2013 Fiscal Year Research-status Report
脳神経外科手術用止血剤の開発に向けた組織接着性ハイドロゲルの安全性評価研究
Project/Area Number |
23592138
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大畑 建治 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70194264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 健 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237507)
石橋 謙一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50438230)
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Keywords | 組織接着剤 / 止血剤 / ハイドロゲル / 毒性試験 |
Research Abstract |
本研究ではハイドロゲルを用い、高い安全性と機能性を有する脳神経外科手術用止血剤の開発を目指している。 β-1,3-グルカン(ダイソー社製、黒酵母Aureobasidium pullulans産生物)由来のポリアルデヒドアクアβポリアルデヒド(Aquaβ-CHO)とε-PLL(チッソ社製、放線菌Streptomyces albulus産生物)を架橋剤により高分子量化した高分子量化εポリリジン(23EG-PLL)からなる組織接着性ハイドロゲル外科用止血材料をC57BL6Jマウス 11週齢・雌雄に単回経口投与し、投与後4日後までの観察結果および血中炎症サイトカイン及び肝機能パラメータ測定からハイドロゲル材料およびその原料成分の急性毒性を検討した。 Aquaβ-CHO 600 mg/kg 投与群において投与30-60分の間に自発運動の減少が特に雌において認められた。また、削痩が明白であった。しかしハイドロゲル510~2050 mg/kg、Aquaβ-CHO 600 mg/kg、23EG-PLL 3500 mg/kg 投与群においていずれにおいても腹臥姿勢、流涙、呼吸粗大、立毛などは認められず、脱落も皆無であった。血中炎症サイトカイン(TNFα, IFNγ, IL-6, IL-1β)、酸化ストレス・炎症パラメータ(NOx)及び肝機能パラメータ(GGT, ALT)の測定結果からはハイドロゲル510~2050 mg/kg、Aquaβ-CHO 600 mg/kg、23EG-PLL 3500 mg/kg 投与群においていずれにおいても炎症は惹起されないことが明らかとなった。しかし、ハイドロゲル最大量2050 mg/kg、Aquaβ-CHO 600 mg/kg、23EG-PLL 3500 mg/kg 投与群において統計学的有意性は低いもののGGT, ALT の血中量が比較群より高い値を示し肝機能に影響を与えることが判明した。ただし、ハイドロゲル最大量2050 mg/kg投与群はAquaβ-CHO 600 mg/kgおよび23EG-PLL 3500 mg/kg 投与群より血中量が低い傾向があり、ゲル化によりAquaβ-CHOおよび23EG-PLLの肝機能傷害性が低下することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に、大型動物(イヌ)を用いた止血効果確認と、イヌ頭蓋内投与により局所刺激性の検討および生分解性評価のために体内残存性評価を実施しシンポジウムにおいて発表する予定であったが、実験担当者の転出などにより実施できなかったため、計画を変更し、小型動物によるより詳細な安全性評価として肝障害・腎障害などに関する血液パラマーターおよび炎症反応に関するサイトカイン評価を行うこととした。以上によりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
経口投与後の各炎症性サイトカインの発現量の結果からハイドロゲルを経口投与した場合において、炎症を引き起こさないことが示された。このため、止血剤として用いた際に急性的には人体に炎症を引き起こさず、安全に使用することが可能である。さらに、ポリマー単独での単回経口投与においても、炎症を引き起こさないことが示されたため、ハイドロゲルを形成せずに残存したポリマーによる炎症の危険性も少ないと考えられる。また経口投与後の肝障害マーカーの値からも、生理食塩水と同程度であったため、生体に対して安全に使用することが可能であると考えられる。 以上より、大型動物(イヌ)を用いた止血効果とイヌ頭蓋内投与により局所刺激性の検討および生分解性評価のために体内残存性評価を実施していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大型動物(イヌ)を用いた止血効果確認とイヌ頭蓋内投与により局所刺激性の検討および生分解性評価のために体内残存性評価を実施しシンポジウムにおいて発表する予定であったが、実験担当者の転出などにより実施できなかったため、計画を変更し、小型動物によるより詳細な安全性評価として肝障害・腎障害などに関する血液パラマーターおよび炎症反応に関するサイトカイン評価を行うことなった。このために未使用額が生じ、次年度使用額が生じた。 これまでに得られた結果より、止血剤として用いた際に急性的には人体に炎症を引き起こさず、安全に使用することが可能である。さらに、ポリマー単独での単回経口投与においても、炎症を引き起こさないことが示されたため、ハイドロゲルを形成せずに残存したポリマーによる炎症の危険性も少ないと考えられる。また経口投与後の肝障害マーカーの値からも、生理食塩水と同程度であったため、生体に対して安全に使用することが可能であると考えられる。 以上より、2つの材料の重量濃度と混合のための体積比率の新たな組み合わせのもとでラットにおける止血効果の解析を行う。さらに、大型動物(イヌ)を用いた止血効果と頭蓋内投与による局所刺激性の検討および生分解性評価のための体内残存性評価を実施する。
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Research Products
(1 results)