2011 Fiscal Year Research-status Report
ラット腕神経叢損傷モデルにおける疼痛発生機序の解明と新規薬物治療の可能性
Project/Area Number |
23592158
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
國吉 一樹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鳥 精司 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40361430)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腕神経叢損傷 / 疼痛 |
Research Abstract |
前年度は、ラット腕神経叢節前および節後損傷モデルの作成と疼痛発生メカニズムの検討について行った.Wister rat30匹を用い、右腕神経叢下神経幹を展開.そのまま閉創したsham群(以下S群),下神経幹を引き抜いて節前損傷を発生させたavulsion群(以下A群)、下神経幹を切断して節後損傷を発生させたcut群(以下C群)を使用した(各群10匹). 疼痛行動は機械刺激(von Frey)及びCatWalk(歩行解析)を使用し,術後0,3,6,9,12,15,18,21日に評価した. 組織学的評価は術後7・21日目に脊髄・DRGを採取,免疫組織化学染色法を用い脊髄をGFAP及びIba-1で、DRGをCGRP、ATF3で染色した.結果、von FreyはS群に比しA群が疼痛過敏を呈したのに対し(p<0.01), C群では感覚脱失を認めた. 一方でCatWalkの立脚時間はA群, C群ともS群に比し有意に短縮した(p<0.01). 免疫染色は, GFAP,Iba1陽性細胞数はA群, C群はS群に比し有意に増加し(p<0.01), Iba1陽性細胞数はA群ではC群に比し有意に増加を認めた(p<0.01).ATF3陽性細胞数はS群に比しA群、C群において有意な増加を認めた(p<0.01)が、A群とC群の間に有意な差を認めなかった(p>0.05)。また、CGRP陽性細胞数は有意な差を認めなかった(p>0.05)以上の結果から、腕神経叢節前損傷モデルと節後損傷モデルでは疼痛の発生機序が異なることが示唆された。特に引き抜きモデルでは脊髄でのmicroglia活性が疼痛過敏に関与しており、脊髄障害性疼痛の関与の可能性も考えられ、臨床的事実を強く裏付ける結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腕神経叢損傷は重大な機能障害をきたすと同時に慢性化する難治性の神経因性疼痛を引き起こす。特に節前損傷患者での疼痛の訴えは著しく、その疼痛発生機序は節後損傷患者のものとは異なることが予想された。今回の結果から疼痛発生機序における相違の一端が明らかになり、当初目的としたことの半分を初年度に達成することができた。従って、達成度はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ラット腕神経叢損傷モデルに対するp75 NRT中和抗体の疼痛抑制効果についての研究を行っている。p75 NRT中和抗体は腕神経叢節前および節後損傷モデルに対してモデル作成時に神経損傷部に直接投与する。 疼痛行動評価は術後0日後より21日目まで3日おきにVon Frey hairsおよびCatWalkを用いた歩行解析により行う。術後7、14日後の脊髄、後根神経節を採取した後に以下の免疫組織化学染色を行う。脊髄はGFAP(astrocytesのマーカー)及びIba-1(microgliaのマーカー)を、後根神経節はATF-3(神経障害のマーカー)、CGRP(疼痛ペプチド)の陽性細胞数を計測する。 以上、抗p75抗体を投与したp75群とコントロールとして生食を投与した生食群をSham群、腕神経叢節前損傷モデル群、腕神経叢節後損傷モデル群の3群それぞれに対して作成、評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物(ラット)、免疫染色のための抗体、ELISAのキットの購入に計100万円が必要であり、今年度の研究費はこれに充当する予定である。
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