象を誘導する。そのメカニズムはいまだ明らかとはなっていないが、多数の遺伝子発現変化が関与することが予想されている。一方、エピジェネティクスとは、クロマチンの化学的、構造的な修飾による遺伝子発現制御であり、その主なメカニズムはDNAのメチル化およびヒストン蛋白質の化学修飾より成り立っている。DNAのメチル化は、シトシン-グアニンの順に並んだ2塩基配列であるCpG配列上で、DNAメチル化酵素を介して起こるが、これは転写因子の結合阻害や転写不活性なクロマチン形成を生じ、遺伝子発現を強く抑制する。ヒストンの化学修飾(アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボース化)の組み合わせも、転写活性などのゲノム動態を制御している。本研究の目的は、脳虚血耐性現象におけるこのエピジェネティクスの役割を検討することである。 本年度までに施行した発現アレイ解析の結果より、虚血耐性獲得脳では致死的虚血脳と比べ、cell cycle関連遺伝子、apoptosis関連遺伝子、炎症反応関連遺伝子などの多くの遺伝子発現が著明に抑制されていることが解明された。本年度中にラット脳組織を対象としたクロマチン免疫沈降法の手法を確立しており、次年度はこの手技を用いて、虚血耐性脳における遺伝子発現変化がエピジェネティックな機序により生じているかどうかを検討する。また、虚血耐性獲得脳でのDNAメチル化やヒストン蛋白質の化学修飾の状態は、引き続きwestern blotting解析により検討を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クロマチン免疫沈降法の手法確立に時間を要し、虚血耐性による遺伝子発現変化がエピジェネティクスな機序によるかどうかを前年度までに踏み込んで検討出来なかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
致死的虚血脳および虚血耐性獲得脳サンプルのクロマチン免疫沈降を行い、虚血耐性による遺伝子発現変化にDNAのメチル化やヒストン蛋白質の化学修飾が関与しているかどうかを検討する。虚血耐性により変化するヒストン修飾パターンが発見された場合、ゲノムワイドなヒストン修飾アレイ解析を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クロマチン免疫沈降法の手技確立に時間を要し、これに必要な試薬代が未使用額となった。この未使用額と合わせ来年度請求額は、動物購入管理費、抗体購入費、アレイ解析費用などに使用する予定である。
|