2012 Fiscal Year Research-status Report
がん免疫回避に関わるマクロファージの機能解明とその制御法の確立
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23592134
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永井 拓 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (90363647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 宏文 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00264416)
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Keywords | 抗体 / マクロファージ / 免疫原性 |
Research Abstract |
マクロファージの選択的除去によるがん免疫に対する影響 【方法】①ラットグリオーマF98をFischerラット(成年:3ヶ月齢、老年:24ヶ月齢)に皮下免疫した。免疫は一週間間隔で合計4回行った。免疫終了後、同細胞を脳または皮下に移植し、以下の条件で治療実験を開始した。①イムノトキシン(治療群)あるいは陰性対照タンパクを移植7日から3日間隔で投与し、体重を経日的に測定すると共に採血を5日間隔で行った。移植10と20日後に脾臓と移植組織を採取した。②脾臓からリンパ球を採取してグリオーマ細胞と共培養を行い、細胞障害活性、抗体特異的なリンパ球の増強と抗体依存的な細胞傷害能を測定した。 【結果】①成年、老年群ともに抗体特異的なリンパ球の増加と細胞傷害は、免疫処置群で増加傾向にあった。②免疫処置群にイムノトキシンを投与することにより、抗体特異的なリンパ球の増加が確認されたが、老年群では有意差が生じなかった。③リンパ球の増強と抗体依存的な細胞障害能を成年群と老年群で比較したところ、有意に成年群のほうが高値を示した。④イムノトキシン投与後における抗イムノトキシン抗体の出現「免疫原性」については、成年群において有意に上昇したのに対し、老年群では各個体ごとに差が見られた。⑤老年群のうち、免疫原性が生じた個体におけるリンパ球の増強と細胞障害能について検討したところ、傾向は確認されたが有意差は無かった。(現在、老年群に関しては個体数を増やして検討中である)⑥がん細胞とマクロファージの共培養によってがんの増殖とマクロファージの分化が観察された。 【考察】葉酸受容体β発現マクロファージは、抗腫瘍免疫に関与する事が示唆されると共に、このマクロファージの選択的な除去が神経膠腫の治療に有効である事が示唆された。一方、長期間の連続投与に耐えるイムノトキシンの開発が今後の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【概況】前年度から引き続き、グリオーマ移植における移植細胞とがん細胞の共培養に加え、ワクチンに対する効果を検討した。その結果、当初の計画に加えて以下の3点を新たに見出した。①老年個体ではリンパ球ならびにTAMsのグリオーマに対する感受性が低減化した。②マクロファージとがん細胞の共培養により、がん細胞の増殖に伴うマクロファージの分化が見られることから、がんとマクロファージの連関が密接であることが予測される。なお、これらはイムノトキシンによってブロックされる。③イムノトキシンの免疫原性は、抗がん免疫系にも影響を与える可能性がある。 【各項目における達成度】①マクロファージ選択除去における抗体関連融合体(イムノトキシン)作製:「おおむね順調に発展しているが、改良する事により大きな進展が見込まれる。」現在用いている遺伝子改変型のイムノトキシンは、さらに改良を施すことにより(今後の推進方策①において後述)、従前に比べて大きな進展が見込まれる。②トランスクリプトーム、サイトカインアレイ解析:おおむね順調に進展しているものの、ヒト組織のトランスクリプトーム解析の遅れが目立つ。③イムノトキシンのがん移植モデルにおける効果:「おおむね順調に発展している」が、老齢個体の数がまだ要求量に達していない。④共培養における細胞傷害活性、サイトカインアレイ、リンパ球増殖能:「おおむね順調に発展している」特に腹腔内のマクロファージの共培養系にて目的とする結果を得ることが可能な事が判明したことから、今後は大きく進展する事が期待できる。⑤他モデルによる再現性の検討(他がん種含):「当初の計画以上に進展している」特にがん間質形成に大きな影響を及ぼす細胞株を見出した事により、in vitroとin vivoにおいて両者の比較が出来ることは、今後の進展に大きな手掛かりとなる事が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①免疫原性を考慮に入れた製剤のデザインと開発:概要①に述べたとおり、マクロファージは数多くのプロテアーゼを産生する。これらプロテアーゼによるイムノトキシンの分解は、イムノトキシンの薬効を減弱化させるだけでなく、分解産物が新たな抗原となって免疫原性を高める恐れがある。そこでマクロファージ由来のプロテアーゼに分解されないイムノトキシンをデザインし、その効果を検討する。具体的には、トキシンのタンパク質表面を構成するアミノ酸のうち、活性中心に影響を及ぼさない領域でプロテアーゼ感受性の高いアミノ酸を置換した変異体をデザインし、構造変化によって免疫原性が新たに生じやすい領域をIEDB,Discotope, BcePredのwebプログラムにより予測する。得られた予測結果を基に変異体をRate4Site, HotSpotWizard, MBLOSUMにてデザインする。その後、変異体を作製して活性と免疫原性を評価する。 ②動物モデルにおける検討:神経膠腫モデルラットを用いて、新規イムノトキシンの治療効果と免疫原性を評価する。具体的には本年度で得られた結果である免疫原性とワクチン効果の相関性を確認する。③他モデルにおけるFRβ発現TAMsの選択的除去:新たに卵巣がん細胞を用いた解析を追加する。これは、がん細胞とマクロファージの共培養系において単球系の分化が促進すると共に、がんの増殖が確認されたためである。まず、20Gyの放射線処理したメラノーマB16細胞、IGROV-1細胞(共培養)を当該マウス(C57BL、NOGマウス、NOD/SCIDマウス)に免疫を行う。免疫終了後、マウスに同細胞を皮下移植し、移植4日後からイムノトキシン、コントロールタンパクを投与 (4日間隔)する。致死率と体重を経日的に計測し、投与60日後に脾臓を採取し、リンパ球の増殖能と細胞傷害能を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①蛋白質作製、細胞培養、ならびに動物実験に用いる消耗品・試薬の購入に充てる予定である。 ②学会発表の旅費に充てる予定である。 尚、新たに機器を購入する予定はない。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Novel Therapy for Atherosclerosis Using Recombinant Immunotoxin Against Folate Receptor β-Expressing Macrophage2012
Author(s)
Furusho Y, Miyata M, Matsuyama T, Nagai T, Li H, Akasaki Y, Hamada N, Miyauchi T, Ikeda Y, Shirasawa T, Ide K, Tei C.
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Journal Title
J Am Heart Assoc.
Volume: 1
Pages: e003079
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clinical significance of folate receptor β-expressing tumor-associated macrophages in pancreatic cancer.2012
Author(s)
Kurahara H, Takao S, Kuwahata T, Nagai T, Ding Q, Maeda K, Shinchi H, Mataki Y, Maemura K, Matsuyama T, Natsugoe S.
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Journal Title
Ann Surg Oncol.
Volume: 19
Pages: 2264-71
DOI
Peer Reviewed