2012 Fiscal Year Research-status Report
てんかん原生を獲得する神経細胞を、活動を減弱させ細胞死へ誘導することができるか?
Project/Area Number |
23592106
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 秀宣 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90265992)
西村 欣也 順天堂大学, 医学部, 教授 (80164581)
新井 一 順天堂大学, 医学部, 教授 (70167229)
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Keywords | てんかん原生 / 海馬 / 新生神経細胞 |
Research Abstract |
てんかん発作を誘発した動物モデルで惹起された多くの新生神経細胞は、脆弱で自然消退する。しかし少数ながら興奮性を獲得し、てんかん原生となり得る可能性をもつ新生細胞があることがわかった。神経栄養因子や炎症性メディエーターなど脳内環境因子により、異常興奮性細胞を不活化させ最終的に神経細胞死へと誘導し、てんかんを根治させる治療を構築することが、本研究の最終的な目標である。 研究を進めるにあたっては、基礎研究となる動物モデルを使用した免疫染色、電気生理学的な評価をおこなうとともに、実際にヒトの海馬でどのような変化がみられているか、てんかん焦点切除により摘出されたヒト海馬の病理組織を免疫染色して観察する臨床研究との両者を照らし合せる必要が生じた。 基礎研究では、生後5WのC57/BLマウスにピロカルピン腹注によるてんかん発作誘発した動物モデルにレトロウィルスによりgreen fluorescent protein(GFP)を定位脳手術にて海馬に注入し感染させ、新生神経細胞をGFPでマーキングした。新生神経細胞に対し、Patch-clamp法にて発火パターンを直接記録し細胞興奮性を検証した。てんかん原性獲得に関与するとされるSynaptic vesicle protein 2A (SV2A)に着目し、levetiracetam投与群で新生神経細胞が減少することを確認した。 また臨床研究では、難治性側頭葉てんかんの摘出海馬を用いた免疫組織染色 〈 Kluver-Barrera(KB), GFAP, TLR4, HMGB1, 糖化蛋白受容体(RAGE) 〉を海馬CA1,CA2, 歯状回(DG), 海馬支台(SC)各部位で比較検討した。海馬硬化症では細胞外に放出したHMGB1が、TLRの内因性リガンドとして働き、 HMGB1-TLR pathwayの炎症反応の増幅サイクルが関与することが考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、神経栄養因子や炎症性メディエーターなど脳内環境因子により、異常興奮性細胞を不活化させ最終的に神経細胞死へと誘導し、てんかんを根治させる治療を構築である。てんかん発作が海馬歯状回において惹起する新生細胞数は、Synaptic vesicle protein 2A (SV2A)の安定化により減少することが観察された。 本年度は、脳内の環境因子としてSynaptic vesicle protein 2A (SV2A)に着目し研究を進めるとともに、実際にてんかん外科手術により摘出された海馬(human)を病理検体として用い、免疫染色により検証を行ないステップバイステップで研究が進められている。今後はさらに脳内環境因子と、whole cell patchclampなどによる電気生理学的な変化を詳細に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫学的に海馬門の新生細胞には前駆細胞に近い未成熟な細胞が存在することが分かった。これらの細胞が電気生理学的に通常の新生細胞と比較してどのような差違が生じるか、また、異常興奮発火をしててんかん原生になり得るか検討してきたが、脳内環境因子、Synaptic vesicle protein 2A (SV2A)の安定化により、てんかん発作が海馬歯状回において惹起する新生細胞数が減少することを確認した。本研究成果を進めるとともに、今後はさらに他の環境因子にも着目する。現在我々は、Leucine rich alpha glycoprotein (LRG)糖タンパクにも注目しており、LRG蛋白を脳内に過剰に発現させたマウスにおいて、スライス脳のパッチクランプにより、神経の過剰興奮が抑制されることに着目している。発作の抑制効果が期待され電気生理学的な評価を今後継続する必要があり、最終目標として創薬につながることに期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物購入費とその飼育費用は前年同様となる。本年度は、電気生理学的実験のためマウスの脳波測定用の頭皮電極と関連資材を一部追加購入する。また免疫組織学的な検討を行うための試薬を購入する費用が必要となる。また研究内容を発表するため、学会参加や論文掲載などに必要な諸経費を本研究費からまかなう。
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