2011 Fiscal Year Research-status Report
WT1免疫療法における脳局所の抑制系・促進系免疫機序の解明と抑制克服法の開発
Project/Area Number |
23592148
|
Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
泉本 修一 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (40324769)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 鑑二 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50360269)
有田 憲生 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80159508)
友金 祐介 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10412008)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 免疫療法 |
Research Abstract |
固形がんの中でも悪性脳腫瘍でWT1免疫獲得効果が高いこと、約6割の有効群と4割の効果の乏しい群に分かれることが明らかになった。(Izumoto et al., J Neurosurg 108:,2008.) そのなかで有効・無効の原因となる末梢血中の免疫動態を明らかにするとともに、局所での獲得性免疫動態を明らかにし、抑制系および促進系免疫機序の解明と抑制系免疫の克服法の開発を本研究の目的としている。平成23年度は、1.臨床研究として、再発悪性脳腫瘍の臨床試験(倫理委員会承認647号)および初期治療の臨床試験(倫理委員会承認;834号)を開始、GMPグレードWT1 peptideを購入、供給体制を整え、再発膠芽腫に6例、初発膠芽腫に2例の患者にWT1ワクチン療法を継続している。患者の観察、WT1ワクチン治療中同意を得た末梢血単核球の保存、WT1ワクチン治療中再増大、あるいは経過中腫瘍内出血を生じ再手術した腫瘍組織および辺縁組織を検討した結果、DTH反応が腫瘍抑制効果の目安になること、組織でのT細胞の集積は脳組織内で豊富ではなく、血管周囲に集簇する傾向が明らかになった。WT1が腫瘍血管内皮細胞にも特異的に染色されることとの相関が考えられた。有効性を示した患者脳での検討は未検である。2.正常マウス(C57BL/6)、および担脳腫瘍(神経膠腫)マウスを作成する本年度の計画では、(1)203Gマウスグリオーマ細胞がWT1タンパクを発現することを明らかにした。(2) C57BL/6マウスの大孔内穿刺により移植する技術を踏襲し、健常マウス、生理食塩水注入マウス、自己血液注入マウス、での免疫担当細胞の出現を検討したところ、移植操作そのものでの脳内免疫担当細胞の大きい変化は見られなかった。次年度に継続を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.臨床研究として、再発悪性脳腫瘍の臨床試験(倫理委員会承認647号)および初期治療の臨床試験(倫理委員会承認;834号)を開始、GMPグレードWT1 peptideを購入、供給体制を整え、再発膠芽腫に6例、初発膠芽腫に2例の患者にWT1ワクチン療法を継続している。患者の観察、WT1ワクチン治療中同意を得た末梢血単核球の保存、WT1ワクチン治療中再増大、あるいは経過中腫瘍内出血を生じ再手術した腫瘍組織および辺縁組織を検討した結果、DTH反応が腫瘍抑制効果の目安になること、組織でのT細胞の集積は脳組織内で豊富ではなく、血管周囲に集簇する傾向が明らかになった。WT1が血管内皮細胞にも特異的に染色されることとの相関が考えられた。有効性を示した患者では現在のところ、状態の悪化例、再手術例がなく、治療後の腫瘍および脳での検討は未検である。担癌患者のWT1特異的CD8陽性T細胞のT cell receptor β-chain variable region(TCR-BV) genes の発現が健常者と担癌患者とで異なることが明らかになり、目的としている、抑制系および促進系免疫機序の解明の一助となると考える。2.マウスモデル研究では (1)正常マウス(C57BL/6)、および(2)担脳腫瘍(神経膠腫)マウスを作成する本年度の計画では、(1)203Gマウスグリオーマ細胞がWT1タンパクを発現することを明らかにしたことは、この動物実験を展開するうえでの土台となる。(2)C57BL/6マウスの大孔内穿刺により移植する技術を踏襲し、健常マウス、生理食塩水注入マウス、自己血液注入マウス、での免疫担当細胞の出現を検討したところ、移植操作そのものでの脳内免疫担当細胞の大きい変化は見られなかった。さらに203Gマウスグリオーマ細胞の移植実験を行うが本年度から次年度に継続を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年、25年度を通じ、1.臨床研究では再発悪性脳腫瘍の臨床試験(倫理委員会承認647号)および初期治療の臨床試験(倫理委員会承認;834号)を継続し、平成23年度と同じく免疫動態の解析、そのなかで、上記初発治療における、放射線治療時およびTMZ治療時およびWT1ワクチン治療併用時の免疫担当細胞の動態解析を行う。2.正常マウス(C57BL/6)、および(ii)担脳腫瘍(神経膠腫)マウスでのモデル実験では、203Gマウスグリオーマ細胞の移植実験を継続する。平成23年度に作成したモデルおよび得られた結果を基にして、治療群として、マウスclass I拘束性WT1ペプチド(CTLエピトープ)を(1)および(2)に投与し、その免疫反応、組織反応を詳細に検討する。とくに脳組織ではTreg細胞、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞を免疫組織学的に同定し、その集簇や時間的動態を明らかにする。さらにTreg細胞に強い作用をもつTGF-β、IL-10、interferonγの腫瘍および脳組織内の発現度を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
WT1ペプチドを平成24年度にあらたに購入する必要がある。前回米国で購入し輸入する体制から脱却でき、国産ペプチドのGMPグレードが確保されているため予定価格が下がった。国産の生産ラインでの見積もりはWT1-235ペプチドで1000mgあたり637.500円、WT1-126ペプチドで1000mgあたり280,000円になり、予算範囲内で購入を予定している。これらは平成23年度から繰り越した研究費も充当する。さらにマウスモデルでのマウスclass I拘束性WT1ペプチド(CTLエピトープ)を購入が必要となる。マウス(C57BL/6)も相当量を予定し、腫瘍移植用細胞培養器具消耗品、免疫染色に使用する各種抗体が必要となる。次年度は計画書の予定どおり学会報告で研究費を使用する。
|