2011 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸付加‐BSHを用いた新規ホウ素中性子捕捉療法による治療効果向上の試み
Project/Area Number |
23592146
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20340549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70340560)
池田 直廉 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50434775)
松下 葉子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70512094)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 悪性神経膠腫 / 放射線治療 / ホウ素化合物 / 中性子捕捉療法 / 合成アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究では、腫瘍選択的粒子線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のさらなる治療成績向上を目指し、理想的な新規ホウ素キャリアーとして開発したアミノ酸付加‐BSHの有用性に関し検討し、臨床応用への可能性を探っている。国内研究協力者である切畑光統教授(大阪府立大学・生命環境科学)とともに、BNCT用新規ホウ素化合物として数種のアミノ酸付加‐BSHを作成した。これらの薬剤を用いて悪性神経膠腫培養細胞に対し、in vitroでの集積について確認し、その結果からACBC-BSHほか、ホウ素含有合成アミノ酸に数種類の薬剤で目標を上回る腫瘍集積がみられ有望視される薬剤が作成できている。平成23年度は、各薬剤について、細胞内への停留時間、暴露濃度・時間の変化による薬剤細胞集積の特性を確認した。BNCTでの治療効果は、集積薬剤の絶対量のみならず細胞内・外の局在にも左右されるため、中性子照射実験を行い実際の薬剤の殺腫瘍細胞効果を計画・実施したが、実際のホウ素中性子捕捉反応による殺細胞効果は、細胞集積から理論的に算出された効果を下回った。これらの実験により、動物実験を行うべき候補化合物のについてさらなる選定を繰り返し、新規の候補化合物の作成を含め、より効果の期待できる薬剤を引き続き模索している。昨年度の結果から、比較的低分子の合成アミノ酸による薬剤送達は、脳腫瘍においても大いに期待できると考えられたが、動物実験への応用へ向けては、より収集効率の良い化合物という視点からも選定すべきであり、本年度・来年度予定の動物実験へ向け薬剤の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
F98グリオーマ移植担脳腫瘍モデルラットに対し、Convection Enhanced Delivery(CED)によりアミノ酸付加‐BSHを投与した後、組織内ホウ素濃度を測定した。組織内ホウ素濃度はICP-AESを用いて腫瘍および腫瘍側脳、対側脳など組織別に行うこととし、摘出組織に対するBSH特異的免疫染色(大阪府立大学・切畑)を加え、これらの実験によりアミノ酸付加‐BSHのCED投与時の薬物動態の解明と至適投与条件の検討を加えた。培養細胞でのホウ素集積は、臨床応用されているアミノ酸ホウ素化合物(BPA; ボロノフェニルアラニン)が10.9±0.2 ng10B/106 cellsであったのに対し、cis-ACBC(合成アミノ酸)では18.2±0.9と高値を示し、trans-ACBCでは9.9±0.4にとどまった。また、新規の合成アミノ酸C4、C5およびC8において同様の実験を行った結果、それぞれ28.4±4.0、19.6±1.0、10.6±1.0と良好な結果を示す化合物が存在している。これらの化合物を用い、実験動物健常脳に対し、CEDによりアミノ酸付加‐BSH投与後脳を摘出し、正常脳における化合物の分布を確認す計画を立てているが、化合物の生合成の効率は悪く、CEDでの利点を解明するための全身投与との比較検討には遅れが生じている。また同様の理由で、担腫瘍脳におけるアミノ酸付加‐BSHの分布を同様の化合物を用いて確認する実験計画にも若干の遅れが生じた。培養細胞実験およびCED投薬による脳腫瘍モデル腫瘍内集積の結果から、治療効果の期待できる化合物に関して合成アミノ酸化合物の種類を減じ、合成効率を高め24年度に実施予定の中性子照射実験に向けての準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度には、化合物生合成および原子炉マシンタイムの問題で、当初計画より若干の遅れが生じたが、24年度には既に十分な中性子照射の原子炉マシンタイム確保の申請が採択されているため、引き続き薬物動態の詳細について検討を加え、最終目標の治療実験に備える。前年度の研究成果をもとに、より条件を絞り、中性子照射実験のプロトコール立案を行う。組織内ホウ素濃度はICP-AESを用いて腫瘍および腫瘍側脳、対側脳など組織別に行い、また正常脳・脳腫瘍における薬物動態の測定(経時的計測による腫瘍集積と正常脳からのクリアランス測定)に関し詳細を検討する。前述の実験結果から至適薬物投与条件を検討の上、立案されたプロトコールを元に中性子照射による治療実験を行う。未治療群および1)アミノ酸付加‐BSH (CED)のみ、2)中性子照射のみ、3)iv BPA + 中性子照射、4)アミノ酸付加‐BSH (iv) + 中性子照射、5)アミノ酸付加‐BSH (CED) + 中性子照射、6)アミノ酸付加‐BSH (CED) +iv BPA + 中性子照射の各群を予定し、治療効果はラットの生存期間の観察と病理学的検索をもって行う。期間内には、より細胞選択的集積の高い薬剤開発および改良に努め、培養細胞によるスクリーニングを加え、候補薬剤に関してはあわせて期間内に中性子照射実験を計画する。またアミノ酸への視認部導入により、in vivo imaging(PET, CT, MRI)の可能性を探り、CT、MRIやPETにて検出可能な薬剤になりうるのか検討を加える。理想的な新規ホウ素キャリアーとして開発したアミノ酸付加‐BSHの有用性に関し、研究期間内に得られた結果を解析し、研究成果全体をまとめて臨床応用への可能性について検討し、成果報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究結果から、合成アミノ酸骨格を有したホウ素含有化合物は、従来臨床応用されてきたホウ素化合物以上に高い腫瘍細胞への集積が期待できることが分かっている。合成アミノ酸は、これまで申請者が有用性を示してきた新規化合物(トランスフェリン―リポソーム、EGF―デンドリマー、ポルフィリンなど)と比べ、比較的低分子であり、血液脳関門の通過が期待できるが、全身投与による正常組織への治療効果(副作用)や多量の化合物を要することなどを勘案すると、これまでの化合物同様CEDによる投薬に大きな利点を有するものと考える。本薬剤ではCEDを用い浸潤部細胞への治療効果向上が期待され、本申請課題で我々は、アミノ酸付加‐BSHのBNCT用新規ホウ素化合物としての有用性および最適な投与条件を検討し、臨床応用への可能性を探る。また、新規薬剤の臨床画像での可視化に挑戦し、個々の患者毎での適応判断、テーラーメイド治療実現の可能性を探索する。今回の研究を通じて我々は、アミノ酸付加‐BSHのCEDによるホウ素化合物分布の改善とBNCTへの適用について、その有効性・安全性を評価し、臨床応用への可能性を明らかにする。そこで次年度は、培養細胞による実験および正常ラットに対する投薬・安全性評価と、坦脳腫瘍ラットに対する投薬・ホウ素集積の解析および腫瘍以外の臓器でのホウ素集積評価を継続的に行い、既に照射直前の段階にある候補化合物に関しては、早急に中性子照射実験を行う。これらの実験研究は次年度同時進行で行われ、研究計画には大きな変更がないため、計画書にのっとり使用していく予定である。次年度使用額の1,028,827円は新規ホウ素化合物(アミノ酸付加‐BSH)の脳腫瘍モデルラットおよび正常ラットを用いた薬物集積・分布実験に使用予定であったが、薬物生合成に若干の遅れが生じたため、平成24年度に使用を予定し準備が整っている。
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Research Products
(12 results)