2012 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系悪性リンパ腫の遺伝子異常解析による病態と治療向上因子の解明
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23592140
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
塩川 芳昭 杏林大学, 医学部, 教授 (20245450)
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 脳腫瘍 / 遺伝子解析 / 予後因子 / 治療感受性 / Germinal center / MGMT / ゲノム解析 |
Research Abstract |
2000年以降、杏林大学病院脳神経外科等において手術が施行され、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)と病理診断され、腫瘍標本が入手可能な50例(男:女=30:20; 平均年齢61歳)について以下の検討を行っている。PCNSLに対する標準治療薬であるmethotrexate (MTX)の感受性に関連する因子、MRP、LRP、DHRFの発現を免疫組織化学(IHC)を用いて評価し、また、悪性神経膠腫に対する標準治療薬であり、JCOG脳腫瘍グループで予定しているPCNSLに対する新規の臨床試験で使用するtemozolomide (TMZ)感受性の主因子であるMGMTのプロモーター領域メチル化に対してはMSP法を用いて、さらにTMZ感受性に関与することが知られているmismatch repair (MMR)機構関連蛋白であるMSH2, MSH6, MLH1, PMS2については、IHCを用いてその発現を検討している。また、B細胞のgerminal center (GC)での分化を規定する各因子: CD20, CD10, Bcl6, Mum1, CD138の発現パターンとの関連性も検討中である。さらに本年度は、これらの症例の中で、腫瘍凍結標本が十分に保管されていた14症例について、腫瘍におけるゲノム・エピゲノム解析を行い、PCNSLにおける新規の遺伝子異常を検出することを目的に、東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座の間野教授と共同研究を開始した。今後、さらに症例を追加、上記の各因子の発現と因子間の関連性、また治療効果や生命予後との関連を解析していく。また、その他の共同研究施設からの腫瘍標本の蓄積(約30-50標本を予定)の上、PCNSLの新規遺伝子異常を解析していく予定である。今回解析に含まれなかった他の因子(KPSなど)を含めた解析を展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
JCOG脳腫瘍グループにおける中枢神経系原発悪性リンパ腫の臨床試験計画が現在プロトコール審査に向けての最終準備中であり、症例登録は今年度後半にずれこむものと予想されていること。しかし、一方では、新たな免疫組織化学染色を予定の関連因子についても開始しており、さらに、多施設共同のPCNSLに対する新規ゲノム解析もサンプル収集が進んでいるなど、着実に研究の進行はみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、腫瘍標本から治療感受性規定因子の解析を進める。標本数を増加させ、各因子の解析を統合的に検討し、予後との相関を評価していく。また、多施設共同の遺伝子解析も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
腫瘍標本に対する免疫組織化学染色を遂行するために、抗体・試薬の購入を引き続き行い、当科症例の標本全てにおける各因子の免疫組織化学染色を完成させる。 当該症例の治療効果ならびに生存情報を基に、各因子発現との相関性を評価する。その結果、PCNSLにおける予後ならびに治療効果予測因子の確立を図る。 共同研究として遺伝子解析をさらに推進する。
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