2011 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素結合標的アデノウイルスベクターを用いた中性子捕捉療法の開発
Project/Area Number |
23592126
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
濱 聖司 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (40397980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗栖 薫 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70201473)
星 正治 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (50099090)
西本 武史 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (40450580)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳腫瘍学 |
Research Abstract |
悪性グリオーマは手術、放射線、化学療法などの集学的治療にも抵抗性で、予後不良である。血管脳関門の為に抗がん剤は腫瘍細胞まで到達しづらい。また、一般的な放射線照射では、正常細胞への放射線障害が問題である。これらを克服する為に、近年、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が選択的放射線治療として注目されている。腫瘍細胞にホウ素(10B)を導入して中性子を照射し、正常細胞に影響を与えずに、腫瘍細胞を殺傷する方法である。十分量のホウ素化合物を腫瘍細胞に選択的に取り込ませることが、大きな課題である。そこで、アデノウイルスベクターをホウ素の担体として用いることに着目した。平成23年度は抗原抗体反応を利用して、アデノウイルスベクター表面に化合物を結合させることを試みた。まず、アデノウイルス表面上にあるヘキソンに対する抗体(抗ヘキソン抗体)をLacZ発現アデノウイルスベクターに反応させ、それを悪性グリオーマ培養細胞に感染させてみた。すると、感染細胞はLacZが発現していることを確認したが、二次抗体を反応させても、感染細胞内に十分量のヘキソン抗体の存在が確認できなかった。そこで、抗体の種類や反応条件を変更させて、至適な条件を探している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗原抗体反応による手法が上手くいっていない理由として、抗原抗体反応の結合力が弱く、余剰抗体を取り除く処理等の際や、培養細胞に感染する際に外れてしまっている可能性がある。また、抗ヘキソン抗体がアデノウイルスの表面に結合することによって、アデノウイルスベクターの感染効率が低下し、抗体が結合していないウイルスが優先的に培養細胞に感染してしまった可能性もある。一次抗体の反応量を減らす等して、アデノウイルスベクターの感染効率を犠牲にしない範囲内での抗体結合させるような、至適な反応条件を導き出す必要があると考えられ、現在、調整を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗原抗体反応だけではなく、ウイルスの表面にある遊離の-NH2(アミノ基)、-CO2H(カルボキシル)基、-チオール基などに着目し、これらをホウ素クラスターで化学修飾してホウ素キャリヤーとする手法なども試みる。そして、アデノウイルスベクターの感染効率が変化するかどうかも確認する。 また、特定の細胞のみに標的リガンドで感染する標的アデノウイルスベクターが開発され、国立がんセンター研究所宿主免疫研究室では、様々なリガンド配列のペプチドを組み込んだものをキャプシド蛋白質改変アデノウイルスライブラリーとして作成し、腫瘍細胞に特異的に感染したものを回収した。このシステムを利用し、悪性グリオーマであるU138MGを標的とするアデノウイルスベクターが同定できている。本年度は、U138MG細胞とその標的アデノウイルスベクターは広島大学脳神経外科内で使用する準備を進める。この標的アデノウイルスベクターが、抗原抗体反応などの修飾を受けた後の感染効率の変化があるかどうか、についても確認し、至適なホウ素化合物の結合方法を検討していく。 また、中性子照射時には中性子以外にガンマ線も含まれることから、中性子による生物学的影響を考慮する場合は、ガンマ線の影響も考慮される必要がある。そこで、ガンマ線を用いた放射線生物学的な影響評価も行っていく。 そして、悪性グリオーマ細胞の中で、腫瘍幹細胞は放射線感受性を下げる一因になっていると考えられているので、この腫瘍幹細胞の同定方法についても行う予定とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
抗原抗体反応や、その他、ホウ素化合物をアデノウイルスに結合させる手法を開発するための試薬・備品の購入を予定する。また、アデノウイルスベクターの感染効率を確認すること、放射線照射に関わる費用、そして、腫瘍幹細胞の同定などに必要な試薬・備品に関わる費用も計上する予定である。更に、超遠心を用いたアデノウイルスベクターの濃縮・精製が必要であり、その為の費用も計上する予定である。
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