2012 Fiscal Year Research-status Report
脳神経外科手術用止血剤の開発に向けた組織接着性ハイドロゲルの安全性評価研究
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23592138
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大畑 建治 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70194264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 健 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237507)
石橋 謙一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50438230)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本課題の目標は、大阪市立大学工学部と大阪市立大学医学部が、医工連携で外科手術用のハイドロゲル止血接着剤を作成することであ る。工学部では、ハイドロゲルの成分であるε-PLLとポリアルデヒドの生成条件を変えることにより、ポリアミン、ポリアルデヒドの分子 量、側鎖の反応性等を改善させ、ハイドロゲルのゲル強度、組織接着性を最適化させるようにしている。具体的には、本化合物がゲル 化速度1秒以内を達成し、1000秒以内に6000Paのゲル化強度を有していることが確認された。医学部では、実験動物を用いた組織出血 モデルを作成している。マウス、ラットで腹腔内の腹腔動脈、腹腔静脈、肝臓からの出血を、実験出血モデルとして確立しハイドロゲ ルの止血能、組織接着性、安全性を評価している。 現在までの成果として、SDラット肝臓に生検用ポンチを使用した作成した出血モデルが、簡便性、再現性のある出血モデルとして優れ ているということがわかった。 これらの実験結果は大阪市立大学工学部重点研究「バイオインターフェース先端マテリアルの創生」シンポジウムにおいて詳細に報告 し、大阪市立大学医工連携のモデルとして展開している。 関連論文:Simple and safe exposure of the sigmoid sinus with presigmoid approaches. Goto T, Ishibashi K,, Ohata K. Neurosurg Rev. 2013 Jan 29. Analysis of venous drainage from sylvian veins in clinoidal meningiomas.Nagata T, Ishibashi K,, Ohata K. World Neurosurg. 2013 Jan;79(1):
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①組織止血接着用ハイドロゲルの生成条件最適化:(達成点)ゲル化速度1秒以内を確認、かつ1000秒以内に6000Paのゲル化強度を有 していることを確認した、これらは、手術時において動脈血圧に対しても十分な強度である。(問題点)実際に止血実験を施行すると 、止血効果を規定する因子としてゲル強度だけでなくゲルの組織接着性も重要であることがわかった。現状ではゲルの接着性が十分で はないので改善する必要がある。解決策として、ポリアミンの内部に親水基を化学的に導入することによりゲルの組織接着性を付加さ せることを検討している。 ②止血効果確認のための実験動物モデルの確立:(達成点)現在までの実験により、吸入麻酔を用いたラット肝臓に対する生検ポンチ 出血モデルが簡便性および再現性などの点で優れた出血モデルであることがわかった。我々の作成する止血接着用ハイドロゲルが実際 に止血作用を有し、静脈性の出血に対してはきわめて優れた止血作用を有することがわかった。(問題点)ビーグル犬を用いた頭蓋内 出血モデルの確立が難渋している。動物の全身麻酔管理、開頭の手術手技などに習熟を必要とする。 3組織止血接着用ハイドロゲルの安全性評価:(達成点)ハイドロゲル成分液の一般的無菌試験、エンドトキシン試験での安全性を確 認した。(問題点)成分液の神経細胞障害性の評価を行う必要がある。ハイドロゲルの局所刺激性試験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によりハイドロゲルの生成条件の最適化、小動物を用いた止血効果の確認と安全性の確認は達成された。次年度は大型動物を用いた止血効果確認と頭蓋内投与での局所刺激性の検討および生分解性評価(体内残存性評価)が課題である。イヌ頭蓋内出血モデルにおいては、成体のビーグル犬に対して全身麻酔の導入を行い、血圧等のモニタリング下に両側頭頂部の開頭を施行して大脳皮質を露出させた後、脳表の中大脳動脈の分枝に対して手術用顕微鏡下に機械的裁断を行い出血点を作成する。脳神経外科手術での使用を想定した局所刺激性試験、生分解性評価、発がん性試験は成体ビーグル犬の脳を用いて施行する。全身麻酔導入を行った成体ビーグル 犬に対して開頭と硬膜切開を行ない、露出させた脳表に対して作成した薬剤を各濃度で投与し、手術と同様に一旦閉創を行う。この状態で動物を経過観察し、急性期(投与後2日目)および慢性期(投与後30日、60日、90日)で動物を再び開頭し、局所の状態を肉眼的に確認した上で組織を採取、固定して組織学的な検討も行う。 急性期の組織学的な検討項目としては、薬剤を投与した局所(脳実質、硬膜、頭蓋骨、皮下組織)での組織変性の有無、局所のアレルギー反応の有無、感染誘発性の評価などである。また慢性期の組織学的検討項目として、発がん性の検討、体内残存性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者である大阪市立大学工学研究科および(株)ダイソーにより、ハイドロゲルの原料となるポリアミン、ポリアルデヒドが供 給されるため、本研究では動物実験による止血能の評価、適正化、および安全性を向上させることを目的としている。つまり本研究は 前臨床研究であり、手術で必要とされる止血効果および安全性を確立・確認するために実験動物(ラット・ウサギ・イヌ)および動物実 験の設備の購入を主に必要とする。 次年度は主として大型動物での動物実験となるため大型動物の購入費、飼育管理費、および大型動物用の吸入麻酔期を含めた手術機器 の購入が必要である。
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Research Products
(11 results)