2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト骨化性筋炎は、幹細胞病か?:変異ALK2遺伝子による筋幹細胞の骨分化誘導
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23592176
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
橋本 有弘 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 再生再建医学研究部, 部長 (00208456)
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Keywords | 筋幹細胞 |
Research Abstract |
1. 炎症性サイトカインとBMPシグナル経路のクロストーク・ポイントの解明: (1) H23年度の本研究において、FOP型変異ALK2を発現しているRic10にIL6刺激を加えると骨分化が誘導されることを明らかにした。IL6の作用が、FOP型変異ALK2に依存するか否かを検討するため、IL6を様々な濃度のBMPとともにマウス筋前駆細胞Ric10に作用させた。閾値以下のBMP2(10 ng/ml)単独で刺激すると、骨分化マーカーであるアルカリ性フォスファターゼ(ALP)は、ほとんど誘導されなかった。しかし、BMP2とIL6で刺激すると、ALPの発現は顕著に増大した。より低濃度あるいは高濃度のBMP2では、IL6による増幅は認められなかった。この結果は、IL6は、BMP-ALK2-Smad経路を直接活性化しないものの、微弱なSmadシグナルを増幅することを示している。IL6はFOP型変異ALK2に直接作用するのではなく、IL6の下流因子がALK2-Smadシグナルを増強に関与する可能性が考えられる。(2) 従来の活性染色法およびALP酵素活性比色定量法に替わる、蛍光基質を用いたALP活性の高感度検出系を確立した。(3) 上記(2)のアッセイ系を用いてIL6の下流で活性化される転写因子STAT3の阻害剤5,15-DPPが、IL6中和抗体と同様に「IL6依存的骨分化誘導」を抑制することを明らかにした。IL6によるSmadシグナル増幅作用は、変異型ALK2に依存するのではなく、転写因子STAT3を介していることが示された。 2. FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞の樹立:筋前駆細胞Ric10に、FOP変異型ALK2遺伝子発現プラスミドを導入し、恒常的発現細胞株を分離した。対照として、野性型ALK2、活性型ALK2を導入した細胞を分離・樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で平成24年度に予定していた研究項目のうち、「細胞特異性の解析」については、予備的検討の結果、マウス線維芽細胞のBMP2刺激に対する応答性がマウス筋前駆細胞とは大きく異なっていたため、その後の解析は中止した。その他の項目についてはほぼ計画どおり実施することができた。研究計画段階では想定していなかったが、IL6とBMPのクロストークを解析するために、微弱な内因性ALP活性を再現性よく検出できる解析系が必要となった。蛍光基質を用いたALP活性の高感度検定系を独自に確立し、それを用いて、IL6の作用は変異型ALK2に依存するのではなく、転写因子STAT3を介していることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画(下記)に大きな変更は予定していない。研究推進方策として以下の二点について検討したい。 ①「in vivoにおける骨形成能の解析」は、適切な実験条件の設定に時間がかかると予想されるので、移植実験に用いる予定の「FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞」の性質(特に応答性)については、事前にin vitroで慎重に解析する。また、移植後の生着率を高めるため、Ric10とは異なる遺伝的背景を有するマウス筋前駆細胞へのFOP変異型ALK2遺伝子導入についても検討する。②マウスIL6中和抗体MR16-1(ヒトのリュウマチ治療薬として用いられているトリシズマブに相当する。中外製薬より供与。)を用いて、筋前駆細胞におけるIL6の生理的作用について解析する。 (平成25年度) ① FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞の樹立: FOP変異型ALK2遺伝子発現細胞株の性質を in vitroで解析する。IL6の骨分化誘導作用およびその他の生理的機能について、マウスIL6中和抗体MR16-1、STAT3阻害剤を用いて解析する。②FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞のin vivoにおける骨形成能の解明: (1)(炎症をともなう)筋再生誘導がBMPによる骨格筋内の異所的骨形成を促進するか否か、(2)FOP型変異ALK2を発現する筋前駆細胞の移植によって、骨格筋内に骨形成が誘導されるか否か、(3)骨格筋における異所的骨形成をIL6中和抗体およびSTAT3阻害剤が抑制するか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、全額を研究遂行に必要な消耗品の購入にあてる。 主な購入予定品は、以下の通り。 ①細胞培養に必要な培養液および培養器具 ②機能解析に用いる試薬およびサイトカイン
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Research Products
(16 results)