2012 Fiscal Year Research-status Report
神経栄養因子と上皮成長因子(EGF)受容体制御による末梢神経再生
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23592160
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
若林 良明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00431916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (90451971)
大川 淳 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30251507)
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Keywords | 末梢神経損傷 / 再生 / 上皮成長因子受容体 / シュワン細胞 |
Research Abstract |
今年度は、EGFR阻害薬がin vitro、in vivoにおいてどのように作用するのか研究を進めた。 in vitro: 成ラット坐骨神経から得た培養シュワン細胞に対し、EGFR阻害薬(EGFRI群)と溶媒(対照群)を培養液中に添加し増殖活性検出試薬を用いて細胞増殖の変化を解析した。また、培養シュワン細胞からRNAを抽出しRT-PCR法でBDNF、GDNF、VEGFのmRNAの発現量を比較した。その結果、対照群と比較してEGFRI群では、シュワン細胞数の有意な増加と、BDNF・GDNF・VEGF発現が増加していたことが明らかとなった。 in vivo: 成ラットの腓骨神経切断3週後に断端を脛骨神経に端側(ETS)縫合した。縫合後、EGFR阻害薬あるいは溶媒を一週間局所投与する群を作製した。縫合後8週まで経時的に足趾運動評価(PFI)と知覚評価、縫合した腓骨神経組織を適宜採取しミエリン染色を行い比較・解析した。その結果、ETS縫合後は両群ともPFIの改善が得られていたが、EGFR阻害薬投与群では、患側足趾の拘縮が少なく縫合後早期からPFIの計測が可能であった。縫合後4週では、EGFR阻害薬投与群で運動機能の改善を認め、知覚機能も改善していた。ミエリン組織標本を用いた解析では、EGFR阻害薬投与群においてETS後4週で再生ミエリン数の有意な増加が観察された。 EGFR阻害薬の局所投与によって縫合部位にシュワン細胞が誘導されて再生ミエリン数が増加し機能回復が促進されたと推測される。in vitroデータもEGFR阻害薬がシュワン細胞の活性を促進していると思われる。ただし、神経軸索に対する影響についての検討が不十分で損傷軸索あるいは再生軸索でのEGFおよびEGFRの発現を解析する必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、EGFR阻害薬の効果についてin vitroとin vivo両方で解析し、EGFR阻害薬がシュワン細胞に影響を与えていることが明らかになった。よっておおむね順調に進展していると考えている。ただし、損傷神経軸索に対するEGFR阻害薬の影響についての検討はされておらず、次年度の研究課題と考えている。また、in vivoデータでEGFR阻害薬の局所投与によって再生ミエリン数の増加が明らかとなったが、ミエリン増殖、分化に必要なBDNF、NT-3の発現パターンについても明らかにする必要があると考えている。この解析データによっては、EGFR阻害薬に神経栄養因子を追加した併用投与も今後の検討課題になり得ると思われる。治療効果の判定には、研究計画にあるように電気生理学的評価が有効な手法であることから次年度では経時的に誘発筋電図を計測し、伝導速度や電位を解析することでより詳細に研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFR阻害薬がシュワン細胞に影響を与えることは明らかとなったが、平成23年・24年で行った実験結果について追加確認作業をしていく必要がある。前述したように神経軸索に対するEGFR阻害薬の関与やin vivoでの神経栄養因子の発現パターンについて解析する必要があるし、in vivoでの神経再生過程の評価には、電気生理的手法や神経トレーサーを用いた回路網の可視化を行っていく必要がある。部分的ではあるが、データ解析を終了した研究成果もあることから適宜学会報告を行い、追加作業によって論文作成を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラット末梢神経損傷および神経再建モデルを作製するために購入、飼育費が必要である。手術用ラットについては、年間で予備実験や予期せぬ死亡を含めると50~60 匹程度必要となる。動物実験に必要なEGFR阻害薬と薬剤供給のためのミニポンプを購入する必要がある。さらに電子顕微鏡による標本作製、ミエリン染色や免疫染色を行う抗体、RNAの発現量を解析するための分子生物学用の消耗品購入が必要となる。 また、学会参加による情報収集を行い、適宜データがまとまった時点で学会発表を行う。論文作成に必要な英文校正費や出版費用が必要である。
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Research Products
(8 results)