2013 Fiscal Year Annual Research Report
老化に伴う髄液のクリアランス低下により惹起される認知機能障害の病態解明と治療
Project/Area Number |
23592142
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60200177)
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Keywords | LRG1 / 髄液のクリアランス / グリア細胞 / 神経細胞変性 / 老化 / トランスジェニックマウス / 水チャンネル |
Research Abstract |
髄液のクリアランスの低下は、ベータアミロイドなどの有害物質の脳からの排泄が障害され、認知機能障害の原因として注目されている。老化に伴いアストロサイトに発現が増加している、leucine-rich alpha-2-glycoprotein (LRG1)に着目し、老化による髄液のクリアランス低下の原因が、加齢によるアストロサイトのLRG1発現の増加に起因していることを証明することを目的として以下の実験をおこなった。初年度はヒト剖検脳を免疫組織染色的検討した。その結果LRG1は大脳皮質深部の常在性アストロサイトの細胞質及び突起と小脳のプルキンエ細胞に免疫反応を強く認めた。また、加齢によりLRG1陽性細胞は増加し、一方水チャンネルAQP4陽性細胞は減少していた。次にマウスLRG1の抗体を作製、マウス脳におけるLRG1の発現を免疫組織染色にて検討した。その結果ヒト同様に加齢により大脳皮質及び海馬でのLRG1の発現増加を認めた。次年度以降はLRG1が脳に特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスの作製(Tg)し、大脳皮質及び海馬を組織学的に検討した。生後1年のTgでは、同年齢のWTと比較して、更に大脳皮質は非薄化し、軽度側脳室の拡大を認め、大脳萎縮を呈していた。組織学には、Tgの大脳皮質では、神経細胞数の減少し、リン酸化タウ陽性の神経細胞とグリア細胞を多数認め、多くの神経細胞の樹状突起は太く蛇行しており、神経原性変化を疑わせる所見を呈していた。LRG1の過剰発現により、神経細胞変性の促進、神経細胞の減少とグリア細胞の活性化を呈する事は、LRG1は脳の老化を促進する蛋白である事が初めて明らかになった。ヒトにおいても高齢者や神経変性疾患の大脳皮質では、LRG1の発現は増加しており、LRG1は加齢による髄液クリアランスの低下と神経細胞の変性に関与していると考えられる。
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