2011 Fiscal Year Research-status Report
軟骨変性の進行における小胞体ストレスの役割に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
23592219
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
水田 博志 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60174025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 隼 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (40433007)
岡田 龍哉 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (90588401)
高田 興志 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (70599430)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 軟骨変性 / ストレス / 細胞・組織 / 遺伝子 |
Research Abstract |
【目的】変形性関節症(OA)軟骨では変性の進行とともに小胞体ストレスとアポトーシスが相関して増加し、小胞体ストレスがOAの進行に関与することが示唆されている。本研究では、小胞体ストレスとOAとの関連性をさらに明確にするために、小胞体ストレス性アポトーシスに重要な因子であるChop遺伝子のノックアウトマウスとノックダウン細胞を用いた解析を行った。【方法】実験1:10週齢雄C57BL/6JのChop+/+およびChop-/-マウスで内側半月切除および内側側副靭帯切離によるOAモデルを作製した。術後4、8週時に小胞体ストレスマーカー(Chop、peIF2α、Grp78)を免疫染色で、アポトーシスと軟骨変性を組織学的に評価した。実験2:5週齢雄C57BL/6Jマウスより単離した関節軟骨細胞に、Chopに対するsiRNA(ノックダウン群)とNegative control siRNA(対照群)を遺伝子導入した。小胞体ストレス誘導剤Tunicamycin(TM)を1 μg/ml投与後、Grp78、Chop、Col2a、AcanのmRNA発現量をqPCR、アポトーシスをELISA、TUNEL染色で評価した。【結果】実験1:Chop-/-マウスでは、peIF2α、Grp78の発現はChop+/+マウスと同等であったが、アポトーシスと軟骨変性は抑制された。実験2:TM投与によってGrp78発現量は両群ともに増加したが、ノックダウン群では対照群と比べてChop発現とアポトーシスは抑制され、Col2a発現量は高かった。【考察および結論】Chop遺伝子をノックアウト(ダウン)することで、アポトーシスの発生、軟骨基質産生能の低下、軟骨変性の進行が抑制され、小胞体ストレスがOAの進展に関与することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究結果は研究前に立てた仮説とほぼ一致していた。実験2で培養液の解析については現在施行中であるが、おおむね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
【目的】平成23年度の研究の結果、変形性関節症(OA)における軟骨変性の過程に小胞体ストレスが深く関与していることを明らかにした。一方、小胞体ストレスは小胞体膜上のPERK、IRE1、ATF6のセンサー蛋白の活性化により始まる3つの経路を介して小胞体ストレス応答を引き起こすが、その応答は細胞腫によって異なり、また疾患の病態にもそれぞれ異なる役割を担っていることが示されている。本年度の研究目的は、Perk、Ire1、Atf6それぞれのノックアウトマウスを用いてOAモデルを作製し、軟骨変性・破壊の進行、軟骨細胞代謝を解析することで、小胞体ストレス応答の3つの経路のうち、どの経路が軟骨変性に深く関っているかを明らかにすることである。【方法】1.OAモデルの作製:10週齢雄のPerkノックアウトマウス、Ire1ノックアウトマウス、Atf6ノックアウトマウスおよびwild typeのC57BL/6Jマウスを用いて、右膝関節の内側半月切除および内側側副靭帯切離によるOAモデルを作成する。4、8週後に屠殺し、骨軟骨組織を採取する。2.解析:(1) 軟骨変性の評価…採取組織を4%PFAで16時間固定、EDTA脱灰、パラフィン包埋後に組織標本を作製する。modified Mankin scoreに従い、サフラニン-O染色標本の軟骨変性度を評価する。(2) 小胞体ストレスの評価…免疫染色法で軟骨組織のpPerk、Chop、Grp78発現を評価する。(3) 軟骨細胞機能の評価…免疫染色法でII型コラーゲン、アグリカン、Mmp13(軟骨破壊酵素)の発現を評価する。(4) アポトーシスの評価…TUNEL染色法で軟骨細胞アポトーシスの頻度を算出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.OAモデルの作製:マウス購入代…100,000円、標本作製(麻酔薬、PFAなど)…100,000円2.解析:組織染色(1次抗体、2次抗体、TUNEL、発色試薬など)…300,000円
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