2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592100
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永山 哲也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (40336334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60183969)
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60549913)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳卒中 / C型ナトリウム利尿ペプチド / 血液脳関門 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
脳卒中は神経細胞だけでは無く,血管内皮細胞も障害する複合的な機能障害であり,血管内皮細胞の機能的な破綻は血管透過性の亢進,出血や脳浮腫により副次的に病態をさらに増悪させると考えられる.一方,疫学的研究から脳障害や心障害の程度と血中のC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)濃度に相関があり,基礎研究から血管内皮細胞に対してCNPはアポトーシスを誘導することが報告されている.本研究では脳卒中病態形成過程におけるCNPの寄与を検討した.まず,脳血管内皮細胞の細胞モデルであるマウス由来bEnd.3細胞と3種類の細胞を用いて血液脳関門(BBB)を再構成したBBBキット(ファーマコセル)由来の初代培養脳血管内皮細胞におけるCNPとCNPの特異的受容体であるGC-B受容体の発現をRT-PCR法において検討すると,どちらの分子もいずれの細胞にも発現していることが明らかとなった.さらに,BBBキットにおいてCNPを1-100 nMの濃度範囲で24時間暴露すると,タイトジャンクションを構成するタンパク質であるZO-1の発現と経上皮細胞電気抵抗の値がCNPの濃度依存的に減少することが明らかとなった.すなわち,CNPは直接,脳血管内皮細胞に作用し血管透過性を制御する可能性が示された.一方,CNPの病理学的な寄与を検討する目的で,中大脳動脈結紮(MCAO)による脳梗塞モデルを作成した.すなわち,内頸動脈を介して中大脳動脈起始部まで栓子を挿入し,1時間の局所的な脳梗塞を得た.続く,血流の再灌流24時間後の脳スライスに対してTTC染色を行うと,MCAOを施した側の脳においてTTC染色の陰性の梗塞叢が観察された.以降は,この動物モデルにおけるCNP量の定量と,GC-B受容体のアゴニスト及びアンタゴニストを用いた解析を行なっていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MCAOモデルラットの立ち上げは先行研究から終わっている.ラットのモデルは血液や臓器を採取する実験には適しているが,近年盛んに作成されている遺伝子ノックアウトマウスや突然変異マウスを用いた実験および全身性に薬物を投与する実験には不向きである.研究代表者の実験計画には,自然発生した不活性型のGC-B受容体を持つcn/cnマウスを用いた解析があるが,本実験を遂行するために立ち上げているMCAOモデルマウスの系は現在立ち上げ段階にある.遺伝子的変異を持った動物における解析は生理的なCNP/GC-B受容体シグナリングを解明する為に重大なエビデンスを与える事から,今後早急に解析することが望まれる.in vitroの実験系に関しては,in vivoにより近いBBB再構成モデルにおいて解析を進めるため,Gaillard PJらの方法を参考にして,ウシ脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトの共培養系を立ち上げることに成功した.本モデルにおいては,毛細血管内皮細胞を単独で培養するよりも顕著に高い経上皮細胞電気抵抗を得ることが可能であり,in vivoで難しかった細胞内シグナル伝達系やタンパク質局在を評価する事が可能になった.よって,これから研究代表者らの作成したBBB再構成モデルを用いて研究を進めていく予定であり,今後の解析は容易になったといえる.これらの研究は当初提出した研究計画において,23年度に引き続き24年度も継続して行う研究であること,また,以上の様な観点から,研究の進行区分をやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
大筋は当初の研究計画に沿って行う.すなわち,24年度はin vivoのMCAOモデルにおいて脳血管内皮細胞の細胞死を免疫組織化学染色により評価する.一方,MCAO処置後のラット尾静脈から血液を採取後,血清を分離しCNPの濃度を測定する.この実験を同一個体を用いて連続的に評価することによって,血中CNP濃度と脳血管内皮細胞に対する障害性の相互作用を観察する.先述の通り,cn/cnマウスを用いた解析はCNP/GC-B受容体シグナリングの解析に重大な意義を持つ.そこで,マウスにおけるMCAOモデルを立ち上げ,cn/cnマウスにMCAOを処置することにより,脳卒中に対するCNPの病理学的寄与を解明する.また,当初の研究計画には無いが,CNPの直接的な脳血管内皮細胞とBBBへの影響を解明する目的で,CNPを静脈内投与し,続いてエバンスブルーを静脈内に投与し,脳実質へ漏れ出たエバンスブルーを定量することによってBBBに対するCNPの機能を評価する.in vitroの研究においても当初の研究計画からの変更点は無い.すなわち,23年度に立ち上げたBBB再構成モデルを用いて,CNPによる脳血管内皮細胞へ影響を及ぼすメカニズムをより詳細に解明する.具体的には,GC-B受容体の下流シグナル分子として知られているグアニル酸シクラーゼと環状GMPシグナリングカスケードを阻害剤やアナログを用いて制御し,細胞死や経上皮細胞電気抵抗を指標にBBB機能を評価する.また,現在市場にはコマーシャルに入手できるGC-B受容体阻害剤が存在しないため,本年度からGC-B受容体のアンタゴニストの作成を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
cn/cnマウス購入代(300,000円):本マウスはジャクソン研究所より購入予定である.本マウスは自然発生的にCNPの受容体であるGC-Bの機能を欠損したマウスであるため,CNPの研究において説得力のある結果を得ることができると考えられる.実験用動物(300,000円):実験用動物として動物の購入費と動物実験施設使用料およびcn/cnマウスの維持費を計上した.実験用試薬(380,681円):実験用試薬としてはin vivoにおける組織障害性を評価するためのキット,細胞培養用試薬,血液脳関門モデル細胞培養キット(BBBキット),ウシ脳血管内皮細胞(DSファーマより購入),その他分子生物学用酵素類やバッファー類を計上した.プラスチック・ガラス製品(100,000円):細胞培養用に細胞接着性プラスチックディッシュ,血管内皮細胞培養用の培養インサートや,分子生物学用の三角フラスコ等を計上した.大腸菌タンパク質発現用プラスミド(100,000円):GC-B阻害タンパク質はリコンビナントタンパク質を大腸菌に発現させ,精製し,実験に供する必要がある.そこで,大腸菌にタンパク質を発現させるためのプラスミド購入費を計上した.さらに,年に1回の学会参加および研究計画終了時において学術論文によって本結果をアウトプットするために,学会参加費と論文投稿費を計上した(100,000円).
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Research Products
(1 results)