2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト骨化性筋炎は、幹細胞病か?:変異ALK2遺伝子による筋幹細胞の骨分化誘導
Project/Area Number |
23592176
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
橋本 有弘 独立行政法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, 再生再建医学研究部 部長 (00208456)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 筋再生 / 幹細胞 / 再生医学 / 細胞分化 / 筋疾患 |
Research Abstract |
FOP型変異ALK2は、単独では筋前駆細胞に骨分化を誘導する能力は有さないが、IL6刺激が加算されると下流のSmadシグナル経路の活性が著しく亢進し、骨分化マーカーの発現を誘導した。ALK2遺伝子変異と炎症性サイトカインの加算的効果によって引き起こされた筋幹細胞系譜の分化制御異常が、FOPの発症に関与している可能性が示唆された。【研究結果】(1)FOP型変異によるALK2の機能変化の解明 (1) FOP型変異ALK2をマウス筋前駆細胞Ric10に発現させたところ、骨分化マーカーであるアルカリ性フォスファターゼ(ALP)は検出されたが、きわめて低レベルにとどまった。(2) FOP型変異ALK2をマウス筋前駆細胞Ric10に発現させ、種々の濃度のBMP2で刺激した。BMP2感受性に関しては、野生型ALK2とFOP型変異ALK2との間に差はなかった。(3) BMP-responsive element (BRE)を用いたレポーターアッセイによって、FOP型変異ALK2によるSmad経路の活性化は、BMP2刺激を与えた場合の20%以下にとどまった。これらの結果は、FOP型変異ALK2は、「活性化型変異体ではない」ことを示しており、FOPの発症機序は、遺伝子変異だけでは説明できないと考えられる。(2)炎症性サイトカインによるFOP型変異ALK2の作用増強機構の解明 (1) FOP型変異ALK2発現Ric10細胞を、炎症性サイトカインIL6、IL1β、TNFαで刺激したところ、IL6刺激によってのみ、ALP発現レベルは著しく増大した。(2) FOP型変異ALK2発現Ric10細胞にIL6刺激を加えると、FOP型変異ALK2の下流に位置するSmad経路の活性が亢進した。これらの結果から、ALK2遺伝子変異にIL6刺激が加わることによって、骨分化が誘導されうることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で平成23年度に予定していた研究項目は、ほぼ計画どおり実施することができ、研究成果が得られた。その結果、ALK2遺伝子変異と炎症性サイトカインが加算的に作用することによって、筋前駆細胞の発生運命を変更させ、異所的な骨分化を誘導できることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画(下記)に大きな変更は予定していない。研究推進方策としては、以下の二点について検討したい。(1)平成25年度に計画している「in vivoにおける骨形成能の解析」は、適切な実験条件の設定が難しいと予想されるので、平成24年度内に予備実験を開始する。(2)申請者は、別研究において、未分化ヒト筋細胞の不死化に成功し、これまで適切な解析系のなかったヒト筋細胞の分化制御機構を分子・細胞レベルで解析することが可能になった。これを受け、研究実施計画の進捗を考慮したうえで、ヒト筋細胞を用いた解析についても追加実施を検討する。(平成24年度) 1. 炎症性サイトカインとBMPシグナル経路のクロストーク・ポイントの解明:IL6のシグナル経路とBMPシグナル経路のクロストーク・ポイントを解明するため、タンパク質リン酸化酵素JAK,MEK1に対する特異的阻害剤およびsiRNA法を用いて阻害し、IL6依存的骨分化誘導への影響を明らかにする。2. FOP型変異ALK2による骨分化誘導における細胞特異性の解析:FOP型変異ALK2とサイトカイン刺激による骨分化の誘導が、筋前駆細胞に特異的であるか否かを明らかにするため、筋前駆細胞Ric10と繊維芽細胞の応答を比較検討する。 3.FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞の樹立:筋前駆細胞Ric10に、FOPに変異型ALK2遺伝子発現プラスミドを導入し、恒常的発現細胞株を分離する。(平成25年度) 4. FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞のin vivoにおける骨形成能の解明:a. ALK2発現筋細胞の筋組織への移植による骨形成の検討, b. 抗炎症剤による骨化抑制効果の検討
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、全額を研究の遂行に必要な消耗品の購入にあてる。主な購入予定品は、以下の通り。(1)細胞培養に必要な培養液および培養器具(2)機能解析に用いるsiRNAおよびサイトカイン
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Research Products
(11 results)