2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592100
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永山 哲也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (40336334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60183969)
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60549913)
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Keywords | 脳卒中 / C型ナトリウム利尿ペプチド / 血液脳関門 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
脳卒中は神経細胞だけでは無く,血管内皮細胞も障害する複合的な機能障害である.血管内皮細胞の機能的な破綻は血管透過性の亢進を介して出血や脳浮腫を惹起し,病態をさらに増悪させると考えられる.一方,疫学的研究から脳障害の程度と血中のC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)濃度に相関があり,基礎研究から血管内皮細胞に対してCNPはアポトーシスを誘導することが報告されている.本研究では脳卒中病態形成過程におけるCNPの関与をin vivoおよびin vitro条件下において検討した. まず,昨年度,CNPはBBBキット(ファーマコセル)において,タイトジャンクションを構成するタンパク質の一つであるZO-1の発現と,経上皮細胞電気抵抗(TEER)を減少させることを明らかとした.このことを更に詳細に解析するために,初代培養ウシ脳微小血管内皮細胞(BBMC)を用いて解析した.その結果,BBMCにおいてもBBBキットの結果が再現され,TEER,ZO-1のRNA発現,タンパク質および細胞膜上の発現それぞれが著明に減少する事が明らかとなった.しかし,その他のタイトジャンクションを形成するタンパク質である,クローディンとオクルディンの発現には著変を与えなかった.次に,CNPの受容体であるGC-BのセカンドメッセンジャーはcGMPである事から, cGMPのアナログである8-Br-cGMPとCNPの作用に対するPKG阻害剤であるRp-8-pCPT-cGMPSの効果について検討すると,8-Br-cGMPはCNPの作用を再現し,Rp-8-pCPT-cGMPSはCNPの作用を阻害する事が明らかとなった. 以上の結果より,CNPは脳血管内皮細胞のZO-1の発現を選択的に抑制する事で,タイトジャンクションを緩める事ができる.このことが,脳卒中における血管透過性の増加に関与していることが予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から着手していた,マウスの中大脳動脈結紮モデルであるが,マウスの総頸,外頸,内頸動脈が非常に細く短いため,安定したモデルの確立が難しく,使用可能なモデルは未だ完成していない.ノックアウトマウスや自然発症型のGC-B機能不全マウスを用いて,CNPの機能を解析する事によって最も強いエビデンスを得られると考えられるので,脳虚血モデルの作成は継続して行なっていく必要があると考えている.そこで,本年度は同時に一過性前脳虚血モデルの作成にも着手している.このモデルにおいては,よりシンプルな手技で,脳虚血モデルが作成できることが報告されている.しかしながら,申請者の検討では同時に総頸動脈をクリップし,血流をストップさせても,神経細胞障害に左右差が観察され,未だ安定したモデルが確立されたとは言い難い. GC-Bのアンタゴニストに関しては,現在協和発酵キリン株式会社が保有する化合物の試料提供をお願いしているところである.また,申請者が分子生物学的手法を用いて独自に開発中のアンタゴニストも未だ明瞭な活性のある物質を単離できていない. 一方で,in vitroの脳血管内皮細胞を用いた研究は,今年度非常に進展した.ウシ脳微小血管内皮細胞に対するCNPの効果はBBBキットでの結果を再現したのみならず,CNP特異的な受容体であるGC-B活性化後のシグナル伝達機構の一端を薬理学的に解明できたことは大きな前進であった.本細胞は,BBBキットの様に完成されたアッセイ系では無いために,細胞への遺伝子導入を行うことが可能で,強制発現やノックダウンの系を用いることによって,CNPによるBBB透過性亢進の詳細な分子メカニズムの解明が可能となった. 以上の成果を総合し,達成度をやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
In vivoにおける脳虚血モデルを継続して作成する.これまで,中大脳動脈結紮モデルの確立を目標にしてきたが,一過性前脳虚血モデルも含め脳虚血モデルの作成をすすめる.このモデルでは,両総頸動脈を一時的にクリップして血流を遮断する事によって脳虚血を引き起こす事ができるモデルであり,中大脳動脈結紮モデルよりもシンプルな方法で虚血モデルを作成する事が可能である.そのため,モデルの確立が容易であると考えられる.脳虚血モデルが完成した後に,ジャクソン研究所において自然発生的に誕生したGC-B受容体の活性を欠失したマウスであるcn/cnマウスを入手し,脳虚血を負荷した後における脳組織及び脳血管内皮細胞の障害性を解析し, CNP/GC-B受容体シグナリングの重要性を評価する. GC-Bのアンタゴニストに関しては,協和発酵キリン株式会社にアンタゴニストの提供をお願いするとともに,申請書にも記載したとおりに,GC-B受容体の一部を人工ペプチドとして合成,単離しアンタゴニストとしての機能を評価する. In vitroの実験系に関しては,CNPの暴露によって上昇したcGMPからZO-1の発現量の減少のメカニズムを解明する.具体的には平滑筋細胞において,転写制御因子JunDがcGMPの制御下ZO-1の発現を抑制することが報告されているため,CNPの暴露条件下におけるJunDの関与を検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
siRNAトランスフェクション試薬,10万円,申請者が遺伝子の導入を試みる細胞は初代培養細胞であり,遺伝子のトランスフェクション効率が低い可能性がある.そこで,数種のトランスフェクション条件を検討する目的で計上した.具体的には,リン酸カルシウム法,リポフェクション法,申請者の研究施設に共通機器として導入されたNEPA21を用いたエレクトロポレーション法を検討する予定である. ウシ脳微小血管内皮細胞購入費,10万円, in vitroモデルを構築する為の上記2種の細胞を購入する為に計上した. 培養用消耗品,5万円,申請者の培養系は,使用する細胞に非常に特殊化された方法であり,専用の培養器とコーティング剤を必要とする.それらを購入する目的で算出した. マウス購入費,30万円,cn/cnマウス購入費および解析用マウス購入費として計上した. その他消耗品,10万円.
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Research Products
(2 results)